【サステナブルPB特集!】<海外編>JETROに聞く、海外サステナブル消費の最前線(前編)
ここまで3つのブランドをご紹介してきた「サステナブルPB※特集」ですが、今回は番外編として、視点を海外に広げます。
海外ではサステナブル消費はどのように広がり、消費者は何を重視して商品を選んでいるのでしょうか。
そこで今回は、海外のサステナブル動向に詳しいJETRO(日本貿易振興機構)のご担当者様にお話をうかがい、欧州を中心としたサステナブル消費の最新動向や、その背景にある政策・企業の取り組み、さらには日本との消費者意識の違いについて整理しました。
サステナブル先進地域とされる欧州を起点に、グローバルな視点から「なぜ今、サステナブル消費が広がっているのか」を俯瞰できる内容となっています。
「欧州ではなぜ、ここまでサステナブル消費が広がったのか?」
その背景や日本との相違点・共通点をひもときながら、日本企業にとってのヒントを探ります。
公益財団法人流通経済研究所
研究員 寺田 奈津美
※本稿では、環境負荷をできるだけ抑えた環境配慮型商品、サプライチェーン上の人権やフェアトレード、アニマルウェルフェアに配慮したエシカル商品、さらには社会課題の解決を目指すソーシャルグッド商品などを総称して「サステナブル商品」とし、こうした商品を開発・展開するプライベートブランドを「サステナブルPB」としています。
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海外でサステナブル消費が進む最大の背景は「政策と規制」

日本貿易振興機構(ジェトロ)
海外ビジネスサポートセンター サステナブルビジネス課長 古川 祐さん(写真左)、
調査部欧州課長(当時)安田 啓さん(写真右)
※なお、今回の取材では、JETROが2023年に実施した海外消費者へのヒアリング調査(「特集 現地消費者のサステナブル消費の実情」)の内容を踏まえ、お話をうかがいました。
――まず、海外ではサステナブルな消費が日本よりも広がっているという印象がありますが、その背景にはどのような要因があるのでしょうか?
古川(以下、敬称略):やはり政策が大きな要素の一つだと考えております。特にEU(欧州連合)をはじめとする欧州では政策面での取り組みが進んでおり、世界全体を見ても、欧州では具体的な規制が導入され、それが文化として社会に浸透していることが、サステナブルな消費が広がっている背景にあると感じています。その結果、企業はそうした政策に対応する必要に迫られ、消費者側もそれを理解した上で行動する人が増えている状況にあります。
政策によって消費者が必ずしもサステナブルな商品を積極的に買うようになるかどうかはわかりませんが、少なくとも外的な環境整備が進んでいる部分は確かにあると感じています。
そのほかの要因としては、教育や文化的背景、環境問題を身近なものとして捉えていることも挙げられるでしょう。例えば東南アジアでは、ウミガメにストローが刺さっている写真が広まったり、海に面した国が多いASEAN諸国では、若者を中心に、海岸に流れ着くプラスチックごみを日常的に目にする機会が多いなど、環境問題を具体的な形で認識しており、「このままではいけない」という危機感が強く持たれているように感じます。特にアジアの新興国を中心に、環境に対する意識は確実に高まっているのではないでしょうか。
一方で、その意識がどの程度購買行動に反映されているかについては、国や地域ごとの所得水準などの影響も大きいと考えられます。
さらに、海面上昇の問題などは島国にとって喫緊の課題であり、こうした地球規模での気候変動の影響も、サステナビリティへの関心を高める一因になっているのではないかと思います。
サーキュラーエコノミーを動かす4つの要因:環境問題・市民社会・産業政策・安全保障
安田:サステナブル消費というよりも、もう少し広い枠組みであるサーキュラーエコノミー(循環型経済)の政策が広がってきた背景について、いくつかの要因を異なる角度から説明したいと思います。
最も大きな要因の一つは、規制の拡大です。その背景には、大きく分けて四つの要素があると考えています。すなわち、環境的な要請、市民社会からの要請、産業政策的な観点、そして近年特に重要性が高まっている安全保障や資源確保の観点です。
