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【サステナブルPB特集!】<海外編>JETROに聞く、海外サステナブル消費の最前線(後編)

公益財団法人流通経済研究所
研究員 寺田 奈津美

📌 前編はこちら


欧州企業の規制対応状況とサステナブルブランドの実践例

お話をうかがった方:
日本貿易振興機構(ジェトロ)
海外ビジネスサポートセンター サステナブルビジネス課長 古川 祐さん(写真左)、
調査部欧州課長(当時)安田 啓さん(写真右)

寺田:企業のサステナビリティ対応について、日本と比べて欧州ではどのような違いが見られるのか、またその背景について教えてください。

安田:まず、私どもが毎年実施している、在欧州日系企業約800社を対象としたアンケート結果※をご紹介します。この調査では、「日系企業が注目しているEUのグリーン規制」についても質問していますが、特に今回のテーマに関連して注目度が高まっているのが、次の二点です。

①CSRD(企業サステナビリティ報告指令)などの情報開示ルール②サーキュラーエコノミー(循環型経済)に関する規制

これらは2023年度調査に続き、2024年度調査でも注目度が高く、日系企業にとって非常に重要なテーマとなっています。
2024年度 海外進出日系企業実態調査(欧州編)(2024年12月)

出所:2024年度 海外進出日系企業実態調査(欧州編)(2024年12月)p.20

安田:EUではこうした法規制が強化されていることから、企業、特に日系企業も対応に多くの労力を割かざるを得ない状況にあります。情報開示に関する設問では、多くの企業が「手間やコストがかかる」「対応が煩雑である」と感じていることが分かりました。日本と比べると、欧州ではサステナビリティ対応が「自主的な取り組み」というよりも、「義務としての規制対応」という側面を強く帯びており、それが企業にとって大きな負担になっているのが実情です。

出所:2024年度 海外進出日系企業実態調査(欧州編)(2024年12月)p.21

安田:一方で、情報開示における注目点として、「開示内容が資金調達に影響を及ぼす可能性」という項目を選択した企業は約1割にとどまりました。現時点では、資金調達への直接的な影響というよりも、まずは情報開示対応そのものが大きな課題として受け止められているようです。総じて、日本と比べて欧州では法規制への対応が企業のサステナビリティ対応の中心的な論点になっていると言えるでしょう。

また、少し異なる視点として、近年アメリカなどで見られる「反ESG的な動き」との関係もあります。欧州でも、「規制が厳しすぎることで競争力を損ねているのではないか」という懸念が高まっており、CSRDについても、対象企業の範囲を縮小したり、義務化の開始時期を延期したりするなど、一定の見直しの動きが出てきています。

寺田:規制対応に多大な手間やコストがかかっている一方で、その負担を調整しようとする動きも出てきているということなのですね。
では次に、規制対応にとどまらず、そうした考え方をどのように商品設計や販売に落とし込んでいるのか、消費者への伝え方も含めて教えてください。

古川:ここでは、再びスウェーデンの事例になりますが、非常に象徴的な子ども服ブランドの取り組みをご紹介します。「Polarn O. Pyret(ポーラーン・オ・ピーレット)」は、子ども服を「たくさん生産しないこと」自体を目標に掲げています。子ども服は成長とともにすぐにサイズアウトしてしまうため、一つの服を複数の家庭で使い回すことを前提に、製品設計がなされています。

具体的には、オンラインや実店舗を通じた再流通の仕組みを整備し、いわゆる「お下がり品」を企業自身が査定し、状態に応じて価格を設定したうえで再販売しています。日本では中古品の流通はCtoCが中心で、メーカーが関与しないケースが一般的ですが、このブランドはむしろメーカーが信頼性を担保し、循環を促す仕組みを構築している点が特徴的です。

こうした取り組みは、商品設計や販売の段階でサステナビリティをどう実装するかという点で、大きな示唆を与えてくれます。実際、同社はオンライン販売でも安定した売上を維持しており、「作り過ぎない」という方針を貫きながら、経営面でも成果を上げています。値下げに頼るのではなく、自分たちのポリシーを守り、消費者が安心して取引できる環境を整えることで、ブランドを確立しているのです。

