泰夢(たいむ)のお話:18
思わぬ再会に悩む泰夢なのです!
それでは、どうぞ!!
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教室のおくへ、なるべく早く、でもあわてた様子は絶対に見せないように━━事実はそうなのだけれども、今日に初めて会った女子に笑われて、しかもそこからにげたと相手に思われたら、それはいくらなんでもきまりが悪すぎるというものだ━━注意しながら、泰夢(たいむ)は歩いていき、教だんから一番遠い長いつくえが二つちょうど空いていたので、その一番すみにすわる。
デイバパックを広げてとりあえずノートと教科書と筆記用具とを出してならべ、それでもまだゲーム機やスマートフォンや祖母の作ってくれたお弁当で大きくふくらんでいるデイバックを上に置くと、それをだきかかえるようにして顔をうずめた。
(…なんで、どうして? もしかしてオレの顔知ってんのか?)
たんに目が合って、そっぽを向いたり変な顔をするのだったらわかる。
けれども、あの女子は完全にこっちを向いて、こっちをみて、そして笑いかけてきたのだ。
つくえにふせやすいように、頭をカベの方に向ける。
耳のあたりで、ゾワンゾワンと大きな音を立てて血が流れていっているような気がする。
頭の中に次から次へといろいろな景色がぐるぐると回って、うかんで、そして消えていく。
やはりどこかで会ったことがあるんじゃないだろうか?
だとしたら、どこで?
学校と学習スクールと、あとはいつもやっているゲームのフレンド以外では、泰夢に友だちはいなかったし、ましてや家からいくつもの県をこえてようやく来ることができる町には、とうぜん友だちどころか、知り合いだって心当たりがない。
昔会ったことがあって、こっちはわすれているけれども向こうは覚えていた……ということはどうだろうか?
しかし、泰夢が前に祖母の家に来たのは、まだ入学する前の話だったし、たぶんだけれども、その時もだれかと遊んだ事はないと思う。
(……でも、気のせいってことはないよな)
さっきの笑い顔、あれはあきらかに泰夢に向けられたものだったし、こっちはむこうの事をしらないけれども、むこうはこっちの事をしっているような感じだった。
(…………)
決して悪い笑顔ではなかった。と言うよりは、すごくやさしくて笑いかけられた方がちょっと安心した気持ちになるような、そんなほっとするような笑顔だった。
(だれなんだろ……)
そうだから、余計に泰夢には気になるのだ。
バカにするような笑い顔はあるし、こっちの事を下に見てくるような笑顔だってある。
でも、あの女子の笑顔はそういう感じではなくて━━こういうと首の後ろのあたりがモゾモゾしてしまうけれども━━自分に興味と好意をもってくれている笑顔だった。
そんな風に笑いかけてくれたのに、こっちが何も覚えていない、相手がだれなのかも分からないのは━━いくら相手が自分が苦手だと思っている女子だとしても━━なんだか申しわけがないような気もするのだ。
(もう一度……見てみようかな?)
カベの方を向いてデイパックに体を乗せているので、泰夢のせなかの方の、そのななめ前の方に例の女子はいるはずだった。
(でもさ、もう一度見てみて、でもってもしアイツもこっちを見てたらどうするよ……)
席もはなれていて、そっぽも向いているのに、泰夢の頭の中はあの女子の事でいっぱいになっていた。
(あとは……さっきのバスの中か?)
乗っていたバスが細い道に入ってから終点の駅に着くまでの間、泰夢はずっとねむっていた。
もしかしたら、その間に何かあったのかもしれない。
あの女子がこの学習スクールに来ているということは、自分と同じように終点までバスに乗っていたはずで、泰夢はおり口のすぐ近くの席にすわっていたのだ。
泰夢が目を覚ました時の運転手さんの様子からすると、バスには泰夢以外のお客は乗っていなかったのだと思う。
だとしたら、あの女子は確実に自分の横を通ってバスからおりた……その時に、例えばヨダレをたらしていたとか、うっかりねごとを言っていたとか、そういったものを見たか聞いたかして、だからこっちを見て笑ったのかもしれない。
(━━━━?)
ふと、泰夢の頭の中に何かがうかんだ。
それをたどろうとした所で━━強くせなかをたたかれて、そのいたみに思わずふりかえる。
「お前、なにしてんだよ……!」
するどい声がし、三人の男子が泰夢を取り囲んでいた。
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なんと、一難去ってまた一難でしょうか?
では、次回もお楽しみに!
小林るい
