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泰夢(たいむ)のお話 その二:4

泰夢(たいむ)のお話 その二:4

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泰夢と華恋とミハシロさん……なにやら波乱の予感がします。
それでは、どうぞ!!

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 グッとこっちをにらんで立っている華恋(かれん)を見て、手の中でクルクルと回していた水とうのフタをギュッとにぎりしめる。
 口の中が急にカラカラにかわいた感じになり、カサカサになったのどをなんとかしようと、泰夢(たいむ)が大きな声を出す。
「━━か、華恋ちゃん!
 だ、だいじょうぶだってさ!
 オレ、サボってないよ、ホントだって!」
「泰夢くん……図書館は静かに本を読むところだから、
 他の人たちのめいわくにならないように、
 お話をするときは静かにね?」
「す、すみません……」
 耳の先まで真っ赤になってうつむく泰夢に、ミハシロさんが口元に手を当ててクスクスと笑う。
「こんにちは、華恋ちゃん!
 ━━そうねぇ、泰夢くんめいよのために言っておくと、
 わたしが声をかけるまでは、ちゃんと自由研究をしてたから安心してね」
「そ、そうなんだよ。
 華恋ちゃ……じゃなくて、寺田さん。
 オレ、いやボクは、ちょっと休けいで水をくみにきただけで……」
 そう示しを合わせるようにする泰夢とミハシロさんに、華恋のまゆげがピクッと上がる。
 ミハシロさんはウソを言うような人ではない。
 それに、泰夢があんな風にしどろもどろになっている時は、本当にこまってしまって何も考えずに話をしている時で、そういう場合は正直にあったこと、起きたことだけを言っている。
 毎日学習スクールに行き、ご飯を食べて、宿題をして……ずっと泰夢といっしょに過ごしている華恋だから、それはわかる。
「…………」
 トートバッグを手に持ちかえて、ミハシロさんに軽く頭を下げてから泰夢の前に立つ。
「えっ、なに?
 寺田さん、どうしたの……?」
「確にんする……
 泰夢くんが、ちゃんとやってたのか、
 自分の目で見てみなくちゃ、分からないから」
「う、うん、いいけど……
 でもさ、ボク、お水をくみに━━」
「そういうの、別にいいよ。
 お水なら、わたしの水とうに入ってるの、飲んでいいから。
 ━━それじゃあ、ミハシロさん、失礼します!」
 もう一度頭を下げると、華恋は泰夢のうでを引っぱり、そのまま自習室の方にスタスタと歩き始める。
 急にうでを引っぱられた泰夢も、体のバランスをくずしてかた足ケンケンで後ろにピョンピョンと飛びながら、あぶないから、あぶないから! と、小声で華恋に文句いいながらその後についていく。
(泰夢くんも、華恋ちゃんも……
 どっちもがんばれ!)
 二人の様子を見て、ミハシロさんはそうやさしく声をかけると、丸いめがねを指でヒョイと上げて、本をたくさん乗せたカートをおして図書館の方へと消えていった。
「……か、華恋ちゃん!
 ホントにあぶないからさ、
 うでだけ━━うでだけはなして!」
「…………」
 後ろケンケンを続ける泰夢のうでを、ようやく華恋が解放する。
 つかまれていた方のうでをグルグルと回しながら、まだブツブツと言っている泰夢を放っておいて、自習室の大きなつくえの上に広がっている本やノートの前にドカリとこしを下ろした。
「えーっと……
 『神社には鳥居という門があり、その先に参道という道があります。
  真ん中は神様が通るので、お参りに行く時は、はしの方を歩きます』」
 泰夢のノートを両手で持ち、じっくりと見ていく。
「『その先には拝殿(はいでん)と、奥に本殿(ほんでん)があります。
  拝殿はわたしたちがお参りをする所、本殿は神様がいる所で、
  ふだんは本殿には人が入ることができません』」
「……ね、ちゃんとやってるでしょ?」
 熱心にノートを読んでいる華恋に、まだ手に持っていたコップをグリグリといじりながら泰夢が声をかける。
 図書館の本を調べて書いたことだから、算数のテストみたいに合ってる、まちがってる、ということないと思うけれども、学校の先生にテストの答案をじっくりと見られてみるみたいで、どうにも落ち着かない。
「ねぇ……華恋ちゃん。
 それで、だいじょうぶだよね?
 オレ、ヘンなこととか、まちがったこと、書いてないよね?」
 とちゅうからだまったままで、ジッとノートを見ている華恋は真けんな顔をしている。
 あんまり華恋がなにも言わないので、だんだんと泰夢のむねの中が暗く重たくなってくる。
 なんだか泣きたいようなやけっぱちのような気持ちになって、ツンとしてきた鼻をズズッとすすると、そこに水とうが差し出された。
「えっ……なに?」
「なにって、お水、飲みたかったんでしょ?
 ━━それから、泰夢くんのことうたがってごめんなさい。
 これ、スゴくよく出来てると思う」
 そういって、華恋がにっこりと笑った。
「そ、そんなの……あたりまえじゃんか!
 だってさ、これはオレと華恋ちゃんの『共同研究』ってヤツだからさ、
 オバジイだってそうやって出していいって言ってたじゃん!」
 ほっとしたのと華恋が笑ってくれたのとで、泰夢の目のはしっこの辺りがジワっとした。
 それをごまかすように、華恋から受け取った水とうから冷たい水をコップに注いで一気に飲みほす。
「でもってさ……でもって、
 オレ、華恋ちゃんといっしょに神社のお祭りに行ってさ、
 この自由研究をカンペキにするんだもんね!」
 夏のお祭りと神社の研究━━それが、二人の自由研究のテーマだった。
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二人の自由研究のテーマは、楽しい夏のお祭りでした! 
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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