このブランドは比較的高価格帯に位置づけられていますが、サステナブルだからという理由だけで評価されているわけではなく、北欧の寒冷な気候に対応した防寒性や、子どもの動きやすさを考慮した機能性といった製品そのものの価値がしっかりと備わっている点も、支持を集めている理由の一つです。中小企業に近い規模で、こうした取り組みが実現できている点も興味深く、発想の転換さえできれば、むしろ中小企業の方が柔軟に挑戦できる余地があるのではないかと感じました。

寺田:「たくさん作らないこと」そのものを目標に据え、それを支えるブランドづくりや消費者との信頼関係が丁寧に構築されているのですね。サステナビリティ先進企業で知られる、登山用品の「Patagonia(パタゴニア)」のように、パーパス(企業の存在意義)に共感してもらい、「このブランドだから選びたい」と感じてくれるファンが生まれると、単なる物売りを超えて、「地球をより良くしたい」という想いの共有につながっていくのだと思います。

こうした考え方は欧州では比較的浸透している一方、日本ではまだ一般的ではない印象があります。とはいえ、大企業でも中小企業でも、共感を軸にしたブランドづくりの可能性は大いにあると感じています。

■「Polarn O. Pyret(ポーラーン・オ・ピーレット)」の取り組みの詳細はこちら👇

 寺田:海外の食品小売業、例えばスーパーマーケットや専門店などで行われているサステナブルな取り組みについて、注目すべき事例があれば教えてください。

古川:特定の事例が「目立って注目されている」というよりも、現在では多くのスーパーマーケットや専門店で、サステナブルな取り組みが当たり前のように行われています。特に上場企業など、投資家の目にさらされている小売業では、消費者からの要請に加え、投資家からの期待も後押しとなり、積極的に取り組みが進められているケースが多いです。そのため、積極的にアピールはしていなくても、裏側ではかなりしっかり取り組んでいる企業も少なくありません。

2024年秋にインタビュー(@スウェーデン)した企業の一つが、スーパーマーケット「Lidl(リドル)」です。ドイツの流通大手「Schwarz Group(シュヴァルツ・グループ)」に属しており、ディスカウント系のスーパーですが、サステナビリティへの取り組みが非常に進んでいるのが印象的でした。Lidlは、同グループの中で中間層をターゲットにした「Kaufland(カウフランド)」よりもさらに価格帯が低く、いわゆる「ディスカウント」に分類される業態でありながら、明確にサステナブルな方針を打ち出している点は特徴的です。

こうした取り組みは、スウェーデンに限ったものではありません。Lidlは郊外を中心に、欧州各国で店舗を展開しており、食品を中心としつつ、文房具やDIY用品などの非食品も幅広く取り扱っています。そのうえで、調達段階から「特定の素材や条件を満たさないものは仕入れない」といった基準を設けているほか、国ごとに消費者の価値観やニーズに合わせたオリジナルブランドを展開しています。同じグループ内でありながら、各国の市場特性に応じて細かくローカライズしている点は、非常に興味深いです。

また、Lidlに限らず多くの企業で見られるのが、社内に「サステナビリティ担当のスペシャリスト」を配置している点です。その専門家が、調達部門や品質管理部門など各部署と連携しながら、全社的な取り組みとしてサステナビリティを推進する、いわば「調整役」の存在が非常に重要になっています。

寺田:なるほど、サステナビリティの専門人材が企業の全社的なサステナビリティ推進役のカギとなっているのですね。

他に、サステナブルをコンセプトにしたプライベートブランドを展開している企業などはありますか?

