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泰夢(たいむ)のお話 その二:29

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まだ決まっていなかった「本を読む」の問題に決着がつきます!
それでは、どうぞ!!

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 ミハシロさんから本を受け取った華恋(かれん)が、それを横にいる泰夢(たいむ)にわたそうと差し出す。
「ありがとう、華恋ちゃん!」
 元気な声でそう言い、二さつあったうちの一さつだけを取ると、デイパックを貸し出しカウンターの上におろして、そこに放りこもうとする。
「……ちょっと、泰夢くん。
 なんで一さつしか持ってかないの?
 利用カードはわたしのだけれど、借りたのは泰夢くんなんだからね!」
「えーっ、それってちがうじゃん!
 だってさ、さっき二人で読むって約束したでしょ?
 それだから、一さつは華恋ちゃんのじゃんか!」
「ううん、ちがわない。
 それは泰夢くんが勝手に言っただけで、
 わたしはまだ、一言も『読む』って言ってないもの」
「……でもさ、本を借りてくれたじゃんか。
 それって……華恋ちゃんだってさ、
 オレといっしょにさ……読んでくれる━━ってことじゃないの?」
「…………」
 言い始めは強かった泰夢だったけれども、じっとこっちを見てくる華恋の目に、ちょっと気持ちが弱くなる。
(……華恋ちゃん、
 読むって言ってなかったのかも……)
 華恋にそう言われて、泰夢もそんな気がしてくる。
 さっきは、借りられないと思っていた本が、やっぱり借りられることになって、ついついもり上がってしまった。
 でも、言われてみればたしかに、華恋は「自分も読む」とは言っていなくて、おこった顔してだまってカードを出してくれただけだった。
(…………)
 いっしょに本を読んで感想をおたがいに話すというアイデアは、泰夢の中では最高の思いつきだった。
 でも、それは自分だけがそう思っていただけで、華恋にとってはめいわくだったのかもしれない。
 だから、利用カードを出してくれた時におこった顔をしていたのも、きっとそれが原因なんだろう。
 そう思ったとたん、自分のほっぺたの内側のあたりがキュッとなって、続けてのどのおくの方がヒクッとふるえるような感じがした。
 鼻と目のあいだのところが、ツンと少しだけいたいような気がして、でも、それをグッとがまんする。
「…………」
 チャックをとじかけたデイパックをもう一度ひろげると、手をのばして華恋の持っていたもう一さつの本を取ろうとする。
 華恋をおこらせてしまったのもだめだと思うし、自分だけで勝手に決めつけたのも良くなかった。
 でも、それと同じぐらいに、華恋といっしょに本を読んで感想をしゃべったり聞いたりすることができないんだということが、まるで楽しみにしていた遠足が雨で中止になってふりかえ授業になってしまった時━━それはそれで、小学校の教室なのに遠足のお弁当を自分の席で食べる、というちょっといつもとちがう感じが楽しいは楽しいのだけれども━━みたいに、泰夢の気持ちをゆさぶった。
(いっしょに読みたかったなぁ……)
 華恋の本を取ろうとした泰夢の手が、スカっとなった。
「えっ……なんで?」
 顔をあげると、本は華恋のむねの中にあった。
「━━ねぇ、泰夢くん、
 わたしの話、まだ終わってないから」
 両手で本をかかえた華恋が、泰夢をじっと見ていた。
「泰夢くんね、いっつもそうなんだよ。
 なんにも言わずに決めて、なんにも言わずに動いて、
 で、なんでも『いいじゃん、いいじゃん!』って終わらせるでしょ?」
「…………」
「泰夢くんは、わたしのことぜんぜん見てない。
 わたしたちは……これから二人で自由研究するんだよ?
 そんなのだったら、いっしょにできないから━━」
 華恋の言葉に、さっきがまんした鼻のところがツンする感じがもどってきて、がんばってこらえようとする。
 その泰夢の様子に、本をだきしめている華恋の両手もギュッとなる。
 自分の中にある泰夢へのいろいろな気持ちが、ゴチャマゼになってはげしく動いているような気がする。
 その気持ちにおされているのか、まかれているのか分からないけれども、がんばって、自分の思いを言葉にする。
「わたしは……わたしは泰夢くんといっしょに、
 最後まで自由研究をやりたいと思うよ。
 泰夢くんは━━どう?」
 華恋の言葉が泰夢の耳にひびく。
 しんけんなその声に、これはふざけてはいけないことなんだな、と思う。
 鼻のツンとするいたいのや、ほっぺたがキュっとなる感じは、いつのまにかなくなっていた。
 大きく息をすって、頭のなかに真っ先にうかんだ言葉をそのまま出す。
「オレも━━華恋ちゃんといっしょがいい。
 しっかりと、二人で、夏休みの自由研究をやりたい。
 ……オレ、ゼッタイに最後までやるから!」
「うん━━わかった。
 泰夢くん、その言葉、本当に……ゼッタイだから。
 わたしとの、ゼッタイの約束なんだからね!」
 そう言って華恋は、むねにだきしめていた本を自分のトートバッグへとおしこんだ。
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泰夢と華恋、二人で協力して最後まで自由研究を進めていくようです!!
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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