まず環境的な背景としては、プラスチックごみの増加や、資源を再利用する必要性に対する認識が高まってきたことが挙げられます。例えば2015年には、欧州で初めて「サーキュラーエコノミー・アクションプラン」が策定され、その代表的な取り組みとして、プラスチック規制が先行して進められました。
こうした動きを強く後押ししたのが、市民社会からの要請です。これには大きく二つの側面があると考えられます。一つは、欧州議会の役割です。欧州議会は市民の代表として大きな影響力を持っており、法制化に向けて強いプレッシャーをかけています。もう一つは、リサイクル関連団体の存在です。これらの団体によるロビー活動は非常に活発で、特に2019年から2024年の欧州委員会においては、グリーン勢力の影響力が強まり、リサイクル業界の声が政策に反映されているとの指摘もあります。
三つ目の要因としては、産業政策的な要請が挙げられます。EUとしては、資源循環を企業のビジネスの成長につなげたいという考えがあり、特にリサイクルの川下産業を強化することで、環境分野を持続可能なビジネスとして成立させたいという狙いがあったのではないかと思います。
さらに四つ目として、安全保障の観点も重要です。近年では、希少資源や金属資源の確保が強く意識されるようになっており、こうした資源を安定的に確保する必要性が高まっていると考えられます。
サステナブル消費はサーキュラーエコノミーの一部に位置づけられますが、こうした政策的な背景を受けて、消費活動の段階にまでサーキュラーエコノミーの考え方が徐々に浸透してきているのではないでしょうか。
付け加えると、やはり所得の影響も大きく、欧州においても所得水準に応じてサステナブル商品への関心や感度は異なってくると考えられます。
また、近年の欧州では、政治的な文脈でいわゆる「反EU」「反グリーン政策」ともいえる動きが見られ、一部ではEUの政策に対する反発が強まっているのも事実です。こうしたグリーン政策に対してネガティブな声が高まっている点も、併せて認識しておく必要があるでしょう。
一方で、こうした反発がある中でも、資源や経済の安定を確保するという現実的な課題は避けて通ることができません。従来、希少資源や重要な金属の多くは海外、特に中国やロシアからの輸入に依存してきました。しかし近年、ロシアによるウクライナ侵攻に代表される地政学的な変動を契機に、EUでは外部依存を減らし、経済の自律性を高める必要性が一段と強まっています。そのため、サーキュラーエコノミーの考え方を取り入れ、域内で資源を循環させ、二次資源の利用を促進することで、外部からの資源依存を軽減し、持続可能で安定的な資源確保の仕組みを構築しようとしています。これは、いわば「経済安全保障」の観点からの重要な取り組みといえるでしょう。
寺田:これまで外部から輸入していた資源を、サーキュラーエコノミーによって域内で循環させ、調達できる仕組みを整えようとしている、という理解でよいでしょうか。
古川:おっしゃる通りです。ちなみに、日本もまさに同じ方向に進みつつあります。
コロナ禍では経済活動が分断され、物資が滞ることで、生産ができず、需要があるにもかかわらず供給が追いつかない状況が生じました。その結果、物価が上昇し、生活コストが高まるインフレが発生しました。米中摩擦やロシアのウクライナ侵攻といった地政学的要因もありますが、こうした経験を通じて、供給の途絶を防ぎ、物資を安定的に供給できる体制を構築することが、国民生活の安定につながるという認識が広がっています。現在は、リサイクルなどの取り組みと組み合わせながら、こうした施策が進められています。特に欧州では、産業政策とサーキュラーエコノミーの取り組みが強く結びついている点が特徴的です。
寺田:なるほど。つまり、サステナブル消費が比較的進んできた背景には、政策や規制が先行して整備され、それを受けて企業が商品やサービスを提供し、市民からの要請も高まっていったという流れがあるのですね。利用する人、購入する人がいて、そうした循環の中で広がっていった、ということがよく分かりました。
一方で、日本ではサステナブル消費がなかなか広がりにくいのは、どうしてなのでしょうか。