古川:明確に「これが代表的な事例です」と言えるものは限られますが、Lidlの取り組みの一部はそれに近いと思います。例えば「マトリケット(Matriket)」というオリジナルブランドがあり、スウェーデンの地産地消を意識した商品展開を行っています。商品の一例として、グリーンピースで緑色のパッケージを使うなど、環境配慮型の商品であることが視覚的にも伝わる工夫がされており、サステナビリティを意識したプライベートブランドの一例といえるでしょう。他の企業でも同様に、独自のブランドで差別化を図るような取り組みが広がっています。

出所:JETRO「容器の環境対応で、買い物客も便利に(スウェーデン)LIDLスウェーデンに聞く

企業は段階的なサステナビリティ推進と積極的な情報開示でコスト上昇に対応

寺田:“価格”と“サステナブル”の両立において、海外企業ではどのような工夫がなされていますか?

古川:非常に難しい問題ですね。まず、企業によってターゲット顧客が異なるため、どの程度まで価格を上げられるかは、それぞれバランスを取りながら判断していると思います。欧州企業の印象としては、「無理に一気にサステナブルに振り切る」というよりも、自社のペースで段階的に取り組み、現実的な目標設定や訴求を重ねているケースが多いです。

例えば、あるドイツ企業の話では、取引先の日本企業にカーボンニュートラルの目標があるかどうかを重視する一方で、達成時期が2050年より早いかどうかまでは強く問わない、ということでした。こうした考え方も背景にあり、欧州では中小企業であってもサステナビリティレポートを作成し、公表している例が比較的多い印象です。多くの取引がまだまだ価格重視だとは思いますが、取り組みを可視化し、「価格は上がるが、それだけの価値がある」と消費者などに理解してもらうことで、価格とのバランスを取ろうという動きもみられます。

また、企業のウェブサイトに「サステナビリティ」のタブを設け、取り組みを継続的に公開するなど、透明性を高めているケースも多く見られます。自社の取り組みを情報公開し、それを価値として積み上げていくことで事業を成り立たせており、こうした情報発信自体が、ブランド価値の向上につながっていると感じます。

寺田:自社のサステナビリティの取り組みについて理解してもらい、商品を選んでもらったり、取引先として協力してもらったりするために、取引先や消費者に対して積極的に情報開示を行うという姿勢は、日本企業ではあまり一般的ではなく、とても興味深いアプローチですね。

グリーンウォッシュへの目は厳しく、「エコ」や「環境に優しい」だけでは疑われる

寺田:グリーンウォッシュに対する海外の消費者の目は、どの程度厳しいのでしょうか?

古川:欧州の消費者はグリーンウォッシュに対して非常に厳しい視線を持っており、「エコ」や「環境に優しい」といった曖昧な表現だけでは信頼を得られません。例えば、国が認証を行っているわけではなく、企業が独自に「環境に配慮している」と謳う場合には、消費者はその真偽を疑う傾向があります。そのため、具体的にどのような素材を使っているのか、製造過程はどうかといった詳細な情報を示すことが重要です。植物由来の素材を使っていることや、バイオベースであることなど、具体的な根拠を明示し、QRコードなどで詳しい情報へアクセスできるようにする仕組みが浸透しています。情報を十分に発信していないと、消費者からは「グリーンウォッシュではないか」と疑われてしまいかねないため、トレーサビリティや透明性を高めることが求められています。

また、商品開発やマーケティングの面でも、環境配慮素材を選定する際に、トレーサビリティが確保できることが重視されていると感じます。

寺田:アメリカなど一部の市場では、「ESG」や「サステナビリティ」という言葉を前面に押し出しすぎると、反発や懐疑的な感情が生まれることもあると聞きます。企業は表現や訴求の仕方には、より慎重になっているのでしょうか?

