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泰夢(たいむ)のお話:81

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ピンチを切り抜けた泰夢と華恋……ですが、やっぱり怖かったようです。
それでは、どうぞ!!

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 ザザザァーという音がして、川下から川上へとふいた風がその両側に生えている深い緑の木々をかまってゆらす。
 それに合わせてつり橋もゆるやかにゆれたけれども、今の泰夢(たいむ)にとっては、まるで授業をしていない時にこっそりしのびこんだ体育館みたいに、とても静かで全てが止まっているように感じる。
(うおぉ……
 ちょーアセったぁ……)
 つり橋を全速力で走る華恋(かれん)を最初に見た時は、とにかくスゴいと思った。
 しかし、華恋がこっちに近づくにつれてつり橋がゆれはじめ、それが大きくなって足元のわたり板がはねたりしずんだりするようになるころには、もう完全にひざがガクガクになってしまった。
 一方の華恋も、最初のうちわたり板のゆれに合わせて調子よくつり橋をわたっていたけれども、だんだん勢いがついてきて、そのうちに自分でも止められなくなってしまい、つり橋は大きくゆれた。
 とても立っていられずに、泰夢が手すりのようなワイヤーロープにしがみついたところへ、一番大きなゆれがきた。
 びっくりしてその場にしゃがみこむ泰夢と、特大のジャンプからわたり板へドーンと着地した華恋。
 川のむこう岸とこちら岸のちょうど真ん中で、二人がグッとつり橋を下にたわめたものだから、その反動で大きくはね上がって、そこにいた泰夢と華恋は空中へほうり出されるようになってしまった。
(……マジでさ、
 マジで、さっきのってヤバかったじゃん……)
 泰夢は必死の思いでワイヤーロープにしがみついて、体が飛ばされないようにふんばったけれども、華恋はちがった。
 かぶっていた大切な麦わらぼうしがぬげてしまったのだ。
 それは父にプレゼントしてもらった大切なぼうしで、川に落ちそうになったのをつかまえるため、華恋はそっちに手をのばした。
 なんとか麦わらぼうしはつかまえたけれども、その分自分の体を守ることはできずに、つり橋の手すりにもなっているワイヤーロープに体が当たって、そのまま頭から真っ逆さまに落ちそうになってしまった。
 これを見た泰夢が華恋の手を取って引っ張って━━そうしてようやく、二人とも、今はつり橋のわたり板の上にすわっているのだった。
(うぅ、オケツがいてぇ……!
 最後に板んトコにしりもちついた時に、ちっと打ったかも━━)
 首を回してからだをひねって、ケガをしていないか確かめる。
 あんなにはね飛ばされて落っこちて……をしたのに、体はほとんどだいじょうぶそうだった。
 これもいつもやってる修行のおかげじゃん!と一人で笑顔をうかべて得意な気分になり、それからようやく華恋に気が回った。
(……華恋ちゃん
 だいじょうぶだったかな……?)
 華恋は泰夢にしがみつくようにして、わたり板の上にすわっている。
 ずいぶんと高くはね飛ばされていたし、ワイヤーロープでおなかも打っていたはずだった。
 心配する泰夢のうでの中で、華恋がそっと顔を上げた。
 目のあたりが赤くなっていたけれども、どこかいたかったり、苦しかったりという様子はなさそうだった。
「よかった……」
 本当に安心して、そう言葉が出た。
 自分がいたかったりするのはガマンできると思うけれども、友だち━━そして、華恋は華恋の中では友だちよりももっと近い友だちで、もっと言えば本当は、そのこれまで泰夢が頭の中に作ってきた『苦手なヤツ』や『仲良し』というような、たくさんのどの『箱』にもふり分けることができないのが華恋で、泰夢は華恋のために『華恋ちゃん』という箱をこの夏休みに新しく作ったのだ━━がそんな風になったらやっぱり心配だし、きっとそんなのはたえられない。
(ホントにさ、華恋ちゃんがケガとかしてなくてさ、
 マジでよかったよ……って、
 華恋ちゃん━━近っ!)
 ━━とたんに、泰夢のせすじがピーンとのびた。
 あぐらをかいている泰夢に華恋がぴったりくっついていた。
 落っこちそうなのを引っ張った手もまだそのままで、重なっている手のひらが熱いぐらいだった。
(えっ……ちょっと、
 コレって、どうすりゃいいの……?)
 ふだん学校にいる時はもちろんだし、理科や家庭科の授業で同じグループになっても、女子にはなるべく近づかないようにしているぐらいの泰夢だったから、こんなに近くに、しかも手をにぎったり体がくっついたりなんてことはほとんど初めてだった。
「ちょ……
 華恋ちゃん……」
 全身がカァッとして、まるで燃えたみたいに熱くなった。
 くっついてはずかしいという気持ちと、なんだか華恋にもうしわけないような気持ちとがごちゃまぜになって、頭の中がグルグルとする。
 とにかくはなれなくちゃ!と、あわてて体をよじって身を引こうとした時、泰夢の手がギュッとにぎられた。
「…………!」
 強くにぎってくる華恋の手はまだちょっとふるえていて、そしてそれは手だけじゃなく、体全体もそうだった。
(そっか……華恋ちゃんさ、
 ホントのホントにさ、こわかったんだ。
 でも、そうだよな……)
 自分だって正直どうなるかわからなかったぐらいにこわかったのだから、つり橋から体半分が落っこちてしまった華恋は、きっともっとずーっとこわかったのだろうと、泰夢は思った。
(華恋ちゃん……
 もう、だいじょうぶだから)
 そうして泰夢は体をはなすのをやめると、手のひらの中にある華恋の手にゆっくり力をこめて、やさしい強さでしっかりとにぎり返した。
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怯える華恋に優しさを見せる泰夢。支え合うことはとても大切ですね!
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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