【第十章】まもるとこわす 家づくり|大手家づくり企業と戦う300日の記録|見えない許可と隠された嘘
相変わらず長い投稿になってしまう記録ですが、今章ではハウスメーカーが安心・安全だと謳う「建築確認申請」について分析していきたいと思います。これまでに私たち家族に起きたトラブルを発端からお読みになりたい方は下記の『序章』からぜひ。
この連載では、隣の建て替え工事に伴うトラブルに巻き込まれている夫と私が、編集やデザインの視点に加え、生成AIを「分析ツール」として駆使し、問題に立ち向かうプロセスを公開します。
相手は大手ハウスメーカー。立場は弱い「隣人」。それでも理不尽な力から愛する家族を「まもる」ために、具体的に何をしたのか?
まだ解決していないからこそ書ける、綺麗事ではない思考と行動のプロセスをすべて公開します。
住宅トラブルに悩む方、これから家を建てる方へ。泣き寝入りせず家を守るための「実践的なノウハウ」になれば幸いです。
土地の安全性は何をもって証明されるのか
それでは、「この土地は家を建てるのに安全で適していますよ」というお墨付きはどのように審査されるのでしょうか。
家を建てるためには、なんとなく安全だと思うから大丈夫といった憶測ではく、全てが行政(または指定確認検査機関)のチェックを通過する必要があります。それが「建築確認申請」です。

STEP 1: 建築確認申請(着工前)
「こういう図面で、こういう計算で建てます。法律守ってますよね?」という書類上のチェック。とはいえ、原則として、現地を見に行く義務はありません。 提出された書類(図面)に嘘がなければ「合格(確認済証の発行)」となります。STEP 2: 工事着手
確認済証をもらって初めて、工事(基礎工事など)に入れます。STEP 3: 中間検査・完了検査(工事中・後)
「図面通りに出来上がりましたか?」というチェック。
この審査の流れには、絶対的な前提条件があります。
まず、家を建てる図面を作成した設計士が、地盤の状態を把握し、その状態に合わせて適切な処置を施しているということ。今回の私たちの案件のように、一度沈下が起きた場合、将来的なリスクに対して目を向けず適切な措置もしていない場合はどうでしょうか?
なぜ確認検査済みが発行されたのか?
私はタマホーム厚木支店が「行政のお墨付きがある」と自信を持つ根拠となる、「建築確認申請済」を出した審査機関(KBI)へ直接電話し、下記の問い合わせをしました。
「審査機関は、この現場の地盤に穴が開き、空洞化のリスクがあることを知って許可を出したのですか?」
電話口に出た担当者の回答は、私の予想を遥かに超えるものでした。
私: 「11月25日に認可がおりた確認申請について、地盤調査などの調査データ報告に基づいて検査済証を発行したという認識でよろしいですか?」
担当者: 「ここの段階では全て添付していない可能性はあります。最後の完了検査までに提出はあると思いますが」
私: 「では、工事中に地盤沈下があったことはご存知ですか?」
担当者: 「いえ、存じ上げていません。」
私: 「境界線付近で沈下が起きている隣地に対しては審査対象になりますか?」
担当者: 「あくまでも我々は申請いただいた敷地内のみを検査対象としています。」
私: 「境界線付近で沈下が起きている報告書を受け取っていただくことはできますか?」
担当者: 「申請者および代理者(この場合はハウスメーカー)以外の書類は受け付けておりません」
私: 「では、申請を代理した建築士が、現場の地盤の安全性を確認しているという前提条件のもとに審査が行われているということですか」
担当者: 「はい。それが前提条件になります」
私: 「それでは工事が原因で災害が起きても問題はないのですか?」
担当者: 「問題がないというか、報告をいただく機会がないので、我々は管理できないんですよね」
建築確認とは「現場を見ないハンコ押し」なのか
施主や近隣住民は、「行政の許可が降りた=この土地は安全だ」と信じます。
実際、隣家の施主に我が家の地盤の安全性の懸念点を伝えても、「行政のチェックや確認を経て進めているから安心して」という返事をいただいていました。
しかし実際は、審査機関の電話記録によれば「書類上のつじつまが合っていれば、たとえその足元に空洞があったとしても許可は降りる」のです。

そもそも「建築確認申請」とは「違法建築物を未然に防ぐため、着工前に設計図書が建築基準法に適合しているかを行政(または指定確認検査機関)が審査する」ためにあります。そして設計者(建築士)は、「敷地の状況を正確に把握し、それに基づいた安全な設計を行う義務(建築士法)」を果たしていることが大前提です。
制度では、建築士が土地の安全性をしっかり確認したという性善説に基づいていますが、もしこの制度の穴を知り尽くしており、書類しか見ないという免罪符を使って責任の所在が有耶無耶にされているのだとしたら?
