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泰夢(たいむ)のお話 その二:14

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大笑いするオバジイ。そんなオバジイを見て、泰夢に疑問が浮かびます。
それでは、どうぞ!!

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 談話室はいろいろな人がいて、それなりにさわがしい感じだったけれども、学習用タブレットが目の前にあってそこから音が出ているせいか、泰夢(たいむ)にも華恋(かれん)にも、オバジイの笑い声がよく聞こえた。
(……オバジイってさ、
 いったい、いつまで笑ってんだ?)
 楽しくてよく笑う先生だけど、今日はいつもよりももっと笑っているような気がする。
 「相談に乗ってほしい事がある」と、自分の生徒から連らくがあったら、教えている先生としてはうれしいことだ。
 みんな楽しく遊んでいるだろう夏休みに、遠くはなれた帰省先からだったら、なおのことうれしい。
 さらにその内容が、夏休みの宿題である自由研究の相談で、別の小学校の生徒と仲良くなったからいっしょに研究をしたい……というものだったから、これはオバジイでなくても思わずほっぺたがゆるんでしまう。
 もちろん、当の泰夢はそんな事は全く知らず、ただただ、画面の中の笑顔を見て、オバジイも夏休みだからきっと楽しいんだろうなぁ、とボンヤリと考えていた。
(……ん、あれ?
 もしかして、オバジイのいる場所ってさ、
 学校の職員室んとこじゃん?)
 もうすっかりとオバジイにあきてしまった泰夢は、画面にうつっている後ろの方の様子を見た。
 それは、たしかに泰夢の小学校の職員室で、どうやらオバジイは職員室でビデオ通話をしているらしかった。
(夏休みってさ、先生たちもみんな休みじゃないの?
 だってさ、生徒はみんな休んじゃってるし、
 学校ん中ってさ、今はだーれもいないじゃん?)
 いつものように、うでを組んで首をグルグルとやり始めた泰夢に、横にいた華恋も何ごとだろうかと首をかしげる。
「……どうしたんだ、泰夢。
 なにか質問があれば、先生が聞くぞ?」
 その様子にオバジイも気がつき、画面ごしに泰夢を見る。
「うん……
 自由研究のことじゃないんだけどさ、
 オレたちが夏休みの間ってさ、先生って何してるの?」
 土曜日や日曜日は学校も休みで、自分たち生徒も休みだから、先生もお休みなのを泰夢は知っている。
 だから、夏休みも同じように休みだと思っていたのだ。
「いまは夏休みだしさ、
 学校ってだれもいないんでしょ?
 だったらさ、なんでオバジイって職員室にいるの?」
「…………」
 てっきり自由研究の質問がくるものと思っていたから、さすがのオバジイも言葉につまった。
「……あのね、泰夢くん
 先生はね、夏休みの間も学校でお仕事があるんだよ。
 授業の準備をしたり、プリントを作ったりして、いそがしいの」
 止まったオバジイに変わって、華恋がすぐに言葉を続ける。
「だれもいなくたって、おそうじはしなくちゃいけないし、
 お花や生き物にだってお水やえさをあげなくちゃでしょ?
 ……それにね、先生たちの「授業」だってあるんだよ」
 華恋がそういうのに、へぇー! っと泰夢が目をキラキラさせる。
「それじゃ、オレたちといっしょじゃんか!
 だったら宿題やテストもあるんだろうからさぁ、
 ちょっとぐらい、オマケしてくれりゃいいのに……」
 先生も自分たちと同じように、授業を受けたりテストをしたりすると聞いた泰夢は、ちょっとうれしかった。
 いままでは「先生」や「大人」というのは、もうたくさんの勉強や授業を全てやり終えてしまって、この世界のいろいろな事を全部知っているから、面どうくさい計算ドリルや漢字書き取りなんかはやらなくてもいい人たちだと思っていた。
 だから、夏休みの先生が自分たちの見えないところで、学校のいろんな事をしていたり、授業を受けて勉強をしたりしている……ということを知って、自分たちと同じ事をいっしょになってがんばっている、まるで『仲間』のような気持ちに━━それは、逆に言えば「大人になっても勉強やテストは続く」ということにもなるのだけれども、その事に気がついてガックリと泰夢が落ちこむのは、まだずっと先の話だ━━なったのだった。
(そっか……先生って、
 先生だから何でも知ってるってワケじゃないんだ。
 ちゃんと勉強してるんだ……スゲーんだなぁ)
 テストや授業が苦手な泰夢からすると、大人になってもがんばっているなんて、信じられないことだった。
(オレんちの父さんなんてさ、
 休みの日はずーっとねてるもんな……)
 昼間から家のリビングのソファでゴロリと横になり、その様子にプリプリする母親から、そうじ機でオシリをすわれてうめき声を上げる父親のすがたが頭にうかび、思わずクスッとする。
「うんうん……寺田さん、ありがとう!
 本当に、いろいろな事をよく知っているね。
 寺田さんがいてくれて、先生は助かっちゃったなぁ」
 オバジイが言うのへ、華恋がすこし赤くなってヒョイと頭を下げる。
「……あとはこうやって、
 夏休みの間に来る、生徒からの相談や質問に、
 こたえている……というワケだなぁ」
 言いながら、オバジイが一まいの白い紙を画面にうつした。
 どうやらそれは、手紙を書く時に使う便せんのようで、そこには文字がビッシリとならんでいた。
「━━寺田さんのクラスたん任の先生に、お手紙を書きました。
 二人が言っていた合同自由研究のことで、先生に相談をしました。
 これは、そのお返事の手紙になります」
 そう、ちょっと改まった様子でオバジイが言う。
 泰夢と華恋が学習用タブレットに顔を寄せる。
 手紙に書いてある文字はとても小さくて、タブレットの画面ごしでは読むことが出来なかった。
 そこに何が書いてあるのか、一体どんな返事が返ってきたのか……二人のむねがトクトクと早く打っていた。
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オバジイが見せた華恋の担任の手紙…一体何が書いてあるんでしょうか!
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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