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【vol.12】テーマ「私のこだわり」/苔latteさん

こんにちは。DelaM's (デラムス)編集部です。

苔テラリウム専門誌【DelaM's】のnoteに辿り着いていただき、誠にありがとうございます。

このnoteは苔テラリウムを愛する者たちが、「苔テラリウムを日本の文化にしたい!」という思いのもと執筆したコラムを毎週日曜日に配信する苔テラリウム専門誌です。

今回は「私のこだわり」をテーマにしたコラムをお届けいたします。
苔latteさんのコラムをお楽しみください。


─── 今週の執筆者 ───
苔latte(コケラッテ)さんは、新潟県新潟市を拠点に活動する苔テラリウム作家。
地域イベントやSNSを通じて、幻想的な苔の世界観を発信しています。
写真撮影にもこだわり、苔テラリウムを最も美しく魅せる表現を追求中。


苔latteさんの記事

「何もしない」が教えてくれた、苔テラリウムのなかの自然な姿

自然の姿を再現することがこだわり

「苔テラリウム作家としてのこだわりは?」
と聞かれると、私はいつも少しだけ言葉に詰まってしまいます。

世の中の素晴らしいクリエイターの方々のように
「絶対にこの素材しか使わない」とか
「独自の美学を徹底的に貫く」といった
強いこだわりが自分にはそれほど無いように思えるからです。

けれど、作品を前にピンセットを握る時、どうしても頑なに守っていることが一つだけあります。
それは、「なるべく自然の姿に近い情景を再現すること」。

人工的な美しさを作るのではなく、山や森の中で苔たちが静かにしかも力強く生きているその瞬間をガラス容器の中にそのままそっと移し替えるような感覚。

これだけは、私が作品を作る上でどうしても譲れない大切なルールです。

課題はいつでも、「自生している姿」をどう表現するか

ホウオウゴケを使った苔テラリウム

苔テラリウムを作るとき、私の前に立ちはだかる最大の課題は「自生している苔の生え方を、どれだけリアルに表現できるか」という点にあります。

苔は、ただ土の上に緑の絨毯を敷き詰めたように生えているわけではありません。

光を求めて背を伸ばすもの、湿り気のある岩肌にしがみつくように広がるもの、影を好んでひっそりと佇むもの。
種類によって、その「生きる姿勢」は驚くほど多様です。

例えば、私の大好きな苔の一つに「ホウオウゴケ」があります。

鳳凰の羽を思わせる美しい葉並びが特徴ですが、彼らの本来の自生スタイルは「下方向」を向いています。

渓流沿いの岩陰などで水が滴る方へと向かって、うなだれるように、あるいは流れに沿うようにして自生しています。

この下向きに生える姿こそがホウオウゴケが最も美しく、そして自然に見える状態です。

しかし、これをガラス容器の中で再現しようとすると、途端に難易度が跳ね上がります。

狭い容器のなかピンセットを使って一本一本の細い苔を下方向に向けて隙間なく植えていく作業。

これはまさに至難の業で、技術的にも時間的にも、非常に骨の折れるプロセスです。

賛否両論の貼りゴケ法を選ぶ理由

下向きに生え揃うホウオウゴケ

ここで、一つの選択肢が生まれます。
ピンセットで一本ずつ植え込んでいくのがクリエイターの王道だとするならば、私がときにとる手法は、少し異端かもしれません。

それは、生産者さんや採取地から送られてきたコロニー(塊)のホウオウゴケをそのままの形で「貼りゴケ法」を使ってペタッと土壌に活着させるという方法です。

貼りゴケ法とは、苔を一本ずつバラさずに群落の塊のまま土や岩の表面に貼り付けるようにして定着させる技術です。
実はこの手法、テラリウムクリエイターの間では少なからず賛否が分かれる方法でもあります。

一本ずつ丁寧に植栽してこそ、緻密で美しいテラリウムが完成する。
塊のまま貼るのは手抜きに見えるのではないかという意見があるのも事実です。

確かに、一本ずつ植えた作品は整然とした人工的な美しさや緻密なコントロールが生み出す洗練された魅力があります。

しかし、私はこう思うのです。
自然界のホウオウゴケは、誰かに一本ずつ植えられたわけではないと。

彼らは、あの塊のまま、お互いに支え合い絡み合いながら、何年もかけてあの下向きの情景を作り上げてきたはずです。

それなら、送られてきたコロニーの姿を崩さずに、そのままの形でガラスの中に迎えてあげることこそが自然の姿に近い情景を再現するという意味において最も優しく、そして最善の手法なのではないか。

そう気づいてから、私は迷いなくこの方法を選ぶようになりました。


こだわらないという、私のこだわり

ガラスの向こうの大自然

一本ずつ綺麗に植えられた苔テラリウムは確かに人間の目から見て美しいものです。

でも、私が作りたいのは人間が作り込んだミニチュアではなくガラスの向こうに広がる小さな大自然です。

あえて人間の手を加えすぎず苔たちが本来持っている生えようとする力や元々のカタチをリスペクトすること。

強いこだわりを持たない、と言いながらも、この自然へのリスペクトだけは、私の作品の根底に静かに流れ続けています。

ピンセットでコントロールしきれない自然のゆらぎを、そのまま受け入れること。

それこそが、私のたどり着いた小さくて大きなこだわりなのかもしれません。


─── About DelaM's ───
苔テラリウム専門誌 DelaM's(デラムス)
2026年4月創刊。
苔テラリウムを専門に扱う情報誌。
日本全国の苔テラリウムに関わる方達の記事を編集し掲載。
毎週日曜日発刊。


苔latteさんの前回の記事はこちら💁

前回のDelaM’s記事はこちら💁

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