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泰夢(たいむ)のお話:36

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小学生は夏休みの宿題に大忙しです!
それでは、どうぞ!!

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 泰夢(たいむ)がえんぴつを鼻の下と上くちびるで器用にはさんだまま、学習帳をじっとにらんで、あーでもない、こーでもない、としきりに首をひねっている。
 どうやら算数のむずかしい問題につきあたったらしく、さっきからずっとそうやって首をグルグル回しながらあくせんくとうしていた。
 いつもだったらとっくの前に学習帳をほっぽり投げて、ゲームをしたり動画配信を見たりするのに、自分の前で集中している華恋(かれん)につられるようにして、真面目に算数と取っ組み合いをしている。
 実はいっしょに宿題を始めたばかりの時、泰夢はチラチラと華恋の様子をうかがっていた。
 自分よりも早くしかもテンポよく問題を解いていく華恋を見て、できれば宿題を教えてもらうか、もっと言えば答えを丸写しさせてほしいと、いつもの学習スクールで友だちたちとやり合ってるように、ささっとかんたんに終わらせてしまおうと思ったのだけれども、しんけんな表情で学習帳に取り組む華恋に、楽に丸写し……なんて考えていた自分がすっかりはずかしくなってしまい、もっとしっかりやらなくちゃと、ややこしい算数の問題に真っ向勝負で取り組んでいるのだった。
(━━えんぴつをあんな風にするの、わたし初めて見たかも。
 鼻のとこ、かゆくなったりしないのかな……)
 そんな泰夢の様子━━実を言うとこの鼻にえんぴつをはさむのは、泰夢自身も気がついていない無意識のクセで、泰夢がそれを他人から言われて自分でもおどろくのは、もっと先の中学に入ってえんぴつからシャープペンシルを持つようになり、そして周りの同級生たちが、指の上でそれを回して遊ぶ、いわゆる『ペン回し』が流行るようになるころの話になる━━を横目にしながら、すでに学習スクールの宿題を終わらせた華恋は、学習帳をしまうと今度は学校から出された夏休みの宿題に取りかかる。
 国語と算数のドリル帳、社会と理科のワークブックに英語のプリント、漢字書き取りが毎日二ページずつと日記があって、あとは読書感想文と自由研究はどちらかを自分がやりたい方を出すことになっている。
(感想文と自由研究、どっちにしようかな。
 泰夢くんのところの学校って、宿題とかどうなんだろう……)
 これから毎日いっしょに学習スクールに通って、こうしておばあちゃんの家で勉強をすることになるのだから、できれば知っておきたいし、知っていれば、おたがいに助けたり助けてもらったりすることができるかもしれないと華恋は思った。
(読書感想文だと二人はちょっとむずかしいけど、
 自由研究だったら、もし泰夢くんがいっしょにやってくれたら、スゴく助かるのにな……)
 学校の授業で教わるような勉強はスイスイとできる華恋だったが、こうした自由研究みたいな調べ学習や、あとは社会見学なんかの後にあるまとめ学習はちょっと苦手だった。
 たとえば自由研究でテーマを決めるところまではできる。
 でも、それができたとしても、そのテーマについてどこを調べればいいのか、どこまで調べればいいのか、それをどんな風にまとめればいいのか、そういった事が頭の中にたくさんうかんでしまい、そこから全く進まなくなり、もうそこでお手上げの状態になってしまう。
 それに比べると、授業の中の勉強はそうした考えることが少なくて、何かを覚えたり、それをくり返し練習したり、教えてもらったことに注意しながら、もっと良くなるようにするという事がほとんどで、これは華恋にとってはそんなにむずかしいことではなかった。
 そして、華恋自身もいろいろなことを覚え、これまでできなかった事ができるようになるのを、自分できちん見て感じることができるので、そこがとても楽しいと思うのだ。
(これさえなければ、夏休みって楽しいんだけど……)
 漢字ノートに今日の分の書き取りをしながら、そんなことを考えていた華恋は、泰夢が出しぬけに大声を出したのにおどろいて、同じように大声で悲鳴をあげる。
「━━もうっ、びっくりさせないでよ!」
「ゴ、ゴメン……華恋ちゃん。
 でもさ、やっと最後の問題が解けてさ、
 宿題が終わったから、それでつい、やったーってなっちゃって……」
 ごめんごめんと華恋に頭を下げながら、泰夢が学習帳をとじる。
「華恋ちゃん、それって……」
「うん、漢字書き取り。
 わたしの方も、もうちょっとで終わるから……」
 そう言いながら、華恋はえんぴつをスラスラと走らせていき、ほどなくして泰夢と同じようにノートをとじた。
「ふう……終わった!」
「━━あのさ、華恋ちゃんってさ、頭いいよね」
「えー、そんなことないよ。
 だってわたし、自由研究とか感想文とかは、ぜんぜんダメだもん」
 そううつむく華恋に、泰夢が笑いながら、それってきっとオレの『ぜんぜんダメ』とはレベルがちがうじゃん、と言葉を続ける。
「だいたいさ、夏休みって『休み』ってコトじゃん?
 なのにさ、なんで宿題なんかあんだろうね。
 ━━ホント、これさえなけりゃ、夏休みってサイコーなんだけどなぁ」
 さっき自分が思ったことを泰夢が同じように口にしたので、華恋は思わず大声で笑ってしまった。
 その華恋の様子を見て、オレってなんかおもしろいコト言ったっけ?と泰夢が首をひねり、それでもまだ華恋が笑い続けているのに、いつの間にかつられていっしょに笑い始める。
 たくさん集中して勉強をした後だったからかもしれないが、その後も二人は部屋を転がりまわってヒイヒイと息が苦しくなるまで笑い、すこし笑いがおさまったと思ったら、泰夢がおどけて、消しゴムは下から上に同じ方向で!と、うでをシャカシャカと動かして消しゴムかけのそぶりをし、それを見た華恋も、トゲトゲのついたヘンな虫のバナナ!とはやしたてて、そうしてまた息が出来なくなってバタバタしながら、なみだを流して笑い続ける。
 なので━━
「華恋ちゃーん、お母さんがむかえに来たよぉー!」
 と、泰夢の祖母が階だんの下から声をかけても、二人とも全く気が付かなかったのだ。
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転がりまわるぐらい笑った後の疲労感って、ちょっと独特ですよね!
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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