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泰夢(たいむ)のお話:17

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オンボロ教室で泰夢が見たものは…?
それでは、どうぞ!!

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 教室の中は、泰夢(たいむ)の家の近くにある例の「ニコニコ風車の家」ほどオンボロではなかった。
 太い柱や天井のすみの木の部分などをよく見てみると、黒茶色になっていて古びている感じがするので、本当は同じぐらいの年を重ねている建物なのかもしれない。
 けれども、カベはボロボロとくずれてこないし、ゆかなどもまだ新しくて清潔な感じだった。
 広く取ってあるげんかんのすぐ横にはちいさな手あらい場所とトイレが二つあり、そのままろう下がずっとおくまで続いていて、その右手側が教室になっているようだった。
 他の生徒たちに習ってげんかんでくつをぬぎ、そこにすえ付けてあるげた箱━━学校にあるような一人用のボックスになっているようなものではなく、図書室の本だなみたいに横に長い仕切り板で上下に五だんほど仕切られた、いかにも手作りの木のげた箱━━の一番下のすみにくつを置く。
 ろう下のおくの方はつき当りになっていて横引きの戸があり、その戸には大きく「事務室」とプレートがついていたので、たぶんそこは講師たちの部屋になっているのだろう。
(なんだよ、外はボロっちいけど、中はけっこーマトモじゃん)
 その学習スクールの様子にむねをなでおろした泰夢は、続々と教室に入っていく生徒たちの後に続き、デイパックをかたに引っかけるようにして教室へと入っていく。
 教室の中は少しうす暗い感じがしたが、それでも居心地はけっして悪くないと泰夢は思った。
 広さはちょうど学校の教室の半分ぐらいで、部屋の真ん中にふすまの敷居(しきい)らしきものがあるから、元々は二つの部屋をひとつにして使っているのだろう。
 おそらくはさっきの「事務所」とかの辺りにふすまがしまわれていて、必要な時には教室を分けるのか、もしくはいつもは教室が二つあり、今回は「夏休み強化コース」のために、特別に一つにしているのかもしれない。
 そこに学校の保健室や職員室で見るような、横に長い細いつくえが何列にもならべられていて、そのおくに教だんと教たく、黒板代わりのホワイトボードのほかに、講師が授業で写真や図を生徒に見せる時に使う大きなモニターなどが置いてあった。
 これを見た泰夢は、これならだいじょうぶだとますます安心する。
 そもそもふだんは学習スクールでは友だちと遊んでばかりいて、ほとんど勉強などしたことがない泰夢なのだが、やはり自分が通って「授業を受ける」ところはいろんな物がしっかりと整っている方がいい━━そしてもちろん、だからと言って泰夢が勉強をするかどうかは別の話だ━━と思う。
 講師はまだ来ていない様子で、教室に入った生徒たちはそれぞれに思い思いの席にすわっていて、仲間内でおしゃべりをしている者やゲーム機で遊んでいる者、すでにキチンと教科書や筆記用具などをつくえにならべ、教だんの方を向いてしせいをただしている者もいる。
 どうやらあらかじめ決められた席はない様子で、泰夢は教室のどこにすわろうか、どこだったら一番にラクができるか、もし気まぐれに講師が質問などをしてきた時にいかに目立たず当てられないですむか、などを頭の中で計算しながら教室の中をぐるりと見回し、ちょうど真ん中あたりのはしっこの目立たない辺りに目星をつけると……
(━━━━!)
 泰夢の目の動きが止まった。
 目星をつけた教室の真ん中の、そのちょうどいい場所に、見覚えのあるすがたがあったのだ。
(あ、あれって、あん時の……)
  黒くて長いかみを頭の後ろで一つにまとめ、白いたっぷりとした半そでのシャツにベージュのキュロットスカートのそのすがた……
 それは、あのバス停にいた女の子だった。
 バスの中と、外とで目が合った女の子……そして、その時と同じように、いまもまた目が合い、同じように泰夢を見て笑顔をうかべた。
 泰夢のせすじが一気にシャンとする。
 見知らぬ女子に笑われるほど、ジロジロと長い間見た覚えはないけども、もしかしたら自分のしらない間に、実はかなりの時間じっと見つめてしまっていて、こっちの事をヘンに思ったのかもしれない。
(なんで、どうしてアイツがここに?)
 とっさに顔をそむけ、目だけでチラリと見ると、その女子はまだこちらを向いていて、そしてあきらかに笑っている感じだった。
(と、とりあえず、どっかに別のところに行こう……)
 泰夢は目立たない席をあきらめると、その女子からにげるようにして、教室のおくの方へとすがたをかくした。
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やっと安心した泰夢に不安の追い打ちがかかるようです。
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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