泰夢(たいむ)のお話:20
授業開始で泰夢も集中します!
それでは、どうぞ!!
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授業開始のチャイムで、教室内がざわざわとする。
席についていない生徒たちがキョロキョロと周りを見回し、あわてて手近な空いているつくえにすわる。
そのさわぎが落ち着いたころ、つくえにふせていた泰夢(たいむ)もようやく体を起こした。
泰夢がいる教室の一番うしろの角にある席からは、生徒たちを全員見ることができた。
あの三人組は泰夢のひとつ前の列の出入り口に近いところに固まって席をとっていて、例の女子の方もさっきと変わらずに教室の真ん中━━実はこのあたりにいるが一番に都合がよくて、先生や講師からは生徒たちが集まって見えるので、後ろの方やはしっこの方の目立つ場所にすわっているよりも、質問で指されたりすることが少ないと泰夢は思っている━━の最初にねらっていた席にすわっていた。
しばらくして講師が何人か教室に入ってきた。
最初に室長という講師の親玉みたいな人が教だんに上がってあいさつをし、それからモニターに日毎の時間わりなどをうつすと、同じことが書かれたプリントを他の講師たちが席を回って配っていく。
一通りプリントが配りおわると、今度は室長が授業の進め方や教室での過ごし方などの説明をはじめる。
生徒たちもしんけんな顔つきでモニターを見たり、手元のプリントに目を落としたりしていた。
泰夢は、教だんで話している室長の顔にどうも見覚えがあるなぁと思い、しばらく顔を見ていて、そしてさっき学習スクールの前でハッピとハチマキをして、入ってくる子どもたちに声がけをしていた人だと思い出した。
やがて説明がおわり、その次に三、四人いた講師たちが順番に一人ずつ、自分が受け持つ授業やその内容、それからちょっとしたじこしょうかいとして、好きなことや好きな食べ物、休みの日には何をして過ごしているか、といったような話をした。
話が終わるたびに生徒たちも「よろしくお願いします」と声を上げてあいさつをし、最後はもう一度さっきの室長が教だんに上がって、
「夏で暑い日が続きますが、みんなでいっしょに最後まで勉強をして、
この強化コースで実力アップをしていきましょう。
それではお話の最後に、せーの……
━━みんなでー、がんばるー、なつやすみーっ!」
と、大きくうでを上げて声をだし、それから生徒たちに向かっていせいよくはくしゅをした。
それに習うように、講師たちも「がんばろうね!」「みんなでやりぬこうね!」と、それぞれに声を出して生徒たちにはくしゅを送る。
(学校の友だちといっしょじゃないんだし、がんばるのもやりぬくのも意味ないんだけどなぁ…)
そう思いながらその講師たちのおうえんを受け、そしてさっそく一時間目が始まるということになったので、デイパックをつくえの上からどけて、ノートと教科書を開いてふでばこを置くと、注意を受けたり後でよび出されたり━━そうなったら、よけいにめんどうくさいことになるだろうし、最初の日から目をつけられでもしたら、この最悪の学習スクール通いが本当にもうダメなものになってしまう━━しないように、形だけでもと真面目に授業を受ける準備をした。
二人の講師だけが残り、室長とその他の講師が教室から出ていき、いよいよ授業が始まった。
一時限目の授業は算数だった。一人の講師が教だんでホワイトボードに書きながら説明をし、もう一人が生徒たちの間を回りながら、質問に答えたり、つっかえている所を教えたりする。
授業はまずは学校で習ったところのおさらいということらしく、泰夢でもじゅうぶんについていける内容だった。
始めは例の女子の正体や、さっきの三人組をこれからどうするかとか、いろいろと考えていた泰夢だったが、やがて考えてもどうしようもないよなと思った。
そうして何もすることがなくなり、なんとなくヒマになって講師の話を聞いていた泰夢だったが、やがて少しずつ話に引きこまれていき、気がつけばあっという間に授業が終わっていた。
休み時間のあいだは、例の女子と三人組をよけるために━━もちろん、それ以外にも友だちを作ろうとがんばって話しかけてくる他の生徒もいるだろうと考えて━━朝の時と同じようにデイパックに体をあずけて、イヤホンをして何か聞いているふりをして、せなかを向けて過ごした。
そうして時間は過ぎていき、いつもなら友だちとふざけたりしゃべったりしている間に学習スクールの時間が終わるのだが、今日はめずらしく泰夢も集中して授業を受け、そのままお昼休みを告げるチャイムを聞いた。
今日は「夏休み強化コース」の初日だから、授業はここまでだと講師がいい、最後はみんなで礼をしてそのまま終わりになった。
(オレ、なんだかえらくなったかも……)
めったに勉強で集中することがない泰夢だったが、今日は友だちもおらず、また余計なことを考えなかったせいか、しっかりと全ての授業を真面目に取り組んだので、頭の中に何かがしっかりとつまったような気がし、そしてその感じがそれほどきらいでなはく、むしろ体育の授業のマラソンで最後までがんばって走りきった後のような満足した気持ちがして、たまには勉強をするのも悪くはないなと、ちょっと思ったりもした。
(よっし、終わった。早くコンビニ行ってゲームだ、ゲーム!)
つくえの上にあった教科書やノートをてきとうにデイパックにおしこむと、本当に飛びはねるような勢いで、泰夢は教室からかけ出していった。
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やっとゲームをすることが出来そうですね!
では、次回もお楽しみに!
小林るい