古川:一部の国では、あえて認証マークを商品表示に付けないケースもあるようです。現地の方に伺うと、NGOやNPOなどから「グリーンウォッシュではないか」と認証の信頼性や実施状況を疑われ、厳密に対応できていないと訴訟を起こされる可能性があるため、リスク回避として表示を控えているのではないか、ということでした。実際に認証マークのない商品もありますが、こうした事情が背景にあるのかもしれません。

しかし、このようなケースは少数派で、多くの国では認証マークを商品に表示しているケースも多く見られます。したがって、すべての国で一律に同じ対応が取られているわけではありません。

寺田:マーケティングやPRの観点では、欧州は多民族社会であることから、広告に起用するモデルやパッケージのイメージなどについても、差別的な表現がないか慎重に検討されているのでしょうか。

古川:例えばスウェーデンでは、約20年前に、アジア系移民を含む多様な人種のバランスに配慮し、広告にアジア系の方を起用するなどの対応が求められていると聞いたことがあります。これが法的な規制かどうかは国によって異なりますが、日本と比べると、多様性に対する意識は全体として非常に高いと言えると思います。

寺田:企業の社外取締役や幹部、管理職といったポジションにおいても、女性や多様な人種・国籍の人材が積極的に登用されているのでしょうか。

古川:欧州では、平等性をより厳格に追求しようとする意識が強く根付いています。ただ一方で、近年はその動きに対して「逆差別ではないか」といった意見もあるようです。例えば、男女比を半々にすること自体が、かえって女性差別につながるのではないかという声や、「自分は純粋に能力で採用されたのか?」と疑問を持つ人もいるようです。

これまで、男女平等を実現するために、女性に配慮した措置が取られることがありましたが、現在では、そうした過度な配慮は避けるべきだという考え方もあるようです。実際には、「男女平等だからこそ特別扱いはしない」という姿勢を重視し、あえてそうした配慮を表に出さないようにしている人もいると聞きます。

このように、社会の意識や価値観が段階的に変化しているため、最初の段階では男女平等を強調したプロモーションが必要であっても、それが社会に定着して当たり前となれば、過度な強調はかえって逆効果になる場合もあります。そのため、ある時点で、こうした措置を徐々に見直し、外していくといったアプローチも必要になってくるのではないかと考えられます。このあたりの状況は国によって異なる面もあるようです。

テクノロジーとインバウンドが牽引する次のサステナブル消費

寺田:今後、海外でサステナブル消費はどのように進化していくとお考えでしょうか。

安田:EUの欧州委員会が提案した規制が必ずしもすべて成立していないなど、足元ではやや後退しているように見える局面もあるかもしれません。ただし、中長期的に見れば、脱炭素の強化という大きな流れ自体が変わることはなく、引き続き進展していくと考えています。規制が後退していると捉えるというよりも、数年前とは異なるフェーズに入っている、と理解するのが適切ではないでしょうか。

古川:テクノロジーの活用についても、今後さらに広がっていき、より効率的な生産や情報管理が可能になっていくと考えています。欧州やアメリカでは情報開示の動きが一層活発化しており、日本でも同様の流れが加速していくのではないかと思います。しかし、それによって、どのような商品が売れるのかはまだ明確ではありません。プラスチックや包装に対する考え方一つを取っても、国ごとにトレンドは異なっており、欧州の動きがそのまま日本に当てはまるとは限らないと思います。むしろ、日本ならではの進化の仕方があるのではないかと考えており、その点は楽しみでもあります。

また、若い世代の消費行動の変化や人口減少に加え、増加しているインバウンド観光客の消費が、日本の国内市場に与える影響も無視できません。例えば、近年は外資系ホテルが日本国内で増えていますが、そうしたホテルでは、従来のペットボトル飲料ではなく、瓶入りの水や紙包装の水が提供されるなど、外国人観光客の環境意識を反映した商品提供が進んでいます。こうした動きは、日本の消費者の選択にも影響を及ぼす可能性があると思います。

さらに、水産業界の関係者からは、国内市場に卸す際にも、このような消費者意識の変化が反映されている話を聞きました。これまであまり指摘されてこなかったことですが、環境意識の高いインバウンド観光客向けを想定して、ASC(養殖水産物認証)やMSC(天然水産物認証)といった国際的な水産認証を取得していないと、日本国内であっても水産物を卸せないというケースも出てきているようです。