古川:いくつか調査は行っていますが、日本全体を網羅的に分析したわけではありませんので、あくまで私個人の意見ですが、制度や政策、規制のあり方は、やはり大きな違いの一つだと感じています。欧州では、ロビー活動や市民の声が政策に反映されやすく、その点が日本との大きな差になっているのではないかと思います。
また、欧州では「やらなければならない」という切迫感が政策に強く表れており、そうした問題意識の差も影響していると思います。
さらに、価値観や考え方の違いもあるかもしれません。例えば日本では、衛生面や安全面を非常に重視し、「きれいにすること」が美徳として根強く意識されています。そのため、プラスチック製品の包装についても、一つ一つを小分けにするスタイルが好まれる傾向があります。
実際、日本では個包装した商品をさらに大袋にまとめて販売するケースが多く見られますが、欧州では小分け包装は比較的少ない印象です。例えば、日本の子ども向け菓子(グミ、クッキー、チョコなど)は小袋に分かれて販売されていることが多い一方、欧州では小袋入りの商品よりも、プラスチックなどの容器にまとめて入っているものの方が多い印象です。こうした違いは、衛生や安全をどこまで重視するかによって、使用されるプラスチック量にも影響していると考えられます。
また、日本ではプラスチック製品に対する信頼感も比較的強いと感じます。軽くて丈夫で、菌が入りにくいといった機能面が評価されており、そうした点も背景にあるのでしょう。「プラスチックを使うこと自体が悪い」という考え方ではありません。日本では、生分解性プラスチックやバイオプラスチックといった、環境負荷を低減する素材の活用が進んでいます。
一方、欧州では、そもそもプラスチックを使わずに済むのであれば、使わない方向にシフトしようという考え方が比較的強いように感じます。こうした発想の違いが、何を重視するかという価値観の差となって表れ、消費行動にも影響しているのではないでしょうか。
これに対して日本では、プラスチックの使用そのものを否定するというよりも、素材や使い方を工夫することで環境負荷を下げようとする「プラスチックのグリーン化」が着実に進んでいます。その意味では、日本においてもサステナブル消費が広がっている側面があると言えるでしょう。
ただし、具体的な消費行動のあり方を見ると、欧州とはやはり違いがあると感じます。価格に対する感度そのものは大きく変わらないものの、欧州では無駄な購入を避け、必要なものを長く使うといった意識が比較的強いように思われます。もちろん、資金的に余裕のある層を中心に、価格が高くてもサステナブルな商品を選択する消費者が一定数存在しているのも事実です。
安田:欧州はサステナビリティの取り組みが進んでいると言われることが多いのですが、実際には「見え方」や「見せ方」の影響も大きいと感じています。確かに制度や政策面では先行している部分がありますが、進んでいるとされる国であっても、必ずしもすべてがうまく機能しているわけではなく、課題を抱えている側面も少なくありません。
その一方で、ポテンシャルという観点で見ると、日本は決して低い位置にあるとは思っていません。所得水準や教育水準といった条件を踏まえれば、状況次第では日本のほうが一気に進展する可能性も十分にあると感じています。そうした意味で、欧州が「進んでいる国」、日本が「遅れている国」と単純に捉えるのではなく、日本にも今後サステナビリティが大きく進んでいく余地がある、という見方をしています。
海外の消費者がサステナブル商品を選択する方法・基準
寺田:海外の消費者は、どのような視点で商品やサービスをサステナブルだと捉え、選択しているのでしょうか。環境や人権への配慮といった重視するポイントの違いや、パッケージ表示や認証ラベルなどの可視化の仕組みについてもお聞かせください。
古川:現地調査を通じて感じたのは、判断基準は商品や人によって本当にさまざまで、どこに重きを置くかは大きく異なるということです。調査は欧州だけでなく、アメリカ、アジアなど、日本の商品が多く販売されている地域を中心に行いました。世代も20代から60代まで、家族構成も単身者、核家族、夫婦のみなど幅広くヒアリングしましたが、意見は非常に多様でした。