家の地盤の安全性は、一体だれが守ってくれるのでしょうか?
私は、検査機関との通話から一つの疑問が生まれました。「家を建てるための安全性を担保する地盤調査データがなくても、審査を通過できるのはなぜか?」。
その答えは、担当者との電話で明らかになりました。
担当者は「掘削される前の状態で審査した」と話していました。それなら、掘削途中に起きた穴の放置や沈下は、一体誰が責任をもって管理をするのでしょうか?
そして、もう一つ忘れてはならない恐ろしい事実があります。 私が電話をしたこの審査機関は、行政(横浜市)そのものではなく、国の指定を受けた「民間企業」です。
彼らは、ボランティアで審査をしているわけではありません。申請者であるハウスメーカーから支払われる「検査手数料」によって利益を得て運営されています。 つまり、構造上、「検査される側(メーカー)」は、検査する側にとっての「スポンサー(お客様)」なのです。
もし、厳しく審査をして「不合格」ばかり出す審査機関があったらどうなるでしょうか? ハウスメーカーは「あそこはうるさいから、別の審査機関に出そう」と考えるでしょう。 「お得意様であるメーカーの顔色を伺い、書類さえ整っていれば現場を見ずにハンコを押す」。 もしそんな力学が働いているのだとしたら、この国の「建築確認」とは一体誰のための制度なのでしょうか?
宅地造成の安全性はなぜ認められたのか?
ここで、もう一つの不可解な日付が出てきます。 建築計画概要書を確認すると、この土地の造成工事に対し、令和7年(2025年)8月7日付で「宅地造成等規制法に基づく検査済証」が発行されています。
通常、この検査は、造成工事完了後に市の職員(または委託検査員)が現地に赴き、以下の項目を目視で確認して「合格」を出します。
擁壁の構造: 図面通りか。
地盤の締め固め: 埋め戻した土がしっかり転圧されているか。
しかし、思い出してください。 私たちの目の前で地盤沈下事故が起きたのは、2025年5月です。 そして、その沈下箇所の地下には、土砂が流出したことによる「空洞」が残されている可能性が高いのです。この3ヶ月の間に、根本的な地盤改良工事が行われた記録はありません。行われたのは『埋め戻し』と穴を塞いだ処置のみ。
ではなぜ、穴が開き、地盤に空洞があるというリスクを孕んだ現場が、8月の検査で「合格」できたのでしょうか?
理由①「化粧」された安全
答えは残酷なほどシンプルです。 検査員が見るのは、あくまで「表面」だけだから。
5月の沈下発生後、造成業者は沈下した部分に土を盛り足し、空洞の空いた穴の表面をモルタル等で綺麗に整えました。 いわば、「厚化粧」をしたのと同じです。 8月にやってきた検査員は、その綺麗な表面だけを見て「締め固めヨシ!」と判定し、ハンコを押しました。その足元の地中深くに、致命的な空洞のリスクが隠されているとも知らずに。
理由②「見えない」のではなく「見ようとしない」
そして11月。タマホーム厚木支店は建築確認申請を行いました。 申請書には、必ず「敷地の状況」を報告する義務があります。しかし、彼らは5月に起きた「地盤沈下」や「空洞化」という事実を記載したでしょうか?
