泰夢(たいむ)のお話 その二:12
何かを思いついて動き出そうとする泰夢に、華恋が振り回されます。
それでは、どうぞ!!
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両方の手を組んでウンウンとうなずいていた泰夢(たいむ)が、はたと気付いたように手を打った。
学習用タブレットの画面の中にいるオバジイに向かって、グイっと顔をつき出したので、イヤホンでつながっている華恋(かれん)もそれに引っ張られていっしょに前に出てしまう。
「━━ちょっと、泰夢くん!
イヤホンしてるの、わすれないで。
泰夢くんが急に動いたら、わたしだってこまるんだからね!」
「えっ……あっ! ゴメン!
オレってば、ついわすれちゃったじゃん。
っていうかさ、じゃまだからさ、取っちゃおうか、コレ━━」
と、言うが早いかタブレットからイヤホンを引っこぬいた。
とつぜんの泰夢のその行動に、華恋がビックリして体を起こす。
「た、泰夢くん━━」
「……この談話室だったらさ、
少しぐらい声が聞こえても、だいじょうぶっぽいしさ、
だったら何もない方がさ、オレも華恋ちゃんもラクチンでしょ?」
そう言って得意な顔をする泰夢を見る。
さっきオバジイ先生のヘンな顔で二人してたくさん笑ってしまったけれど、たしかに泰夢の言う通り、それで何かを言われたり注意されたりということはなかった。
あたりを見回してみても、談話室にいる他の人たちがこっちを見ている様子はなかった。
この談話室にはそれなりに人がいるけれども、みんなそれぞれ思い思いのことをしていた。
本だなから持ってきた本をテーブルの上に置いたままで、すっかりおしゃべりに夢中になっているお母さんたちもいるし、あっちには顔の上に本を乗っけてすっかりねむってしまっているおじさんもいる。
真ん中の少し広くなっているスペースでは、たぶんこの図書館で働いている人だろう、わかいお兄さんが大きな絵本を開いて持っていて、その前に小さな子どもたちがたくさん集まり、それぞれいすやゆかの上にすわって、お兄さんが絵本のろう読をしているのを熱心に聞いている。
(うん……
泰夢くんの言う通り、平気かも……)
外したイヤホンを軽く指でふいて、こっちに向けて開いている手のひらの上にそっと置いた。
「えー、そんなの気にしなくていいのに。
だってさ、華恋ちゃんの耳ってさ、
別にきたなくないじゃん?」
「…………」
華恋のまゆ毛がピクっとして真ん中に寄った。
そんなことはわかっている。
けれども、そのまま返すのは失礼な気がしたのと━━耳のあなはちょっとはずかしい気もしたから、そうしただけなのだ。
(ホーント、他のことは何にも気にしなかったり、
ぜんぜん平気だったりするのに、
どうしてこういうヘンな時にかぎって、ヘンなこと言うんだろ……)
イヤホンのコードを手でクルクルとさせ、すずしい顔で器用にまるくまとめていく泰夢の顔をチラリとにらみつける。
「きたなくなくない……かもよ?
わたし、耳からいっぱいあせをかいてるかもだし、
耳そうじだってずーっとしてなくて、カピカピかもしれないでしょ?」
「━━えっ」
泰夢のクルクルの手がピタッと止まった。
まさか華恋ちゃんにかぎって……と思うけれども、本人からそんな風に言われてしまうと、どうにも不安になってくる。
学校の友だちなんかにその場でゲーム機を貸す時がたまにあるのだけれども、そのボタンやなんかが手のあせやあぶらでベトベト、ヌルヌルになっている時があって、泰夢はそれがどうしても苦手なのだ。
(…………)
きたなくないと自分が言ったのに、それをあらためて見るのは華恋に失礼のような気もしたが、どうしても確かめたくなってしまう。
「━━わっ」
念のために……と思って、イヤホンの耳に入れる部分をよく見てみようとのぞきこむと、同じように顔を近づけてきた華恋と目が合った。
真っ赤な顔で、口とまゆ毛のはしっこがギュっとつり上がっていて、そしてその目は、ものすごくおこっていた。
「ホント、信じられない━━」
びっくりして動けなくなった泰夢の手からイヤホンをうばいとり、クシャクシャっとらんぼうにまとめると、長いうでをのばして泰夢のデイパックの横のポケットの中に無理矢理つっこむ。
「えーっ、だって……
華恋ちゃんが、耳がカピカピだって言うか━━」
「言ってない!
わたし、かもしれない、って言っただけ!
もう━━ホっント、泰夢くんって何にもわかってないっ!」
言葉をさえぎって華恋が泰夢をにらみつける。
そのはくりょくに泰夢も思わず、ごめんなさい……と小さくもらす。
ちょっとだけ二人の間がシーンと静かになる。
「いやぁ……
今のは泰夢の失敗だろうなぁ」
と、それまで二人のやり取りを画面ごしに見ていたオバジイが、そうゆっくりと声を上げた。
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少しぶつかってしまった二人に、オバジイの助け舟がやって来そうです。
では、次回もお楽しみに!
小林るい
