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泰夢(たいむ)のお話 その二:10

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お互いの距離の近さに緊張する泰夢。一方の華恋は……
それでは、どうぞ!!

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 同じソファにこしかけて、さっきまで全然気にしていなかったのに、なんだか体がギクシャクのガチガチで動きにくくなったような感じがして、泰夢(たいむ)が顔をそらしたままじっとする。
 となりにすわっている華恋(かれん)の側が特にカチンコチンで、なんだかうでや手を動かすのもダメなような気がするのだ。
 いや、本当はダメではないのだろうけれども、もし動かしたら迷惑のような、華恋が気にするのかもしれないと考えてしまって、どうしてもそっち側が動かせない。
(……だ、だいじょうぶかな。
 じゃないと、華恋ちゃんってばさ、
 オレのコト『ヘンだ!』って言ってきたりするじゃん……)
 華恋にそう思われるのはきらいじゃないし、むしろ泰夢にとっては、自分のすごいところを見せてやった! みたいな気がして楽しいしどんどんやりたいと思うのだけれども、いまのこれは何となくちがう気がした。
 華恋の顔が近かったのが原因かもしれないし、自分からねらってヘンなことをしてやろうとしているのではないからかもしれない。
(…………)
 あのつり橋で、華恋といっしょに落っこちそうになった時、ふるえていた華恋のせなかをなでて、なぐさめようとした時の気持ちにちょっと似ているようにも思う。
 目をつぶって、それから頭をいつものようにグルングルンとやりたかったけれども、イヤホンがあるのでそれをがまんして、代わりに目玉をくるりとひと回しする。
 つり橋の時はとにかく必死だったので、すぐにそんな気持ちはどこかに行ってしまった。
 でも今は、オバジイとビデオ通話をしているぐらいで大したことはなかったし、なによりも華恋といっしょに一つのイヤホンを使っているから、はなれることもできなかった。
 どうしたらいいんだろう、華恋は自分をヘンに思っていないか━━と、ザワザワした気持ちになるのを感じ、それがイヤホンやすわっているソファから伝わってしまうんじゃないかと思い、よけいにザワザワが止まらなくなってしまった。
(と、とりあえず、
 なんとかしなくちゃじゃん……!)
 ずっと華恋の方を向いているわけにはいかず、どうにかその場をとりつくろおうと、あいかわらずカクカクとした動きではあったけれども、まずは顔を前にもどしてタブレットの方を向く。
 それから華恋の反対側の一番遠い足の先っぽをそーっと外側へのばして、華恋に気付かれないよう身体全体を少しずつはなしていく。
(…………)
 一方の華恋は、泰夢のその動きには気付かなかった。
 もちろん、さっき泰夢と顔をつき合わせたはずかしさはまだ残っていたけれども、それよりもいま、学習用タブレットの向こうから「おたがいにそうよんだらいい」と言ってくれたオバジイの言葉がうれしくて、むねのなかがジワっと温かくなって、その温かいのが全体へ広がっていって、さっきまでの心ぞうがドクドクして耳先までカァっと熱くなるような感じではなく、空調の冷たい空気ですっかり寒くなってしまったところへ、温かいおふろにつかってポカポカするような、そんな気持ちになっていたのだった。
(オバジイ先生って、
 本当にいい先生なんだろうなぁ……)
 一番最初にオバジイとビデオ通話で話をした時からそうだったのだけれども、しっかりと自分たちの事を見てくれている『大人の人』なんだと、華恋は思っていた。
 華恋のまわりにも親はもちろん、学校の先生や学習スクールの講師などの大人はたくさんいるけれども、ちゃんと自分たちの事を見て、同じ目の高さで話をしたり聞いたりしてくれる人は少ない。
 大人は強いから、えらいから、体が大きいから、言うことを聞かなくちゃいけないから、それを聞かないとおこられるから、だから言いつけを守るし、注意されないように行動する。
 そういう自分たちを、大人は大人の立場で注意をし命令をして、もしそれがまちがっていたり、知らないことを聞いたりすると、同じように大人の立場でごまかしてくる。
 そういう事をせずに、自分たちの事をほめてくれる大人もいる。
 ほめられればうれしいし、自分でも出来たなぁと思えるから、だからほめられたくてがんばるけれども、でも、自分でも出来なかったな、がんばれなかったなと思うときもあって、そんな時にほめられると、本当はダメなのに小さな子どもみたいに何も知らされずにあまやかされているみたいで、うそを言われているような気持ちになることもあるし、それがとてもはらだたしく感じることもある。
 そのどちらでもない、華恋の考える『大人の人』は、自分たちを同じように見てくれる人たちだ。
 ダメな時は変にほめずにきちんとダメだと言ってくれて、でも「こうしなかったからだ!」などと頭ごなしには言わずに、どうしてダメだったのかをいっしょに考えて、ヒントやアイデアをさがしてくれる。
 まちがったことがあれば理由を説明してあやまるし、知らないことはしっかりと調べて話してくれる。
(泰夢くんのトコ、
 いい先生でうらやましいなぁ……)
 もちろん、華恋のたん任だって悪い先生ではない。
 華恋の母親よりも少し上の男の先生で、華恋たち生徒の話にもよく耳をかたむけてくれる。
 でも、少しおこったりごまかしたりすることがあって、そういうのは華恋たちにもなんとなく分かる。
 それに比べると、いま目の前━━と言っても、タブレットの向こう側だが━━にいるオバジイは、ゆったり、どっしりとしているような感じがして、こうして話をしていても安心するような気がするのだ。
「わっはっはっは━━」
 画面の中のオバジイはまだ楽しそうに笑っている。
 イヤホンから聞こえてくるその大きくてごう快な笑い声に、いつの間にか華恋もいっしょになって声を出して笑っていた。
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オバジイの笑う姿に、華恋もすっかりと引き込まれたようです!
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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