このように、インバウンド観光客の増加を背景に、外国人の基準や価値観をベースとした消費行動が、日本の流通にも影響を与え始めています。国内のホテルや小売業者が、こうした環境意識や価値観に共感し、それを踏まえた商品提供を進める動きも広がっています。メーカーやサービス提供者の側でも、こうした考え方に賛同するプレイヤーが増え、小売業者も差別化の観点から積極的に取り組むようになってきているのです。

こうした変化を踏まえると、今後のサステナブル消費の進化を考えるうえで、「インバウンド」は非常に重要なキーワードの一つになると言えるでしょう。

海外でも「食品ロス削減」は注目のテーマ、食べ残し・売れ残り削減や食品ロス削減アプリが普及

寺田:今後、食品分野においてサステナブルが盛り上がっていきそうなトレンドはありますか。

古川:そうですね。例えば、ビーガン市場の盛り上がりなどを背景としたプラントベースミート(代替肉)は、(肉類を使わないことで)牛のゲップによるメタンガス排出の削減にもつながるとも言われています。ただ、国内外の関係者から話を聞いたり、さまざまな情報に触れたりする中で感じているのは、一時期のブームはやや落ち着いてきているということです。アメリカでは、この分野の企業の中には、事業継続が難しくなったり、廃業に追い込まれたりしている企業もあると聞いています。

また、バイオベースの肉の製法次第では、培養や加工に多くの工程を要するため、その過程でCO2排出が増えてしまい、「本当に持続可能なのか?」と疑問を持つ声もあるようです。今後盛り上がりそうな商材のトレンドを先読みするのは難しいですね。

一方で、近年注目が高まっているのが、食べ残しや売れ残りを減らす取り組みです。最近では、レストランやフードチェーンを中心に、こうした活動が少しずつ広がってきていますし、欧州でも同様の動きが見られます。売れ残った商品を廃棄するのではなく、値下げして提供する取り組みもその一つです。例えば、規格外や売れ残りの野菜を紙袋にまとめ、安価で販売することで、廃棄を減らそうとする動きがあります。

こうした取り組みを支える仕組みとして、食品ロス削減を目的としたアプリも登場しています。例えば、デンマーク発の「Too Good To Go(トゥーグッドトゥゴー)」は欧州ではよく知られており、売れ残り商品を消費者が手軽に、そして安く購入できる仕組みとして注目されています。こうしたサービスが日本でもさらに広がっていくと良いと感じています。

また、大手チェーンだけでなく、個人経営の小規模な商店でも、売れ残り商品を安く提供し、食品ロスを極力減らそうという動きが活発化しています。加えて、レストランにおける廃棄ロスの削減も重要なテーマであり、海外では「ロス」そのものに焦点を当てた取り組みへの関心が高まっている印象です。こうした点が、現在の食品分野におけるサステナブルなトレンドとして挙げられるのではないでしょうか。

寺田:ありがとうございます。弊社でも、食品ロス削減を推進する官庁事業に深く関わらせていただいており、今後も日本における食品ロス削減の取り組みの推進に貢献できるよう、より一層努力していきたいと考えています。

古川:ぜひよろしくお願いいたします。

欧州サステナビリティ動向の整理――北欧の位置づけと認証マーク統一をめぐる現状

石川:時系列で振り返ると、欧州では2015年のSDGsを契機に、情報開示やサーキュラーエコノミーへの対応が本格化しました。その後、トランプ政権の影響などもあり一時的に揺り戻しはありましたが、現在は再び動きが活発になっているように感じています。
日本との大きな違いとしては、法規制が非常に厳しいこと、そしてロビイングやNPO・NGOの影響力が強いことが挙げられます。消費者の関心も、プラスチックや包装、輸送といった点において高く、特に所得上位層を中心に強く顕在化している点が特徴的です。

一方で、店頭表示やラベルを通じた消費者とのコミュニケーションに苦慮している点については、日本と共通する部分もあると感じています。ラベルが乱立し、分かりにくくなっている状況は、日本とよく似ており、非常に興味深い点です。

