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泰夢(たいむ)のお話 その二:11

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急に笑い出したオバジイと華恋に、ちょっと置いていかれる泰夢です。
それでは、どうぞ!!

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 となりにすわっている華恋(かれん)が、クスクスと声を立てて笑いだし、学習用タブレットにつながっているイヤホンからも、オバジイの笑い声が聞こえて、泰夢(たいむ)はわけがわからなくなってしまった。
(……えっ、これってどういうこと?
 いま、なんか面白いことあった?)
 最初は、自分がこっそりと華恋からはなれようとしたのが見つかってしまい、それを笑われたのだと思ってドキリとした。
 ハッとして動きを止めて、少しの間じっとしていたのだけれども、それでも二人の笑い声は止まらなかったので、どうやらそうではないらしいと気づいたけれども、そうなるとよけいになぜ華恋とオバジイが笑っているのかがわからなかった。
 とりあえず、もう一度きちんと談話室のソファにすわり直して━━もちろん、華恋との間のきょりの調節もぬかりなくやって━━から、タブレットの画面の向こうのオバジイと横にいる華恋を、目をキョロキョロと行ったり来たりさせて見てみる。
 どうやら、どちらも楽しそうなので悪いことではないのだろうけれども、自分だけわからないのはちょっとくやしい。
 頭の中をグルグルとフル回転させて、なぜ笑っているのかを考えてみる……けれども、よく分からなかった。
(えーっ、これってなんだ?
 めっちゃイミわかんないんだけど……
 面白いコトとか━━なんかあったっけか?)
 オバジイからメッセージが来て、談話室でビデオ通話をすることになって、イヤホンがくすぐったいからゴソゴソしたら華恋ちゃんにおこられて、目があって、そしたらオバジイがなんか言ってから急に「わっはっはっは!」って笑い出して……
 真正面から顔が合って急にはずかしくなったことは小さく思い出すだけにしながら、ここまでのことを頭の中で確かめてみる。
(なんだろう……
 オバジイが言ってたのって、
 たしか、『そうよんだらいい』とかどうとか……)
 あいかわらず泰夢の頭はハテナのマークでいっぱいだったけれども、そこから急に笑ったので、たぶんそこが大事な所なのだろう。
「あのさ……」
 笑っている二人に泰夢が声を上げる。
「いま笑ってるのってもしかして、
 さっきオバジイが言った『そうよんだらいい』ってヤツのコト?
 ……でも、それってさ━━あんまり面白くないよね?」
 おそるおそるそう言った泰夢の言葉に、オバジイと華恋はすこしだまって、それからまた同じように、いや、ちょっとだけ大きく笑う。
「えー、ちょっと、マジで何が面白いの?
 イミぜんぜんわかんねーし、オレちっとも面白くないじゃん!
 ……オバジイ、これってどういうこと?」
 泰夢の声がすこし引きつったようになった。
 自分だけが分からないのがだんだんとくやしい気がしてきて、のどのおくがヒクヒクっとなる。
 それを聞いたオバジイはようやく笑うのをやめると、画面の向こうから泰夢にゆっくりと話しかける。
「うーん、そうだなぁ……
 例えばあまいおかしにも、いろいろな『あまい』があるだろう?
 それと同じように、『面白い』にもいろいろな『面白い』があるんだな」
「……えーっ、でもさ、『あまい』と『面白い』はちがうじゃんか!」
「うん、たしかにそうだな。でも最初に言っただろう?
 それは『例え話』だ。
 ……そうだなぁ、先生がいまこんな顔をしたら━━面白いだろう?」
「━━━━!」
 と、画面の向こうのオバジイの顔が、急にグニューっと横に広がった。
 左右の手でほっぺたをグイっとつまんで引っぱっているのだけれども、両目のはしっこが下にさがり、口の両はしが上にあがり、そして顔の真ん中の鼻のあながプクッと広がっていた。
 やがてその顔が画面いっぱいに広がって、右へ左へとかたむいたり、前後に行ったり来たりとやりはじめる。
 それを見た泰夢と華恋は最初クッと息がつまって、それからおなかをかかえてソファの上で笑い転げた。
 談話室だから……図書館だから……と、なんとか笑い声をおさえようとするけれども、なぜだかそうするとよけいにおかしくなってしまって、ヒイヒイと息が切れて、なみだがボロボロと出て、もうイヤホンなんか外れてどこかにいってしまうぐらい、二人して笑った。
「どうだ、面白いだろう?」
「だ、だめ……オバジイ先生……
 やめて……へ、ヘンだから……その顔すごくヘンだから……
 これ以上は、もうくるしいから……」
「やめろよー……オバジイ……!
 それは無しっこじゃん!
 いつもは、それ出さない約束じゃんか!」
 オバジイが学校の生徒たちとにらめっこで勝負をする時の最強ワザで、先生をずっとやってきて、これで笑わなかった者はいないのだぁ! と、いつも自まんしている得意のヘンな顔なのだ。
 ゼイゼイと息をする泰夢と華恋に、オバジイが笑う。
「いまのは、たしかに『面白い』……だなぁ。
 それじゃあ、もう一つ……
 この前、自由研究の相談で先生に通話したときの事を覚えてるかい?」
「そんなのもちろんじゃん!
 華恋ちゃんと二人で自由研究してもいいかって聞いて、
 『神社とお祭り』と『山と川』のどっちにするかで相談したじゃんか!」
「うんうん、その時に泰夢は先生に、
 川にある高いつり橋と、バスから見える景色の話をしてくれただろう。
 あれも、たしかに『面白い』……だったんじゃないか?」
「うん! だってさ、マジで面白いと思ったからね!
 オバジイが言ってた『河岸段丘(かがんだんきゅう)』がさ、
 本当に目の前にあってさ、それがめっちゃ大きくてスゴかったから━━」
 泰夢はそこでハッと息を飲んだ。
「わーっ! スゲぇ! 面白いってさ、一つじゃないんじゃん!
 ヘンな顔も『面白い』し、河岸段丘だって『面白い』……
 ━━そっかぁ、そういうことか!」
 うおぉーっとうなりながら頭を何度もたてにふる泰夢を見ながら、
(オバジイ先生って、本当にすごいな……
 泰夢くんの言葉をしっかりと聞いて、ちゃんと分かろうとして、
 話をそらしたり、ごまかしたりしなかったもの……)
 と、華恋も同じようにして深くうなずいた。
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オバジイ先生の変な顔に笑い転げながら、また一つ気付きを得た泰夢でした。
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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