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泰夢(たいむ)のお話 その二:13

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ちょっとピリピリムードの泰夢と華恋……それを見ていたオバジイは?
それでは、どうぞ!!

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 学習用タブレットから聞こえるクラスたん任のオバジイの声に、泰夢(たいむ)と華恋(かれん)がそちらを見る。
 オバジイは画面の向こうでうで組をして、さっき泰夢がしていたようにウンウンとうなずいていた。
「……これは先生の想像だけれどね、
 寺田さんがイヤホンをふいて返したのは、
 泰夢への『礼儀(れいぎ)』だと思うんだなぁ」
「礼儀……それってオレも知ってる!
 ありがとうございます、って言ったりさ、
 おじぎをしたりしてさ、失礼のないようにすることじゃん!」
 となりにすわっている華恋との感じがちょっと気まずくて、どうにかならないかなぁと思っていた泰夢は、そこに自分の知っている言葉が出てきて、これがチャンスとばかりにそう声を張った。
 それを横目に見た華恋は、自分のむねの中にちょっとトゲトゲした気持ちがもり上がってくるのを感じたけれども、それよりもオバジイが何を話すのかが気になって、タブレットの方へ目線をもどす。
「━━うんうん、そのとおり。
 礼儀というのは、相手を大切に思って、
 それを言葉や行動で示す……ということだなぁ」
 そこでオバジイは一度言葉を区切って、画面にぐっと近寄る。
「よーし、それじゃあ、泰夢。
 『親しき仲にも礼儀あり』……
 という言葉があるのを知っているかい?」
「シタシキ……なんだそれ?
 うーん、礼儀って入ってるからさ、
 それもやっぱさ、失礼のないようにすることなんじゃん?」
「わっはっはっは━━おしい! 半分だけ正解だな!
 礼儀が入っている、という所に気がついたのは良かったなぁ。
 ━━それじゃあ、寺田さんはわかるかな?」
「えっ……?
 は、はいっ……!」
 オバジイが華恋に話を向けた。
 聞かれた華恋の方は、急なことにモゴモゴとする。
 自分の通う学校ではない、他の小学校の先生からの質問に、きん張がかくせなかったが、タブレットの向こうでやさしく笑っているオバジイを見ているうちに、自然と言葉が出てきた。
「えーっとそれは、親しい人たち……
 たとえば、仲の良いお友だちや家族の間でも、
 礼儀をわすれてはいけない━━ってことだと思います」
「うんうん、寺田さん、正解だな!
 親しき仲にも礼儀あり……というのは、たとえ仲が良い関係でも、
 きちんと相手のことを考えて礼儀を持つ、ということだなぁ」
 オバジイは華恋の答えを聞いて、満足そうにそう付け加える。
 それから今までで一番のニコニコ顔をして、両手の親指をそれぞれ立てると、むねのあたりでクイクイと上下にふっておどけてみせた。
「うぉー、出た! オバジイの『ダブル・いいね!』じゃん!
 華恋ちゃんってば、めっちゃスッゲー!
 これってさ、授業で最高の答えが出た時にしかやらないんだぞ!」
 数あるオバジイの『得意』なアクションの中でも、めったに見られないレアなアクションに、泰夢も思わずソファの上ではねる。
 華恋は、オバジイと泰夢がそうやってはしゃぐのを見て、ほっぺたから耳の先までカーッと熱くなるのを感じた。
 それはもちろん、自分の答えで急に二人がさわぎだしたのが気はずかしかったということもあったけれども、同時に、むねのおくからフツフツとわき出してくるような、不思議なほこらしさもそこにはあった。
「━━うんうん、実に素晴らしいなぁ!
 泰夢も礼儀が入っている事ちゃんと気がついたし、
 これはもう、二人合わせて大正解……でいいだろうなぁ!」
 タブレットから、わっはっはっは! とオバジイの特大な笑い声が飛び出して、あわてて泰夢がボリュームを下げる。
「オバジイ、声がでっかいよ!
 でもさ……オレさ、なんかわかったんだよね」
 ソファにすわり直しながら泰夢が言う。
「さっき華恋ちゃんにさ、別にきたなくない━━って言ったのとさ、
 その後でイヤホンを確かめたのってさ、
 『親しき仲だけど礼儀はダメ』だったよね」
「……ううん、それならわたしもだよ。
 せっかく泰夢くんが、気にしなくていい━━って言ってくれたのに、
 ムキになって、意地悪を言ったから……」
 またちょっとだけ、二人の間がシーンと静かになる。
 けれどもさっきとはちがい、今度はおたがいの顔を見て、きちんと自分の思ったことを口に出して、そして自分が悪いと思ったところを謝った。
「えへへへ……」
「ふふふ……」
 そう顔を見合わせたまま、二人の口元に、目じりに、照れかくしの笑みがうかぶ。
 急に体が軽くなったような気がして、それがとても心地よかった。
「わっはっはっは!
 うんうん、いいじゃないか……
 これこそ『仲良きことは美しきかな』だなぁ!」
 ボリュームをしぼっても聞こえるオバジイの大きな声が、ようやく落ち着きを取りもどした泰夢と華恋をつつみこんだ。
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互いの思いを言葉で伝える事ができた二人……本当によかったですね!
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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