もし記載していれば、審査機関は地盤改良なしで許可を出すことはできません。 つまり、彼らは「何の問題もない安全な更地」として申請したと考えられます。
これは単なる連携ミスや管理不足で済まされる話ではありません。 「不都合な真実は、書類に書かなければ『なかったこと』になる」。 この事実が私の家の隣で、私の家族の安全を脅かす形で実行されていると考えられます。
理由③ 誰も責任を取らない「合法」の書類
造成業者: 「検査に通ったから問題ない」
ハウスメーカー: 「確認済証(行政の許可)があるから問題ない」
審査機関: 「書類に書いてないことは知らない」
この完璧な「責任回避のトライアングル」の中で、唯一取り残されているのが、「地中の空洞の可能性」と、そのリスクに晒されている「私たちや隣家の命をまもる家」です。法的には「合格」し、「許可」も得ている。 しかし、その家は砂上の楼閣ならぬ、「空洞上の楼閣」です。
私たちは、この「合法的に作られた欠陥」に対し、ついに行政へ直接、その欺瞞(ぎまん)を問いただす決意を固め、1月下旬に市役所へ上申書を提出し、受理されました。ここからは行政の権限をもって、真相を追求していただくことを期待しています。
証拠を固める編集術 |公的機関での手引き
私たちが問題の真相を深掘りするため、状況把握のために必要だったのが公的な書類でした。そして実はそれらの書類の一部は、誰でも入手することができます。
まもるポイント①申請書類は市役所で入手可能
もし、隣地で不穏な工事が始まったら?まずは公的機関で必要な書類を集めてみることから始めてみましょう。「建築計画概要書」には、建物の規模、配置、用途などの概要が記されています。これらは、個人情報(詳細な間取り図など)を除き、誰でも役所で閲覧・取得(写しの交付)が可能です。
私たちはこの公的書類に記された「宅地造成等規制法の検査済証交付年月日」や「建築確認」から、いつ、だれが、どの機関を通じて申請したのかという証拠を掴みました。
まもるポイント②行政への対応は公共性を意識する
行政は公的機関であるため、隣地トラブルなどは民民で解決してくださいという姿勢が一般的です。私たちは自分たちの問題を、単なる近隣トラブルとは捉えず、地盤沈下によるリスクから近隣住民へ及ぼす影響を考えました。昨今のニュースで報道された、住宅の擁壁が崩れる事故や、道路の陥没事故なども記憶に新しく、懸念している心配を「自分ごと」ではなく「公共の問題」として伝えるようにしました。
まもるポイント③行動を促す上申書の書き方
問題の概要が見えたところで、私たちは行政に調査を託す「上申書」を作成しました。この「上申書」の書き方にもポイントがあります。単に困りごとを申し立てるだけでは意味がありません。ここでも、いつ、誰が、何をし、どうして欲しいのか、を明確にする必要があります。
私の場合は、
・公益通報としての目的
・該当物件と関係者一覧および相互関係
・事実と経緯(具体的な日時とともに、いつ、だれが、なにをしたか)
・要請事項(なぜ、どのように、なんのために)
・証拠資料一覧
といった具合にまとめ、上申書と証拠資料を個別にホチキス留めし、製本テープを貼るなどして、参考資料とともに提出しました。もちろん、ここでも感情は一切排し、事実に基づいた構成を心がけました。
子育てと通ずるもの — 駄々をこねる大人たち
先日、近所のコンビニエンスストアで、5歳ほどの男の子とお母さんの会話が聞こえてきました。どうやらその男の子は、どうしてもお菓子が買って欲しかったようですが、お母さんは「いつもご飯を残すからだめよ」と、男の子のわがままに付き合おうとはしませんでした。
しかし男の子も負けてはいません。「お母さんだってあのお菓子好きだっていってたじゃない、リラックスだって大事だよ」と、大人じみた言葉に、クスッと笑いが込み上げます。
そんな時、ふと今の状況と重なる思いを抱きました。子どもたちは自分たちの欲求を通すためにあの手、この手を使い親を説得しようとします。
「みんな持っているもん」
「僕がやったんじゃないもん」
「先生がいいって言ってたもん」
子どもたちの駄々は、「わかってほしい」という純粋な感情から生まれるものです。 一方で「大人の駄々」は、もっと複雑で厄介です。
大人は「損得勘定」「面子」「組織内での評価」、そして「不正の常態化」といったフィルターを通して、頑なに自己を正当化しようとします。 そこには「相手への想像力」も「プロとしての矜持」もありません。あるのはただ、「今の自分(立場・利益)を守りたい」という、子ども以上に未熟なエゴイズムだけだと私は考えています。
子どもの駄々は成長の過程ですが、大人の駄々は、時に誰かの平穏な暮らしを壊す凶器にもなり得ます。 だからこそ私たちは、その「未熟なエゴイズム」に対して、感情ではなく「事実」と「法律」で向き合うしかないのです。そして、この戦いの記録が、同じように理不尽な力に直面している誰かの『盾』になることを願っています。
【本記事の事実確認について】 本連載に記載されている内容は、すべて筆者が独自に入手した公的文書(建築計画概要書、登記簿等)、関係者との通話録音記録、メール履歴、および現地調査データに基づき構成しています。 記事内で言及している行政手続きや法的解釈については、関係法令(建築基準法、宅地造成等規制法、民法等)に基づき記述しております。なお、プライバシー保護の観点から一部の個人名は伏せておりますが、今後の状況に応じて、企業名および公的機関名、事実経過については、記録に基づき正確に記述していきます。
【メディア関係者の方へ】
本件に関する証拠資料(音声データ、写真、公的文書、上申書の写し等)は全て整理済みです。取材依頼や詳細情報の提供については、SNSのDMにてご連絡ください。
【修正記録】
2026年2月17日|関係各社の名前を表記いたしました。
