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泰夢(たいむ)のお話 その二:32

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自分の家に帰ってきた華恋。母親に呼ばれ隣のリビングに行きますが……
それでは、どうぞ!!

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 リビングへと続く引き戸をあけると、パッと明るい光が華恋(かれん)の目に飛びこんできた。
 華恋がそれまでいた学習づくえのある部屋は、寝室としても使っているから、部屋の調度は落ち着いた感じになっているけれども、リビングのほうは、テレビとせの低いテーブルとクッションのソファがおいてあって、カーテンもかべ紙の感じもこちらは全体的に明るい。
 さらに母親が照明をバッチリと点けているから、余計に光が反しゃしてちょっとだけ目がキュっとなる。
「……話って、なに?
 何かの用事だったら早くして。
 わたし、これから本を読むんだけど……」
「本……?
 あーっ、自由研究ね!
 泰夢くんといっしょにやるんだ━━って言ってたヤツでしょ」
 いつも使っているコップを見せ、麦茶飲む? と聞いてくる母親にうなずいて、クッションのソファにゴロリと転がると、テーブルに置かれたコップに麦茶が注がれるすずしい音がした。
「…………」
 ソファのとなりに母が来たので、本当だったらそのままグッタリと横になっていたいところをがんばって体を起こし、すわりなおしてから麦茶をコクリと一口飲む。
 おなかは泰夢(たいむ)の祖母の家で、泰夢とおばあちゃんとで三人で食べてきたのでいっぱいだった。
 泰夢といっしょにがんばって運んだ菜っ葉のおつけものはとてもおいしくて、これが大好物のおばあちゃんもとてもよろんでくれた。
 おつけものの他にも、おばあちゃんがうでをふるって作ってくれた大きなシュウマイに、みりんぼしの焼き魚、具のたくさん入ったおみそしるなどがあって、それだけでもごはんをたくさんおかわりしたくなる。
 もちろん、泰夢も華恋もおかずがおいしくておかわりをした。
 それに加えて今日は、あの菜っ葉のおつけものが二人をいつも以上に満ぷくにしたのだ。
 華恋が菜っ葉の部分をていねいにおはしで広げて、ごはんをクルリとまくようにして食べているのを見た泰夢が、
「━━ちょっ、華恋ちゃん、なにそれ!
 ハッパの菜っ葉、おだんごみたいになってんじゃんか!
 スッゲー、どうやったの? オレもやりたい!」
 と、食べかけのごはんつぶが口から飛び出すぐらいにおどろき、そこから二人でくらべっこをするみたいにして、夢中で菜っ葉をひろげて、ごはんをくるんで食べて、また菜っ葉をひろげて……とやっているうちに、おばあちゃんがたいたごはんがすっかりと空になってしまった。
 その後は、泰夢と二人してすっかりパツンパツンになったおなかを手でポンポンと景気よく打ち鳴らして、どっちが大きいか、どっちがいい音がするかなんていうことをくらべて笑いながら、フウフウと苦しい息をしてかたづけの手伝いをしたのだった。
「……なんだか、楽しそうね!
 今日は泰夢くんと図書館だったんでしょ?
 どう、楽しかった?」
「べつに、楽しくはないけど……」
 自分でも知らないうちに笑っていたのだろう、母にそう言われた華恋は、サッと顔をいつものようにして、もう一口麦茶を飲む。
「またまたぁー、そんなこと言って!
 華恋ってば、泰夢くんが来てからいつも楽しそうにしてるし、
 お母さん、ちょっとホッとしてるのよ?」
「ホッとしてる……って、
 ……どうして?」
「えーっ、だってほら……泰夢くんがくる前は、
 『知らない男の子といっしょなんて、イヤだ』って言ってたから。
 でも、そのあとは一回もそんなこと言わないじゃない?」
「…………」
「それに、ここ最近華恋が話すことっていえば、
 泰夢くんのことばっかりだし、
 おかげで、お母さんすっかり泰夢くんにくわしくなっちゃった」
「そ、そんなことないでしょ……」
 母親に言われ、そんなに泰夢くんのことを話してたかな? と自分で思い返して、たしかにそうだったかもしれない……と、耳の先がホワっと熱くなる気がした。
 華恋が自分のことを話すのは、母親しかいない。
 小学校や学習スクールの友だちとも話はするけれども、昨日はこんな事をした、いついつはどうだった、とか、そういう自分がやったことや思ったことを報告するような話し方を、華恋はあまりしない。
 友だちとのおしゃべりの中で、そんな自分のこと発表会みたいな感じになることがあって、まわりの子たちはいろいろな話をするのだけれども、どうも華恋はそれをするのが苦手だった。
(……わたし、
 どんなこと話してたんだろう……
 なんかおかしなこととか、言ってないよね)
 毎日のことだから、話の内容なんて覚えていない。
 そもそも、泰夢のことをそんなに話しているだなんて、いま聞くまでは自分でも思ってもみなかった。
 自分ではわからないけれども、母親がそう言うぐらいだから、きっといろんなことを話しているのだと思う。
 気がつけばコップの麦茶がもう無くなっていた。
 それでものどがカラカラのような気がして、華恋はテーブルの上にあった水てきのついた麦茶入れに手をのばすと、自分のコップにそそいだ。
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母親から泰夢のことばかりだと言われ、思わず動揺する華恋でした。
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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