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【第九章】まもるとこわす 家づくり|大手家づくり企業と戦う300日の記録|放置された穴と『見えない』リスク

第八章では、事実を科学的根拠に基づいて分析し立証する宿題提出の回をお届けしました。今回からは「家づくりの安全性」について分析していきたいと思います。

さて、前回から『まもるとこわす家づくり』の第二編として、「本質を探る解明編」を記録しています。ことの発端からお読みになりたい方は下記の『序章』からぜひ。

この連載では、隣の建て替え工事に伴うトラブルに巻き込まれている夫と私が、編集やデザインの視点に加え、生成AIを「分析ツール」として駆使し、問題に立ち向かうプロセスを公開します。
相手は大手ハウスメーカー。立場は弱い「隣人」。それでも理不尽な力から愛する家族を「まもる」ために、具体的に何をしたのか?

まだ解決していないからこそ書ける、綺麗事ではない思考と行動のプロセスをすべて公開します。

住宅トラブルに悩む方、これから家を建てる方へ。泣き寝入りせず家を守るための「実践的なノウハウ」として役立てていただければ幸いです。

『まもるとこわす 家づくり』

「家をつくるもの」の責任

家づくりを経験したことのある方なら、土地探しの段階で自分たちの理想にピッタリとハマる場所を見つけ出すことの大変さはお分かりになることでしょう。例えば斜面にある土地、周囲に急勾配のある崖斜面がある、隣接している道路との関係性、そして建築基準の現行法に適していない擁壁を備えた土地など、家を建てるために解決しなければならない問題は、想定よりも多いことに気付かされます。

理想の土地を探すのはとても大変なもの

よっぽど広い田舎の土地を探さない限り、あらゆる制約の中で、自分たちが100%満足できる家を建てるのは難しいもの。さらにその家づくりは一生に一度と言われるほど、人生の中でも大きな買い物であり、だからこそ信頼できるプロの知識や技術に任せるのが一般的です。

そして、家づくりは建てるまでがゴールではありません。鉄や木、そして技術の発展によって生まれた新しい建材でさえ、温度、湿度、経年によってすこしずつ変化していきます。家がたった当初は、新しい環境にばかり目がいき、ちょっとしたズレや欠陥に気づきにくいもの。ましてや目視できない地中の変化はなおのことです。
だからこそ、家づくりは慎重にかつ丁寧に進める必要があるわけです。

「掘るなら守れ」という鉄の掟

それでは、それらの安全性を担保するのは、誰の責任か。民法では工事をするものの義務についてこう書かれています。

「土地を掘削したり溝を掘ったりする時は、隣の地盤が崩れないように、擁壁を設けたり、補強したりする『必要な措置』を講じなければならない。」(【民法 第218条】 土地の掘削などの禁止・防護措置より要約)

「故意または過失によって他人の権利(財産)を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」(【民法 第709条】 不法行為による損害賠償より要約)

民法第218条/民法第709条より抜粋

これが、家を建てるための業者やハウスメーカーに課された絶対的な義務です。そしてこれは家づくりを依頼されたお客様の土地だけを守ればよいということではないということがわかります。

それでは2025年11月末から12月にかけて、私たちがどのような事実を積み上げ、業者やハウスメーカーの対応の何が問題と感じたのか。振り返ってみることにします。

組織の論理という名の「壁」

2025年11月末。私たちが直面したのは、物理的な壁(擁壁)だけでなく、大企業特有の分厚い「組織の壁」でした。

11月24日の夜、12月から家を建てるための二期工事が始まるお知らせに、タマホーム厚木支店の現場担当者が自宅を訪れました。私はその頃、家の基礎に入ったヒビを気にし始めており、不同沈下の可能性を疑っていました。

そんな中でタマホーム厚木支店長とのメールのやり取りを振り返ると、彼らが一貫して守ろうとしていたものが「顧客(施主)の安全」でも「近隣への誠意」でもなく、ただひたすらに「自社の法的責任回避」であったことが浮き彫りになってきました。
私たちが積み上げた事実に対し、彼らがどう反応し、あるいは無視したか。 その記録を公開します。

絶縁状のような「回答書」

私たちが「地盤が沈下している」「危険だ」と訴えた直後、支店長から届いた最初の正式回答は、目を疑うような内容でした。

先行土木工事等に関わる損壊の件につきましては、当社が発注・手配した工事ではないため、当社として対応・回答・費用負担を行う立場にございません。
新築工事の工程および着工判断につきましては、工事請負契約の発注者(お施主様)との協議を意思決定の軸として進める方針であり、第三者からの指図により工程を変更・中止するものではございません。

今後、弊社の工事に起因する建物の変位・損壊等のご懸念またはご主張が生じた場合に備え、着工1週間前を目安とした現況写真の撮影および施工前状態の記録保存が比較検証の重要な資料となります。

12月初旬に送られたハウスメーカーからの回答抜粋

さて、これらは何を意味しているのでしょうか。丁寧な敬語の裏にはこのような意味が含まれています。

契約書にハンコを押していない以上、私たちが紹介した業者が行なった行為は無関係です。擁壁に穴が開こうが、お宅の物置が倒れようが、私たちに救済を求めないでください。それから隣人であるあなた方は、私たちにとって『お客様(施主)』ではなく、単なる『第三者(部外者)』に過ぎません。部外者の都合で、私たちのビジネス(工事スケジュール)を止めるつもりはありません。もし工事のせいで家が壊れたと言い出されても困るので、今のうちに『壊れていない証拠』か『元々壊れていた証拠』を撮らせてください。撮らなかったら、後で文句を言われてもしりません。
と、言ってるのと同じことです。

