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泰夢(たいむ)のお話:33

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話をすればお互いの距離も縮まっていくものです!
それでは、どうぞ!!

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 目をキラキラとさせてそう自分の母の事を話す華恋(かれん)を見て、泰夢(たいむ)もなんだか温かい気持ちになり、自分でも知らないうちにその口元にも笑みがうかんだ。なので……、
「━━それにね、もう死んじゃったけど、
 お父さんだってわたしの本当のじまんで、今でも大好きなんだよ」
 そう続けて華恋が言いい、泰夢の顔をじっと見つめた時も━━いつもの泰夢なら女子に目をつけられただけですぐににげだすし、だれかが死んでしまったなんて話を聞いたら、それこそ何を言っていいのか、どうやって声をかけたらいいのかわからず、本当にこまり果ててしまうのだろうけれども━━自分の心の中にうかんだ言葉を素直に口にすることができた。
「……そうなんだ。それってさ、きっとスゴくつらくて大変だったよね。
 でもさ、お父さんはさ、華恋ちゃんにいろいろ教えてくれてさ、
 それがオレにも伝わってさ、だからさ、だから……」
 頭と心の中が言いたいことでいっぱいになり、そこで一度、泰夢の言葉がとぎれた。
 もし、自分の父か母がいなかったらどうだろうか?
 家に帰っても夕ご飯を作って待っていてくれる━━そしてもちろん、お小言もいっしょに言ってくる━━母がおらず、休みの日にはいつもゴロゴロしてる父もいなくて、いつもずっと一人でいるのはどんな感じなのだろうか?
 母が入院して、父と二人で過ごした時は、好きなことが思うぞんぶんにできて楽しかったけれども、やっぱりさみしい気持ちは心の中にあって、だから泰夢は、産まれてくるはずの弟━━か、もしくは妹━━を悪く考え、いつも暗い思いになってしまっていたのだし、そして、それが毎日ずっと続くのだとしたら、自分はどうなってしまうのだろうと思う。
 そして、華恋はそういう毎日をいま、過ごしているのだ。
「…………」
 何かを言おうとするけれども、口がモゴモゴするばかりでちっとも言葉がでてこなかった。
 じっと待っていてくれる華恋の顔を見つめながら、いろいろな考えが泰夢の頭の中をかけめぐる。
 もちろん、泰夢には父も母もいるので、それがどんな風に感じるのか本当のところはわからないし、もっと言ってしまえば、泰夢は華恋ではないのだから、わかることはできないのだろうと思う。
 でも、わかろうとする事は泰夢にもできるし、泰夢がわかろうとしていることは、きっと華恋にも伝わるのだろうと思った。
「━━華恋ちゃんのお父さんってさ、オレ、ホントにスゴいと思った。
 なんか、うまく言えないけどさ、オレもさ、
 きっと華恋ちゃんのお父さんのこと……好きなんだと思う!」
 どうにかこうにか言葉を出し切って、ぐっと口を結んで「どうだ!」と言わんばかりの顔をする泰夢に、華恋の口元も自然にゆるむ。
「……ありがとう」
「う、うん……」
 そのまま二人ともテーブルの上に目を落とし、散らばった学習帳をせいとんしたり、ぬるくなった麦茶を飲んだりする。
 泰夢も華恋も、こんなに自分や相手のことを話したり聞いたりしたことがなかったので、なんだか不思議な気分だった。
 女子だからっていつもこっちに文句をつけてきたり、おこったりするだけじゃないんだなぁと泰夢は思い、華恋も同い年の知らない男子だからどうしようかと思っていたけれども、こうして話をしてみたあとでは━━もちろんバスの中でもそうだったし、最初の時はイヤな感じな男子だったが━泰夢のことをけいかいする気持ちはすっかりなくなり、いっしょにいてもだいじょうぶだと思うようになっていた。
「あのっ━━」
 すっかりとテーブルの上が整い、することもなくなってしまった泰夢と華恋が、ふと同時にそう声を上げる。
「……泰夢くん、先に話していいよ。
 わたし、別に大したことを言おうと思ったんじゃないから……」
「いーや、オレの方だってそうだったし。
 それにさ、今のはさ、ぜったい華恋ちゃんの方が早かったじゃんか!」
 泰夢が鼻をふくらめながら勢いよく言うのを見て、ただどっちが先かというだけなのにどうしてこんなにムキになるのだろうと、つい華恋のほっぺたがゆるむ。
(……泰夢くんってば、ちょっとあわてんぼうなのかな。
 さっきのおばけやしきの時もそうだったけど、すぐに強がったりして…
 ちっちゃい子みたいで、なんかおもしろい!)
 華恋の小学校では、近くにあるようちえんにクラスで遊びに行ったり、逆に園児たちが華恋たちの教室に遊びに来るという課外授業が定期的にあり、その時にやって来る男の子たちと、泰夢のそういうふとした仕草や行動が重なって見えたのだ。
「━━それじゃ、わたしの方からね!」
 そう言って立ち上がった華恋は、テーブルのはしっこをつかむと、泰夢にもその反対側をつかませる。
「えっ、どういうこと?
 ……これ、テーブルをどかすの?」
 華恋に言われる通りに、ワケの分からないままテーブルを部屋のすみっこに移動させると、後に残ったクッションとデイパックもいっしょにして、動かしたテーブルの下におしこむ。
 いったい何をするんだろう?と首をひねる泰夢の前で、華恋は広くなった部屋の中を確かめるようにして、ぐるりと一周りする。
「━━おばぁーちゃーんっ!
 ちょっと、やるからねーっ!!」
 華恋がそう声を上げると、下から祖母の返事が聞こえた。
(……華恋ちゃん、いったい何をするつもりなんだ?)
 ますますワケが分からなくなる泰夢の前で、華恋は部屋の真ん中にスッとしせいを正して立ち、ゆっくりと目をつぶった。
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突然に立ち上がった華恋、いったい何を始めるつもりでしょうか?
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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