泰夢(たいむ)のお話 その二:15
オバジイが見せた手紙をどうしても読みたい泰夢。またやらかします……
それでは、どうぞ!!
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談話室のソファからこしを上げて、泰夢(たいむ)がテーブルに置いてある学習用タブレットにグイっと顔を近づける。
もちろん、いくら顔を近づけたとしても、手紙を持っているのが画面の向こう側にいるオバジイなので、オバジイがタブレットのカメラに近づけてくれなくては、手紙の文字は大きくならない。
それでも、少しでも早く手紙の内容を知りたくて、もうほとんどタブレットが顔にくっつくぐらいに近くに寄る。
「…………」
ところで、この談話室のテーブルは、さっきの自習室にある大きなつくえとちがって高さがだいぶ低い。
だから、ソファから立ってテーブルのタブレットに顔を近づけようとすると、どうしてもオシリがプクンと上に持ち上がる。
それをやっている泰夢本人は、夢中になっているから気が付かないけれども、そのとなりにすわっている華恋(かれん)は、さっきから大変にふゆかいな思いをしていた。
なにしろ、自分の顔の目の前ちょうどのところに、泰夢のオシリがドーンとやってきたのである。
(なんか、すっごくイヤなんだけど……)
ただドーンとしているだけなら、華恋も手紙にどんな事が書いてあるのか気になったし、泰夢がそうやってタブレットをのぞきこみたくなる気持ちもわかるから、少しはがまんできる。ただ、良くないのはその先だ。
なんとかして手紙を読もうとして、顔を近づけたりはなしたり、右から見てみたりその逆から見たり……体をグルングルンと動かすものだから、その後ろにあるオシリもブルンブルンと大きくゆれるのだ。
「えぇーっ、ちょっと……
これってばさ、あとちょーっとで読めそうじゃん?
……うーん、なんて書いてあるんだ?」
そう言って泰夢が顔を動かすたびに、華恋の目の前にあるオシリも落ち着きなく左右に動く。
(……もうっ!)
それでも、最初はがまんをしていた華恋だったけれども、顔のすぐ前でオシリをプリプリとされ、とうとう頭にきてしまった。
右手を大きく上にあげると、見るからにたたきやすそうな泰夢のオシリへ、パチン! と、きょうれつな一発をおみまいした。
「━━ひゃあっ!」
とつぜんオシリをたたかれて、泰夢がへんな声をあげる。
「もうっ! わたし、後ろにいるんだよっ!
タブレットなんだから、
顔を近づけないで、こっちに持ってくればいいでしょ!」
「……うぅ、
だ、だってさ━━」
「だってさ……じゃないよね?
人の顔にオシリを向けるなんて、すっごく失礼なんだよ?
それに、画面の向こうの事は、どうにもできないんだからね!」
まゆ毛をピッとつり上げてにらむ華恋に、泰夢がしょんぼりとしながら、タブレットをかかえてソファにこしを下ろす。
「わっはっはっは!
顔にオシリは━━たしかによろしくないなぁ。
またしても泰夢の失敗だなぁ」
「━━でも、オバジイ先生もです」
泰夢のひざの上に置かれたタブレットから、オバジイの大きな笑い声が聞こえるのへ、華恋はすかさず言った。
「カメラに手紙を近づけると、大きくうつりました。
でもその分、字がたくさんゆれて読みにくかったです。
それから、画面もかげになってしまって、暗くて見えませんでした」
「おぉー! そうだったか……
これは、先生の方が気がつかなかったなぁ。
寺田さん、すみませんでした。そして、ありがとう!」
「……い、いいえ、
あの━━画面を見てて、そう思っただけです」
タブレットの中のオバジイがそう言ってしっかりと頭を下げ、華恋もそれを見てあわてて頭を下げる。
学校の先生……ましてや、他の学校の先生に自分の意見を言うなんて、華恋自身も思ってもみなかったのだ。
泰夢のオシリがあまりにも失礼で頭にきてしまい、それにつられて、ついオバジイにまで文句を言ってしまった。
華恋が言ったこと自体は、もちろんまちがっていなかった。
しっかりと見せようとして、カメラに思い切り近づけていた手紙は、たしかに文字は大きくなっていたけれども、手が少しでも動くと文字が大きく動いてしまって読みにくかったし、手紙自体も手暗がりのような状態になっていて、たしかにとても見えづらかった。
けれども、生徒の自分がこんな事を言ったら、きっと先生はおこってしまうのではないかと、カメラのことをオバジイに言いながら華恋は考えていたのだった。
しかし華恋のその考えは、すこし気にしすぎだったようだ。
オバジイはしっかりと華恋の意見を聞き、自分の失敗をあやまり、そして、それを言ってくれた事へ感謝の気持ちも示してくれた。
他の学校に通っている自分も、まるで本当の生徒のように見てくれるオバジイの気持ちと行動が、とてもうれしかった。
(オバジイ先生のクラスって、
いったい、どんな感じなんだろう。
泰夢くんもいっしょだったら、とっても楽しそうだなぁ……)
ふと、泰夢と二人でつくえをならべて、オバジイ先生の授業を受けている景色が頭の中にうかび、華恋の顔がフワリと明るくなる。
「━━よし、それじゃあ、先生が内容を話して伝えようか。
まず、夏休みの自由研究の宿題を、
二人の『共同研究』としても良いか、だが━━」
「…………」
その言葉に、泰夢と華恋がタブレットに耳をかたむける。
「これには━━共同研究をしても良い、という答えが返って来たよ。
寺田さんの学校の先生も、きちんとみとめてくれた。
二人とも良かったなぁ! わっはっはっは!」
「おっしゃーっ! やったじゃん!」
「よかった……ダメだったら、どうしようかと思った」
オバジイの笑い声を聞きながら、華恋は泰夢の顔を見ると━━今度は両手を上げて、パチン! と、おたがいの手のひらを打ち合わせた。
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泰夢と華恋、二人の担任の先生からついに自由研究のOKが出ました!
では、次回もお楽しみに!
小林るい