ただし、共通して見られた傾向として、欧州の消費者は労働環境や流通のあり方などにも関心が高く、日本よりも広い視点でサステナブルを捉えている印象があります。例えばオンラインショッピングについても、環境負荷が高いと感じている人がおり、包装用使い捨て段ボールや緩衝材の多さ、同時に注文した商品がメーカーごとに別々に発送される点などに疑問を持つ声が聞かれました。そうした理由から、「だから自分はオンラインショップで買わない」と判断する人も実際にいます。
他の方では、商品を近くの店舗に届けてもらい、そこまで自分が取りに行くことで、できるだけ自宅配送を避け、配達回数を減らそうとする人もいました。再配達が増えれば、その分配達員の移動が増え、排ガスやCO2の排出量も増えてしまうため、配送のあり方まで含めて環境負荷を意識しながら買い物をしているのです。
一方で、台湾などでは日本と似た感覚を持つ消費者も多く、共働き世帯を中心に時間効率を重視し、なるべくすべてを自宅まで届けてもらうという選択をする人もいます。つまり、生活スタイルや重視するポイントによって、サステナブルと感じる基準や買い方は大きく異なるということだと思います。
次に、パッケージ表示や認証ラベルについてですが、欧州では日本に比べて認証ラベルの種類が非常に多いのが特徴です。ただし、その数の多さが、かえって消費者の混乱を招いている面もあります。認証マークの中には、各国で正式に認められたものだけでなく、メーカー独自のものや、特定の団体が作ったものもあり、「どのマークが何を示しているのか」が分かりにくいのです。例えばドイツの有機食品認証だけでも、6種類ほどあると認識しています。
そのため、商品に複数の認証マークが貼られていても、消費者は一応目を通すものの、それが購入の決定打になるケースはあまり多くありません。欧州では認証ラベルをEUレベルで統一しようとする動きもありますが、現時点では、表示が乱立しており、それが逆効果になっている側面もあるようです。
一方、台湾では認証マークがあることで安心感を持つ消費者も多く、認証の効果は市場の成熟度や、消費者がその意味をどれだけ理解しているかによって変わると感じています。
安田:私もその点には同意します。EUでは、環境ラベルの多様化が消費者の混乱や誤解を招く可能性が指摘されており、グリーンウォッシング防止の観点から、環境ラベルを厳格化する動きも進んでいます。食品の健康表示スコアや家電のエネルギー消費スコアなど、さまざまな表示基準が併存している状況です。
また、欧州でも所得層による違いは大きく見られます。例えば、環境意識の高い高所得層を主なターゲットとしたサステナブル商品専門の「ビオ(Bio)ショップ」(オーガニック店)があり、そうした店舗の利用者は消費意識も非常に高い。一方で、一般的なスーパーやディスカウントストアには幅広い層が集まり、消費行動の階層化が見られます。この点は、日本のように全体が比較的均質に大衆化している市場とは少し異なるかもしれません。
寺田:ありがとうございます。欧州の消費者は、認証マークが付いているから買うというよりも、自分の消費行動そのものを振り返り、「これは環境的に良くないかもしれない」と考えて行動を変える傾向があるように感じます。認証マークの乱立による混乱は日本でも同じ状況が見られますね。
古川:また、最近では、認証マークに加えてQRコードを活用し、より詳しい情報を提供する企業が増えています。商品パッケージにQRコードを印刷し、「私たちのサステナビリティの取り組みはこちらをご覧ください」と案内する形です。ラベルだけでは伝えられる情報に限りがあるため、詳細はQRコードを通じてスマートフォンなどで確認してもらうというスタイルが、一般的になりつつあります。
実際、店頭でその場でスマートフォンを使って情報を確認し、「内容に納得したから購入する」というケースも増えていますし、事前に自宅で調べたうえで、店頭で該当商品を探して購入するというパターンも見られます。
安田:ちなみに、EUでは「エコデザイン規則」という制度があります。ただし、食品はこの規則の対象外となっており、現時点では義務的な対応は求められていません。主に対象となるのは衣類や家庭用品などで、今後は製品ごとに、カーボンフットプリントや製造工程に関する情報をQRコードなどで表示することが、段階的に義務化される予定です。
