泰夢(たいむ)のお話 その二:8
図書館の自習室から談話室へと移動した二人、座る席を物色します!
それでは、どうぞ!!
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さっきまで泰夢(たいむ)と華恋(かれん)がいた自習室とほとんど同じような作りになっているけれども、この談話室のほうがより広く感じる。
それはたぶん、自習室のように全てが同じせの高いつくえやイスが、横とたてにきちんとまっすぐにならべられてはいないからだ。
もちろん、談話室にも本をおけるつくえやすわるイスもあるけれども、自習室とは全くちがっている。
まずつくえはとても低くてどちらかというと、家のリビングにあるテーブルのような感じで、それがあちらこちらにあるのだけれども、その形も色も、それに大きさも一つ一つ全部ちがっている。
そのテーブルに備え付けるようにしてイスも置かれているが、こっちもイスというよりはソファみたいな低くてゆったりと後ろに寄りかかる事ができるせもたれがついていて、二人がけや三人がけはもちろんのこと、図書館だからか一人がけのソファもたくさんあった。
もちろんそれらもテーブルと同じように、全部ちがうものになっていて、全体にテーブルやイスのせが低いから、天井がとても高く感じるし、それぞれがセットになって置いてある場所も、広くはなれているので、だからさっきまでいた自習室よりも、きゅうくつな感じがしない。
「うーん、どこがいいかな……?」
学習用タブレットをわきにかかえた泰夢が、おでこに手を当てて遠くを見るようにして首を左右にふる。
「そうだね……あ、あそこ!
あのガラスの近くのところがいいんじゃない?」
華恋が指さす方を見ると、かべ一面がガラス張りになっている場所の近くに、大きなテーブルとソファがあった。
ソファは三人がけでもよゆうがあるぐらいで、これなら泰夢と華恋が二人ですわって、さらにはそれぞれが持っている荷物━━泰夢はゲーム機や勉強の道具やら、いろんな物がごちゃごちゃ入って大きくふくらんでいるデイパック。華恋の方は、ノートや筆箱の他にさっき母が持たせてくれたおつけものが入った重たいトートバッグだ━━を横においたって、十分にゆったりとできそうな感じの大きさだった。
ソファの前には、木の目地がそのままになっているこれまた大きなテーブルがあって、その向こうはもうガラス張りのかべだった。
ソファにこしを下ろすと、そこには図書館の広い公園が広がっていて、全部を見わたすことができる。
「……泰夢くん、
あそこのふん水でひっくり返ってたよね」
ソファにこしを下ろして荷物を横に置き、華恋がクスリと笑う。
「ち、ちがうってば!
ひっくり返ったんじゃなくてさ、
あれは……あれは、そういうだっしゅつワザじゃんか!」
ムゥッと口をとがらせて泰夢が返す。
前に図書館の空調で体が寒くなってしまい、華恋と二人で公園に出て日向ぼっこをした時のことを華恋は言っているのだ。
公園の真ん中の辺りはちょっとした広場になっていて、そこの地面には小さい円を中心にして、大きさのちがう円が全部で六個あった。
この円が何かというと、夏の間の暑い時などにその円にそって設置された小さなあなから、水を上にふき出させる仕組みになっていて、つまり小さなふき出し口がたくさんあるとても大きなふん水になっているのだ。
そのあなの一つ一つから、いっせいにドドーっと水を出したり、右から左からちょこちょこやったり、時には円にそってぐるーっと一周水がふき上がったりする。
大きな池があるようなふん水ではなくて、水がでていない時はそのまま地面になっているものだから、なにも知らずにそこを歩いていると急に水が出て来てビックリすることになる。
でも、これにおどろくのは大人たちだけで、子どもにとっては格好の遊び場で、もちろん泰夢と華恋もこのふん水で大はしゃぎしてしまい、そうして結局、泰夢がずぶぬれになってしまったのだった。
「うんうん、わかったよ。
それじゃあ、そういう事にしておいてあげるね!」
ふん水をよけて円の向こうからこっちまで走れるか、という話になって、華恋はヒラリヒラリと水につかまらないように走りぬけたのだけれども、同じようにマネをした泰夢はとちゅうで水につかまってしまった。
右によけようとすると右から、左ににげようとすれば左からふき出す水に追いつめられ、どうしようもなくなった泰夢はかくごを決めると、うおぉー! とおたけびを上げて真ん中をつっきっていった。
しかしその時、タイミングの悪いことに、全てのあなというあなから同時に、たくさんの水が一気にふき上がり、そのえじきになった泰夢は足を取られて転んでしまっていた。
真っ白になった水のしぶきで何も見えず、泰夢は全身ずぶぬれになりながらそのままゴロゴロと地面を転がって、ようやくふん水の円からだっしゅつしたのだった。
「だってさ……あれはさ、
華恋ちゃんが、たまたま運がよかっただけだし……」
ブツブツと言いながら、華恋に続いて泰夢もソファにすわり二人の前にあるテーブルにタブレットを置く。
カバーを開いてひっくり返し、後ろ側にくっつけて画面を立てると、デイパックをゴソゴソと引っかき回して長いイヤホンケーブルを取り出して、二つあるうちの一方のイヤホンを華恋に手わたした。
「……それで、オバジイ先生は、なんて言ってたの?
泰夢くん、先生とメッセージしたんでしょ?
わたし、何も聞いてないんだけど……」
「うん……それだけどさ、実はオレもよくわかんないんだよね。
華恋ちゃんと二人で自由研究するにはどうしたらいい?
って聞いたから、そのことだと思うけど━━」
それじゃさっき鼻をほじりながらタブレットをさわってたのは一体なんなの? と思いつつ、華恋が耳にイヤホンをつける。
泰夢がツイっと指はじくとタブレットの画面がクルクルと切りかわり、そうしてしばらくするとそこに男の人のすがたがうつし出されて、華恋の耳にちょっとしわがれた、けれども温かい感じがする声がとどいた。
「━━こんにちは、高原(たかはら)さん。寺田(てらだ)さん。
たん任のオバタです。
こちらの声が聞こえていますか?」
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ついに、オバタ先生ことオバジイが画面の向こう側に登場です!
では、次回もお楽しみに!
小林るい