数値という名の「証拠」で対話する

支店長から送られてきた回答書を読み、私たちがどんなに地盤が危険だと感情で伝えても通用しないということを確信しました。そこで私は、12月13日に予定していた地盤調査を前に、自宅の傾斜を買ったばかりのデジタル水平器で計測し、その生データを提供し、彼らのプロとしての判断を仰ぐことにしました。そして私たちは、『第三者』ではなく、工事による被害を受けている「被害当事者」であるということも伝えました。

将来的なリスクを知りながら工事を強行することは「知っていてやった悪質な行為」になる。その事実を施主にもSMSを通して「現状で工事を強行し、地盤にリスクが残る状態で近隣住民に被害を与える惨事をもたらした場合、その責任は施主に降りかかる」と伝えました。

何が効果を奏したのかはわかりません。12月初旬、タマホーム厚木支店から、現時点では工事の着手は行わず、工程についても社内で慎重に検討を進めるという返答がありました。さらに、法務部門や品質管理部門と協議の上、法的な観点を踏まえた正式回答を作成し、文書にて送ると明記されていました。

しかし、待てど暮らせど「正式回答」は来ず、時間だけが過ぎていきました。彼らは解決しようとしているのではなく、嵐が過ぎ去るのを待っているだけのようにも感じました。そして、彼らは私たちが自費で手配した「地盤調査」の結果を気にしていました。

そもそも、家をつくる場の安全性を確認するのは、彼らの義務であり仕事です。その費用も負担せず、言い逃ればかりする相手との交渉で、なぜ私が先に証拠を提示する必要があるのか。

「家を建てる土地そして隣家の安全確認」という建築業として当たり前の義務を問うているのに「危ないというならその証拠は?」という対応に、彼らが「法的にはクリアしている」と自信を持てる根拠は何なのか?という疑問が生まれました。

その自信の源泉は、たった一枚の紙切れにあると考えました。それが「建築確認済証」です。 横浜市指定の検査機関が発行した、「この工事計画は安全であり、法律に適合している」というお墨付きを、彼らは11月25日に取得していました。

今回もだいぶ長くなってしまったので、次の章にて、家の安全を担保する「建築確認済証」について分析していきたいと思います。


誠意の積み重ねが育む信頼関係の連鎖

11月末から12月にかけて、メールにてタマホーム厚木支店との攻防戦を繰り広げているわけですが、実はもう一つ、余談があります。

実は私が工事の延期をお願いしたのは、隣家だけではありませんでした。我が家の斜め後ろの住宅分譲地にて、新たな宅地建築工事が始まるとハウスメーカー(B社)からお知らせが届きました。

私たちはちょうど隣家のハウスメーカーとメールでの攻防戦を繰り広げている最中で、すぐ近くで宅地工事をすると、完成し入居されたばかりの近隣の新築の家に何かしら被害がでる可能性は拭えない。もし、工事を行ないたいのであればその決定を、近隣住民に責任をもって伝えてくださるようお願いしました。

もちろん、私たちには工事を止める権利はありません。そしてハウスメーカーがビジネスの利益を得るための決定についてとやかく言える立場にもありません。でも想定できるリスクだけを伝えることで、それは家を建てる業者が判断するべきことと考えました。

すると、ハウスメーカー(B社)の対応は、さまざまな事情を察知し、一旦工事の延長をすることをすぐに決定してくださいました。
おそらく、職人や資材の手配も済んでいたことでしょう。販売計画もあり、資金的な懸念もあったと考えられます。しかし彼らは「安全」を第一に考え決定するとともに、隣家の工事中に気づいた懸念点なども親身になって教えてくださいました。

私たちは常に、さまざまな人と対峙します。家族はもちろん、学校、会社、地域、または共通の趣味や思考を持つ人たちと。「はじめまして」から始まる人間関係は「お互いへの配慮」「誠意を持った行動」によって、信頼関係を築いていきます。だからこそ、最初はちょっと苦手だったかもと思っていた相手とも、その後の関係性によって、思わず距離感が近くなったりすることも珍しくはありません。それはビジネスにおいても全く同じこと。

「信頼関係の連鎖」は、丁寧な言葉だけに表れるわけではありません。発信している言葉はもちろん、その人の行ない、立ち振る舞い方、その人が放つ空気感、そして問題が起きた時の対処方法。それら全てが積み重なって『信頼』となり、ひいては『安全』を守る最後の砦になるのだと、私は信じています。

【本記事の事実確認について】 本連載に記載されている内容は、すべて筆者が独自に入手した公的文書(建築計画概要書、登記簿等)、関係者との通話録音記録、メール履歴、および現地調査データに基づき構成しています。 記事内で言及している行政手続きや法的解釈については、関係法令(建築基準法、宅地造成等規制法、民法等)に基づき記述しております。なお、プライバシー保護の観点から一部の個人名は伏せておりますが、今後の状況に応じて、企業名および公的機関名、事実経過については、記録に基づき正確に記述していきます。

【修正記録】
2026年2月17日|関係各社の名前を表記いたしました。

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