ここで、スウェーデンやデンマークといった北欧諸国の位置づけについてお伺いしたいのですが、日本では北欧をベンチマークすることが多いと思いますが、欧州全体の中で北欧の動きはどのように評価されているのでしょうか。また、北欧特有の課題や問題点があれば教えてください。

古川:北欧については、日本向けの情報発信では先進事例として取り上げやすく、分かりやすいという理由から言及することが多いものの、必ずしも北欧だけが突出しているわけではありません。実際には、フランスも環境法規制の面で非常に先進的で、欧州全体に影響を与えた事例がありますし、ドイツも同様です。北欧だけが特別という見方はしていません。

また、北欧特有の大きな課題があるかというと、コスト面の問題など、どの国にも共通する課題が中心であり、高コストが消費者の購買行動に影響する点も同様です。地域固有の問題として特筆すべきものは、現時点ではあまり見当たらないというのが私の認識です。

石川:業界標準的な認証マークの統一化に関する動きについて、例えば、今回のお話に出てきていた Lidl のプライベートブランドや、フランスでの取り組みなど、認証マーク統一を目指す動きの現状と、それが企業に与える影響についてはどのような状況でしょうか。

古川:認証マークの統一化については、業界主導というよりも、国レベルで進められている取り組みが中心です。フランスでは以前から動きがあり、成功すればEU全体に広がるような大きなインパクトが期待されていましたが、近年はやや停滞している印象があります。ただし、完全に止まっているわけではなく、現在は一時的に中断している段階と理解しています。

例えば「Planet Score(プラネットスコア)」のように、動物福祉、CO2排出量、土壌の健康など、複数の指標を統合したラベルを作ろうとする国主導の取り組みが一部で進んでいます。

企業側の受け止めとしては、業界やメーカーごとに異なる認証マークが乱立しているため、それぞれに対応しなければならず、手間とコストの両面で負担が大きいとの声があります。多様な認証があると対応が煩雑になるため、統一化への期待はあるようです。認証マークが統一されれば、消費者の混乱が減るだけでなく、メーカー側も一貫性のある対応が可能になります。特にEUレベルで統一されれば、一度対応すればEU全域で商品を販売できるため、企業にとっては効率性の面でも大きなメリットがあります。現状では国レベルでの取り組みが一部でみられるにすぎないですが、長期的には、EUレベルで認証の統一化に向かうのではないかと考えています。

安田:石川様からのフィードバックの中で、欧州の動きにトランプ政権の影響があるとのご指摘がありましたが、私の認識では、欧州の見直しの動きは、トランプ政権以前から兆しがあったと思います。背景には、グリーン産業分野での中国メーカーの台頭などによる、欧州内の競争力低下への危機感があります。現在のアメリカの政策姿勢も影響しているとは思いますが、欧州側の動きはそれ以前から始まっていたと理解しています。

また、今回の議論を通じて改めて感じたのは、欧州では国内における所得層の違いや、移民を含む居住者の多様性が非常に大きく、それによってサステナブル消費のあり方も大きく異なっている点です。日本でも所得格差が議論されるようになってきましたが、欧州の多様性はそれ以上に大きい印象があります。近年のスウェーデンでも移民の増加に伴い、所得格差や政治的動向を含め、消費トレンドの分化がより顕著になっていると感じています。

石川:ありがとうございます。大変参考になりました。

まとめ

今回のお話から、特に重要と感じたポイント3つと、日本企業が参考にできるポイントを整理します。

【特に重要と感じたポイント】

①海外でサステナブル消費が進む背景は
「政策・規制」「市民社会」「産業政策」「安全保障」

欧州におけるサステナブル消費の広がりには、企業や消費者の「意識の高さ」だけでなく、環境規制や情報開示義務といった政策・規制の先行的な整備、それを後押しする市民社会やNGOの強い発言力、資源循環を成長産業と捉える産業政策的な狙い、さらには資源確保や外部依存低減といった経済安全保障の観点などの背景が複合的に影響している。そのような社会環境が企業の取り組みを促し、消費者意識を変えることで、サステナブルが社会の「当たり前」となりつつある。

