泰夢(たいむ)のお話 その二:1
泰夢と華恋の冒険のお話……第二章がここから始まります!
それでは、どうぞ!!
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第二章
シーン1-1:空調の効いた図書館の自習室で
小学校の教室でいつも使っているイスや、学習スクールにあるパタンと折りたためるヤツとはちがって、図書館のイスはせもたれやおしりを乗せる部分がフカフカしていてとてもすわりやすいのだけれども、かんじんの高さが大人用なので、それが泰夢(たいむ)にはちょっと合わない。
つま先がゆかに着くことは着くのだけれども、それは本当に足が着いているという感じではなくて、クツの先っぽの部分がちょっとさわっている程度なので、どうにも足がブラブラとしてしまって具合がよろしくない。
それでも泰夢はそんなことは全く気にする様子もなく、一人で自習室の大きなつくえの上に広げた写真と細かな字がのっている本と、自分のいつものノートの間で、頭をせわしなく行ったり来たりさせている。
例の『えんぴつ鼻はさみ』をやりながらブツブツとひとりごとを言い、かと思うと、ノートの中に体ごと入りこんでしまうんじゃないかというぐらい顔を近づけて熱心に何かを書きつける。
(…………)
街の図書館はりっぱな新しい建物で、エントランスから本が置いてある図書館のスペースまでひと続きでゆったりとしていた。
泰夢は今までこんなに大きな図書館を見たことがなく、華恋(かれん)と二人で初めてここに来た時は、ずっとソワソワして落ち着かず、すぐにあちらこちらをウロチョロとするので、最後には「そんな風にするんなら、もう泰夢くんとはいっしょに来ないから!」と、華恋から大目玉を食らってしまったほどだった。
泰夢の知っている図書館は、広いけれどもそこにたくさんの本が本だなの上から下までびっしりとならんでいて、いつも暗くてしめったようなニオイがする気がして、そこにいるだけでもう気持ちがドーンと落ちこんでしまいそうな所だった。
でもこの図書館はちがっていた。
いま泰夢がいる自習室も、名前は自習室となっているけれども、いわゆる学校なんかの教室のように一つの部屋になっているのではなく、図書館の本がある場所と同じ大きな空間の一部を、せの高い観葉植物の植木で区切って、大きなつくえとフカフカのイスがならべてあった。
五階建ての建物の、一階と二階が図書館になっているのだけれども、泰夢がいる自習室がある所は二階で、しかもカベの一方が全てガラス張りになっているから、見晴らしもとても良かった。
図書館のある建物の周りに、市役所やそうしたものといっしょに大きな広場のある公園になっていて、自習室のあたりからはその全部を見わたすことができた。
間仕切りやドア、きっちりしたろう下みたいなものもないから、図書館の方へ本をさがしに行くのも自由で便利だ。
三階から上にも何かあるらしいけれども、図書館があるのは二階までなので、泰夢は行ったことがなかった。
一階には受付と本が置いてあるスペースの他に、泰夢が好きなコンビニとご飯を食べられるようなお店みたいなものもあって、そっちの方はいつもにぎわっていた。
この図書館で何よりも泰夢が気に入っているのは、天井が高くて広いところだった。
正直に言うと、泰夢はせまい場所があまり好きではない。
例えば学校の体育館倉庫みたいな所は本当に苦手で、そんな事は絶対にないのだろうけれども、そうした場所にいるといつかカベや天井が四方八方からせまってきて、おしつぶされてしまうんじゃないかと思う。
空気もどんどんうすくなっていって、最後はなくなってしまうような気がして、だから泰夢は自分の部屋にいる時でも、いつも入口のドアを少しだけ開けているぐらいなのだ。
その点で言うと、泰夢が知っている図書館は、作りは大きいけれども右にも左にもカベみたいにして立っている本だながあって、どこに行ってもにげ場がない感じで、よけいに気持ちがふさいでしまう。
でも、この図書館は本だなと本だなの間も広くて、カベで仕切った部屋のようなものもなくて、天井も高くて全部がいっしょなので、せまっくるしい感じもしないし、とても居心地がいいのだ。
(学校や学習スクールもさ、
こんな感じになってたらオレ、
勉強だってスッゲーやる気が出るじゃん!)
(━━うん、そうだね。
やる気が出てるんならちゃんとやろうよ、泰夢くん。
いっしょにやる自由研究、何にするのか決めなくちゃなんだよ?)
「…………」
華恋とこの図書館に来てから、何日かが経った。
学習スクールが休みの日はもちろん、授業が午前や午後にしかない時も二人で図書館に通っていろいろな調べ物をしている。
最初のころは、初めての場所にソワソワしっぱなしの泰夢だったが、いまはこうしてつくえにかじりついて、自由研究をがんばっている。
それはもちろん、夏休みの宿題だからしっかりやらなくちゃいけないという事もあるのだけれども、泰夢には━━実は別の理由もあった。
「━━あれ、泰夢くん!
今日も来ていたのね……
自由研究をがんばっていて、本当にえらいわね」
「あ、ミハシロさん。こんにちは!
今日もお世話になります!」
かけられた声に、泰夢はあわててノートから顔をはなすと、イスから飛びおりてしっかりとしたおじぎをする。
「ふふふ……泰夢くん、そんなにかしこまらなくても良いのよ?
だってここは図書館で……
わたしは、みなさんのお手伝いをするのがお仕事なんだもの」
丸いメガネでニッコリとするそのやさしい笑顔に、泰夢も頭をボリボリとやりながら、ヘヘヘといっしょになって笑う。
この図書館のスタッフで、泰夢たちにいろいろと気をかけてくれている『ミハシロ』さんが、泰夢が一生けん命に自由研究をがんばっているもう一つの理由だった。
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図書館で頑張る泰夢。でも、ちょっと頑張る方向が違うかも……?
では、次回もお楽しみに!
小林るい