寺田:そうなのですね。次に、買い物をする場所に関して、日本にもサステナブル商品を扱う店舗はありますが、欧州では特に高所得層向けのビオショップなど、サステナブル商品を取り扱う店舗が多いのでしょうか。
古川:欧州は日本よりも社会階層の幅が広く、外資系企業で働くエリート層から中間層、十分に就労できていない移民の方まで、非常に多様です。そのため、消費行動も階層ごとに分かれており、高い商品を買いたい人は特定の店舗に行く、といった傾向があります。全国どこでも同じチェーン店がある日本とは、その点が大きく異なります。
そうした中で、サステナブル関連の商品を多く扱う店舗も確かに存在します。例えば、百貨店のような高級な場所で、都心の一等地に店舗を構え、サステナブルをうたった商品を扱っているケースもあります。
一方で、欧州では量り売りの店が街中に数多く存在している点も特徴的です。日本で言えば、昔ながらの豆腐屋や米屋のような存在で、乾物やパスタ、米、石鹸、シャンプーなどを必要な分だけ購入できます。その日の分だけ買ったり、少量を試したりできるため、若い人を中心に気軽に利用されています。エコバッグや容器を持参する人も多く、必ずしも高所得層に限らず、比較的幅広い層に広がっている印象です。
若い世代ほど意識は高いが、購買力に限界、「こだわり要素」だけ実践
寺田:サステナブル商品に積極的な国や地域の中でも、消費傾向に違いはあるのでしょうか。世代間の差や関心分野の違いなど、特徴があれば教えてください。
古川:多くの国で、若い世代の意識が高いという点は共通していると感じます。もはや特別なことではなく、教育の段階でSDGsなどを学び、そうした価値観が日常生活や行動に自然に表れている若者が増えています。
ただし、意識は高くても、現時点では高価なサステナブル商品を購入できるほどの経済的余裕がない人が多いのも事実です。そのため、若い世代が現時点でのサステナブル消費における主要な購買層になっているとは言い難い状況です。ただ、将来、将来的に所得が上がれば、購買行動に結びつく可能性は十分にあります。私たちも、その層に日本の商品を認知してもらい、将来的に選んでもらえるような活動を行っています。
また、コロナ禍をきっかけに、生活や意識が変化した人もいました。例えば、スペイン人の女性で、コロナ前は毎日のように外出し、パーティーを楽しんでいた方が、外出制限によって自宅で過ごす時間が増え、価値観や消費行動が変わったという話がありました。収入は減ったものの、自分を大切にするために、多少高くてもサステナブルな商品を選ぶようになったそうです。
ただし、すべての買い物でサステナブルを徹底しているわけではなく、自分がこだわる部分だけは新品を選ぶなど、個人のポリシーが強く影響している点も印象的でした。例えば、衣類は中古品を選ぶ一方で、靴は必ず新品を買うといったように、価値観や優先順位に応じて選択しているケースが多く見られます。所得に余裕が出てくれば、そうした「こだわりの部分」でのサステナブル消費は、さらに進んでいくのではないかと思います。
また、地域や世代による大きな違いはあまり感じませんが、情報収集の方法には差があります。現地消費者にヒアリングした結果からは、欧州では、家族や仲間など身近な人からの口コミや、対面でのコミュニケーションを重視する傾向がみられました。一方、台湾では雑誌やウェブサイトなど、メディアを通じた情報収集が多かったです。こうした違いには、文化や生活スタイルの差が反映されているように思います。ただし、消費行動そのものは個人差が大きく、国ごとに明確な違いがあるとは感じていません。
寺田:なるほど。では、日本と比べて、特に異なると感じる点はどこでしょうか。
古川:大きな違いはありませんが、強いて挙げるとすれば、プラスチックに対する考え方や、過剰包装に対する嫌悪感の強さだと思います。日本では衛生面などを理由に、過剰包装がある程度受け入れられていますが、台湾や欧州では過剰包装に対して批判的な声が比較的多く、日本のイメージとして「過剰包装」が挙げられることも少なくありません。これは「きれい」「丁寧」といった評価の裏返しでもありますが、日本と海外の大きな違いの一つだと感じます。