②海外消費者はグリーンウォッシュに厳しく、
輸送方法や包装のサステナビリティを重視

海外、とりわけ欧州の消費者は、「環境に優しい」「エコ」といった曖昧な表現に対して非常に慎重。
商品そのものの中身だけでなく、どのような素材を使っているのか、どのように運ばれてきたのか、包装は過剰ではないかといった点まで重視している。そのため、表面的な訴求にとどまると「グリーンウォッシュ」と受け取られるリスクが高く、具体的な根拠や透明性のある情報開示が不可欠となっている。

③今後注目のキーワードは
「インバウンド」「食品ロス削減」「認証マークの統一」

今後を見据えた重要なキーワードとしては、インバウンドの増加、食品ロス削減、そして認証マークの統一化が挙げられる。
インバウンドや外国人居住者の増加により、海外の価値観が日本の消費市場や流通にも影響を与え始めている。また、食品分野では新奇な代替食品よりも、食べ残し削減や売れ残り対策といった実践的な取り組みへの関心が高まっている。
さらに、認証マークの乱立は企業・消費者双方にとって負担となっており、将来的には統一化への動きが進む可能性が高いと考えられる。

【日本企業が参考にできるポイント】

  • インバウンドや海外からの移住者の価値観を意識したサステナブル対応
    外国人観光客や日本への移住者の基準を踏まえた商品設計・提供は、国内市場においても新たな付加価値となり得る。

  • 欧州で事業を行う、あるいは進出を検討する企業にとってサステナビリティ関連規制への対応は必須
    情報開示や環境配慮は前提条件であり、特にプラスチックやサーキュラーエコノミー関連の法制度、輸送方法や包装における環境配慮、グリーンウォッシュと受け取られない対応が求められる。

  • 全社的なサステナビリティ推進体制の構築
    サステナブルを全社の方針として明確に掲げ、サステナビリティの専門人材が全社的に取り組み推進をリードする体制づくり。

  • サステナブル・循環モデルとブランド価値の両立
    「作り過ぎない」「長く使う」といった考え方を、商品開発段階から組み込み、環境配慮と品質・機能性を同時に高めることで、戦略的にブランドの信頼や競争力につなげる。

 

企業の取り組みに関して特に印象的だったのは、中小企業であってもサステナビリティを全社方針として掲げ、それをブランド価値の一部として組み込んでいる海外事例です。自社の取り組みを積極的に情報開示し、「価格は上がるが、それだけの価値がある」ということを納得してもらうという姿勢は、日本企業にとっても参考になるのではないでしょうか。サステナブルPBの可能性を広げていくうえでも、商品価値(品質・機能・おいしさ等)を土台に、透明性のある情報開示と、生活者が納得できる選択の導線をどう整えるかが、今後の鍵になりそうです。

また、インバウンド観光客の増加を背景に、サステナブルな消費スタイルに対応した商品・サービスの提供は、今後ますます現実的な課題となっていくでしょう。現在は外資系ホテルを中心に取り組みが進んでいますが、スーパーやドラッグストアにおいても、環境配慮商品や認証商品の取り扱い、過剰包装の軽減や量り売りといった工夫が、来店動機や選ばれる理由につながる可能性があります。

一方で、日本の消費者に目を向けると、包装や輸送方法といった点を含め、商品そのものだけでなく、生産から流通までの過程でどれだけの資源やエネルギーが使われ、どのような環境負荷が生じているのかまで意識している人は、まだ多いとは言えないと感じました。こうした視点を持つ人が、今後さらに増えていくことが重要だと考えています。そのための施策については、私自身も考えていきたいと思っており、とりわけ消費者と日常的に接点を持つ小売店において、具体的な取り組みができると良いのではないかと考えています。

古川さん、安田さん、ありがとうございました!

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