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泰夢(たいむ)のお話:107

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自信たっぷりの泰夢。アロハシャツにどう立ち向かうのでしょうか。
それでは、どうぞ!!

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 目を大きくしてこっちを見る華恋(かれん)に、本当はグイッと親指を上げてこたえたい泰夢(たいむ)だったけれども、華恋の後ろにはイライラとした様子でしたうちをしているアロハシャツがいたので、そのかわりにバチンとかた目をつぶってみせた。
 どう見てもその様子はふざけているように思える。
 そんな場合じゃないでしょ、と華恋が思わず口を開きかける。
 けれども、泰夢はそれを気にせずにデイパックのかたひもを両手で持ってユサユサと位置を整えると、華恋に向かって小さな声で言う。
「華恋ちゃんさ、後ろにいていいよ。
 だいじょうぶ、オレってば全部わかったからさ、
 あとのことは、まかせといて!」
 それが一番心配なんだけどなぁと思いつつ、きっと何か考えがあるんだろうと、泰夢の言う通りに華恋が後ろに下がる。
 すると、泰夢が急に手をあわせ、華恋に向けてペコリと深く頭を下げた。
「あー、そうだったよねー!
 本当にゴメンねー、華恋ちゃん!
 ボク、学習スクールに行くのすっかりわすれちゃってたー」
「…………」
 まるで取ってつけたようなそのしゃべり方に、華恋の動きが止まる。
「ほらー、さっきボクが道路でふざけてころんじゃってー、
 うでにすりキズができちゃったからー、
 消毒しなきゃいけなくてー、華恋ちゃんの家にきたんだよね」
 泰夢が言いながら華恋を見て、アロハシャツを見て、そうして自分の両方のうでを体の前にぐいっと出して、そこにできている大きなすりキズをそれぞれに見せるようにした。
「すりキズがいたくて、いたくてー、
 でもそのせいで、学習スクールにおくれそうになっちゃってー、
 急がなきゃバスに間に合わないよねー。本当にゴメンね!」
 最初は、華恋は泰夢が急に何をやり始めたのか分からなかった。
 まるで学芸会の出し物でやるおしばいみたいに、変なしゃべり方と不自然な動きをする泰夢に、なんで急にこんなことをするんだろうと思った。
 でも、きっと何か考えがあってやっているんだろうと見ているうちに、だんだんと泰夢の考えが分かってきた。
 それは学習スクールの時と同じことだった。
 あの時、自分のかわりにカズくんに向かっていってくれたように、今度はアロハシャツの前に立とうとしてくれているのだ。
(泰夢くん、おしばい苦手なんだろうな……)
 カクカクジタバタと体を動かして、間ののびたしゃべりで話している泰夢を見ながら、華恋のむねの辺りが少し温かくなる。
「わー、もうずいぶんと時間がたっちゃったよー。
 バスが来ちゃうかもしれない、本当に急がなくっちゃー」
 げんかんの先でアロハシャツと泰夢が向き合った。
 そのうしろ、土間のギリギリの所に立って、華恋が心配そうな顔で二人を見ている。
「あの、すみません……」
 泰夢が口を開いた。
 アロハシャツはさっきと変わらず、イライラした顔をしていたけれども、したうちはいつの間にか止まっていた。
 泰夢からすれば、アロハシャツは大人で体も大きくてこわかった。
 けれども、ただの知らない大人の人でもあって、華恋ほどアロハシャツに対して苦手な感じや、いやな記おくはない。
 さっきアロハシャツのきげんが悪くなったのは、どうやらヤツに苦手な思いを持っているらしい華恋ちゃんが、最初に強い言葉で話をしたからだと泰夢はにらんでいた。
 自分のおじさんの事があるから、華恋ちゃんの気持ちは良くわかる。
 でも、例えば友だちの家に行って、ケンカをするようにいろいろ言われたら、いやな気持ちになると思う。
 友だち同士でもそうなのだから、大人が子どもに言われたらやっぱり生意気だと思われるはずだ。
(だいじょうぶ、だいじょうぶ……
 ふつうにさ、大人の人と話せばいいんだから。
 ちゃんとお願いすればさ、きっと分かってくれるハズじゃん……)
 泰夢の目の前に、どこにいてもパッと見て分かるような、ものすごくハデなアロハシャツがドーンと見える。
 そこにプリントされている、図かんでしか見たことがないような南国っぽい鳥と目が合って、泰夢の中のザワザワとした感じが少し落ち着く。
 しっかりとお願いをすれば、きっと分かってくれる……そう信じて、泰夢がアロハシャツに向かって口を開く。
「ボクたち、学習スクールに行かなきゃいけなくて、
 そのためにバスに乗らなくちゃダメで、
 バスがもうすぐ来ちゃうので……もう行ってもいいですか?」
「…………」
「━━お願いします!」
 そう言ってアロハシャツに向かっておじぎをして、頭を上げる。
 アロハシャツの顔を見ると、さっきまでのイライラした感じはすっかりなくなっていて、前のニヤニヤした笑い顔に戻っていた。
「おー、泰夢くん、えらいじゃん!」
 どうやらアロハシャツの機げんはもどったようだった。
(よっしゃーっ、やったーっ!)
 頭の中の泰夢が、グッとガッツポーズをとる。
 あとはアロハシャツがこのまま自分たちを行かせてくれれば、泰夢の考えた作戦は大成功だ。
「それじゃ、ボクたち行きます━━」
 そう言って、アロハシャツのわきをぬけて外に出ようとした時、黒いパンツの足がスッとのびてきて、泰夢の行く手をふさいだ。
「━━あの、ごめんなさい。
 ボクたちを通してもらっていいですか」
 顔を上げてアロハシャツを見ると、ニヤニヤ笑いがいつの間にかニタニタ笑いに変わっていた。
 白いピカピカのかわグツの足を一歩前に出して、泰夢の前にしっかりと立ちふさがる。
「…………」
 せなかにいる華恋をかばうようにしながら、泰夢は自分の作戦が失敗したことを知った。
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泰夢の作戦も空振りに終わり、アロハシャツが2人に立ちはだかります。
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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