寺田:プラスチックの使い方や包装に対する感覚は、日本と海外で大きく異なりますね。日本人が海外に行くと、カルチャーショックを受ける場合も少なくないだろうと感じました。
生活領域で進むサステナブル消費:衣類・日用品中心に、包装・輸送への関心が強い
寺田:では、これまでのお話は食品が中心でしたが、海外の消費者がサステナブルを意識する際に、特に重視しているポイントや、実際によく売れている商品カテゴリーがあれば教えてください。
古川:調査を通じて特に強く感じたのは、衣服をはじめとした日用品分野でのサステナブル消費の広がりです。どの国でも、その傾向は比較的共通して見られました。例えば、竹製の歯ブラシや糸ようじを選ぶ人もいます。日本ではプラスチック製の糸ようじが一般的ですが、「毎日プラスチックを捨てていると思うと罪悪感がある」という理由で、竹製を選ぶ方もいました。現地のドラッグストアでも、品数は多くないものの、そうした商品が並ぶコーナーが確実に存在しており、日本との違いを感じました。
一方、食品については、個人の趣味嗜好が非常に強く影響している印象です。幼い頃から親しんできた味覚はなかなか変えられず、「サステナブルではないかもしれないが、昔から食べていておいしいから」という理由で選び続ける人も多く見られました。現地のスーパーでのインタビューでも、そうした声をよく耳にしました。食品分野では、「サステナブルだから選ぶ」というよりも、「慣れ親しんだ味だから選ぶ」という傾向が強いように思います。特に欧州では味覚に保守的な人も多く、日本のように新しい商品を積極的に試す消費行動とはやや異なる印象を受けました。
そうした保守的な味覚を持つ方々は、新しいものに飛びつかない傾向もあるように感じました。サステナブルであっても、それによって味が変わってしまうのであれば、無理に選ばないという方もいます。一方で、商品そのものではなく、容器や輸送手段といった周辺の要素については、意識して選ぶ方もいらっしゃいます。
例えば、スウェーデンで話を聞いた方は、マスタードを購入する際、瓶入りとプラスチック容器入りの二択であれば、あえてプラスチック容器を選ぶと話していました。理由を聞くと、「瓶は重く、輸送時にCO2排出量が増えるから、軽いプラスチックの方が環境負荷が低い」という考えでした。ただし、その方は「一般的なプラスチックではなく、瓶のように見える高級感のあるプラスチック」であることも重視していました。実際、そのような商品が現地の店舗に並んでおり、容器の材質や印象にまでこだわって選んでいる方がいることに驚きました。
また、別の方からは「スーパーでは野菜を一切買わない」という話も聞きました。理由は、野菜がプラスチックで包装されていることへの強い抵抗感です。日本では、きゅうりなどをそのまま陳列している場合もありますが、現地では野菜が真空パックに入れられて販売されていることもあり、「あのようにパックされた野菜は気持ち悪くて買えない」と強く否定する声もありました。そのため、その方は地元の産直市や八百屋などで、包装のない新鮮な野菜を購入しているそうです。
このように、商品の「中身」そのものよりも、容器や流通の方法といった「周辺環境」に目を向けて購入を判断する人も少なくありません。もちろん、商品そのものの生産工程でCO2排出量が多いかどうかを重視する人も多く、そこも重要な選択基準の一つになっています。
そうした意味では、日本の食品も、例えば日本酒や魚など、もともと商品としての魅力が高いものに、サステナブルな生産工程や包装を組み合わせることで、海外市場において、より高い付加価値を持って受け入れられる可能性があると感じています。
寺田:食べ物に関しては、味や好みといった「趣味嗜好」が強く影響する一方で、包装などの周辺要素にこそ、サステナブル意識が表れやすいということですね。
古川:そうですね。CO2排出という観点では、特に輸送のあり方に注目が集まりやすい傾向があると思います。(前編終わり)
⭐後編では、欧州企業の規制対応の実情や、価格と両立させるサステナブルブランドの実践例、認証制度の動向などを取り上げます。
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