泰夢(たいむ)のお話:14
バスの絶妙な振動ってちょっといいですよね!
それでは、どうぞ!!
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ふいにガガガガという音がして、泰夢(たいむ)のシートのせもたれがビリビリと細かくふるえた。
いつの間にかバスは広く開けていた川ぞいの道路から外れていて、こい緑色の森をかかえる山のしゃ面が、ぐうっとこっちに向かってせまってくるような、そんなせまくて少し暗い道へ分け入るようにして進んでいった。
それまではわりとまっすぐで、カーブがあっても大きくてゆったりとしていたけれども、この山の道に入ってからはいつも右へ左へと曲がりくねっていて、そのたびにバスがゆれた。
しばらくの間は体がぐーっと前に出たり、右や左にたおれそうになってどうにも落ち着かなかったが、シートにあさくすわっておしりを前に出し、せなかをバスの横のまどとせもたれの角におしこむと、まるでゆりかごにねころんでいるみたいに、体が見事にすっぽりとおさまった。
(これなら、ラクチンでいいや!)
道がうねるたびに、まるでジェットコースターにでも乗っているようにバスの車体と自分の体とがいっしょに動き、前の大きなガラスのまどと横のマドとの景色がいっしょにさーっと流れていって、それが泰夢にはたまらなく面白かった。
バスの屋根がギリギリのトンネルに向かってすいこまれるようにして突入していったり、森の木々の間からこぼれる太陽のまぶしいキラキラとした光の中を進んだりしていくうちに、泰夢は自分の中にあったいろいろな不安に感じていた思いが、だんだんと強く大きくなっていくような気がした。
知らない町の知らない場所で、毎日学習スクールの授業を受けなくてはならないのは、やはり泰夢にとっては気が重いことだった。
「お前の気が進まなかったら、別に行かなくてもいいんだぞ」
父はそう言ってくれた。
いま考えてみれば、その父の言葉の通りにした方が良かったのではないかとも思う。
しかし、何もない祖母の家でじっとしているのも、泰夢にとってはつらいことだった。
そんなたいくつな時間がずっと続くのであれば、まだ学習スクールの夏休み強化コースに行ったほうがマシかも知れないし、それにあのプリントにあったコンビニまでたどり着ければきっとなんとかなるだろう、とその時の泰夢は思ったのだ。
(……な、なんだか、気持ちが悪くなってきたかも)
まどの向こう側で大きく動く景色を見るのがつらくなってきて、泰夢はそっと目をとじた。
頭の中に広がっていく不安な気持ちと、おなかの上のあたりから感じる気持ち悪さからにげるようにして、しっかりと目をつぶってデイパックをむねにかかえこむ。
まぶたのうらの暗い世界のなかに、時々あたる木の間からの光が細かく散っていくように感じる。
暗さと明るさ……
その黒と白がかわるがわるする中に、あの日の父と、母と、そして自分の笑い顔が重なって見えた。
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その重なりの向こうにもう一人、だれか別のかげが見えたような気がして、それはまだ見たことはないのだけれども、でもそれが小さな女の子なのだという事に泰夢は気が付き、こっちに向かって大きく手をふって笑っているその女の子に、声をかけようとしたけれども、なかなかその声は女の子にとどかずに、何回も何回も大きく声を上げて━━そうしていつの間にか泰夢は、そのままバスのシートに体をあずけて、すっかりとねむってしまったのだった。
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うたた寝をしてしまった泰夢は大丈夫なのでしょうか……
では、次回もお楽しみに!
小林るい
