【週初エッセイ】 二十歳の僕へ。 その 「迷い」 は、未来を作るコードになる
1 月の冷たい風の中に、どこか華やいだ空気が混じる三連休。
街ですれ違う、少し着慣れないスーツ姿や、艶やかな振袖姿の若者たち。
彼らの眩しさに目を細めながら、僕はふと、自分の「二十歳」を思い出していました。
あの頃の僕は、決して晴れやかな顔なんてしていませんでした。
学び舎を出て、社会に出る手前の、何とも言えない不安と焦燥感。
「早く何者かにならなければ」
「失敗してはいけない」
「最短ルートで正解に辿り着かなければ」
そんな強迫観念に追われながら、それでも一歩も動けずにいるような、もどかしい日々。
パソコンの画面に向かいながら、エラーメッセージと睨めっこをする毎日。
もし今、キーボード越しに、あの頃の僕にメッセージを送れるとしたら。
僕は一体、何を伝えるだろうか。
「頑張れ」でも「正解はこっちだ」でもなく、ただ一言、こう伝えたいのです。
「その『迷い』こそが、未来の君を作るコードになるんだよ」と。
最短ルートなんて、存在しない
二十歳の僕は、「効率」や「正解」に取り憑かれていました。
無駄なことはしたくない。
失敗して傷つきたくない。
だから、誰かが敷いたレールの上を、脱線しないように慎重に歩こうとしていました。
でも、エンジニアとして働き始めて気づいたことがあります。
最初から完璧なコードなんて、書けるはずがないのです。
何度もエラーを出し、バグに悩み、仕様変更に振り回されながら、修正に修正を重ねていく。
その泥臭いプロセスを経て初めて、システムは「動く」ようになります。
人生も同じでした。
「こっちの道がいいかな」と思って進んでみたら行き止まりだったり。
「これが天職だ」と思った仕事が、実は全然向いていなかったり。
僕の 20 代は、そんな「バグ」だらけの歴史です。
吃音で電話に出られずトイレで泣いた日も、納期に間に合わず朝までデスクで寝た日も、フリーランスになって仕事がなく通帳残高を眺めていた日も。
当時は「人生のバグ」だと思っていました。
一刻も早く修正して、なかったことにしたい過去だと。
でも今、振り返ってみると分かるのです。
その「バグ」と向き合い、悩み、もがいた時間こそが、今の僕という人間を形作っているのだと。
遠回りは 「深み」 を作る機能
もし僕が、何一つ失敗せず、最短ルートで成功していたら。
きっと僕は、他人の痛みが分からない、とても薄っぺらい人間になっていたでしょう。
吃音で苦しんだからこそ、言葉の重みを知りました。
仕事で失敗したからこそ、信頼の大切さを学びました。
孤独を味わったからこそ、人との繋がりの温かさを知りました。
一見すると無駄に見える「遠回り」。
それは、人生というアプリケーションに「深み」や「優しさ」という機能を実装するための、必要な開発期間だったのです。
プログラミングの世界には「リファクタリング」という言葉があります。
一度書いたコードを、より良く、読みやすく書き直す作業のことです。
僕たちの人生も、リファクタリングの連続です。
過去の失敗や迷いは、決してゴミ箱に捨てるものではありません。
それらは、より良い未来を作るための「リソース」として、再利用されるのを待っているのです。
今、迷っているあなたへ
今日、成人の日を迎えたあなたへ。
あるいは、年齢に関係なく、今まさに人生の岐路で迷っているあなたへ。
どうか、迷うことを恐れないでください。
「やりたいことが見つからない」
「周りは進んでいるのに自分だけ止まっている」
と、自分を責めないでください。
その「迷い」は、バグではありません。
あなたが自分の人生と真剣に向き合っている証拠であり、独自のアルゴリズムを構築している最中なのです。
すぐに答えが出なくてもいい。
行ったり来たりしてもいい。
時には立ち止まって、空を見上げてもいい。
その時間こそが、あなたの人生を、誰のものでもない「あなただけの物語」にしてくれます。
キーボードを叩き続ける限り
僕はいまだに、迷ってばかりです。
書くコードに自信が持てない日もあるし、将来が不安で眠れない夜もあります。
でも、二十歳の頃とひとつだけ違うのは、「迷っても大丈夫だ」と知っていることです。
どんなに複雑に絡まったスパゲッティコードも、一行ずつ読み解いていけば、必ず解決の糸口が見つかることを知っているからです。
だから僕は、今日もキーボードを叩き続けます。
迷いながら、悩みながら、一文字ずつ、未来へのコードを書き続けます。
二十歳の僕へ。
そして、今を生きるすべての「迷える僕たち」へ。
大丈夫。
その遠回りは、いつか必ず、美しい景色へと繋がっているから。
焦らず、自分のペースで、最初の一行を書き始めよう。
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二十歳の頃の自分に会ったら、何て声をかけようか。
そう考えながら書きました。
たぶん、言葉はいらない気がします。
黙って隣に座り、缶コーヒーでも手渡して、「ま、なんとかなるよ」と笑いかける。
それだけで十分な気がしました。
新成人のみなさん、そしてかつて新成人だったみなさん、おめでとうございます。

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