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本の紹介24冊目:「生きるための読書」津野海太郎

今回紹介するのは、ふつうなら、紹介しないような本です。


京都の恵文社という、私が溺愛する本屋で手に取った本です。

経緯は、以下の記事にあります。


「生きるための読書」は、

元晶文社取締役で編集者の津野海太郎さんによるエッセイです。

86歳で書き上げた本です。

電子版ではなくて、紙で買うと、こんなちょっとした工夫(骸骨が可愛いですね♪)を見つけられて、愉快な気分になります。


さて、もうすぐ死期が近い、津野さんが、

伊藤亜紗さん、斎藤幸平さん、森田真生さん、小川さやかさん、千葉雅也さん、藤原辰史さん

という、いまの時代の知性に触れて、驚いたというエッセーです。


津野さんが読んだ、本は以下の6冊です。
※千葉さんの本は「勉強の哲学」ではなく「現代思想入門」に変更になっています。


6冊の本、6人の作者の特徴

さて、津野さんが、6人の知性に触れて驚いたことは、以下です。

どの本には、これまで私が読んできた本にはない、それぞれに異なる積極的な特徴がある。しかも、こんなにも積極的なのに文章に高圧的なところがない。だからのびのびと気持ちよく読める。
もしかしたら私の人生で、こんな読書体験ははじめてかもしれんぞ、と思わされるほどにね。(P29)

机上の空論からほど遠く、日常生活の知恵になるような思考を求めていることがわかります。

千葉にかぎらず、いまや、かれの世代の多くの研究者たちにとっても、日々の暮らしの中で「身体化で、具体的にかみ砕いて」「腹落ち」することばで思考すること自体が、新しい課題になっているらしい。

(中略)

かれらに共通するのは、私たち以前はもとより、私の時代の大学知識人たちにも付きまとっていた強烈なエリート臭がうすく、そのかわりに「街を行き交う人たち」と対話する柔軟な力を、ごく当然のこととして身につけていること。

たとえば『目の見えない人は世界をどう見ているのか』や『記憶する体』の著者・伊藤亜の場合もそう。まずは研究対象となる障害者一人ひとりの体の「他には代えがたい固有性」がどうかたちづくられてきたかを解明する。そしてかれらの「無言の経験の集積」を、障害を持たないじぶんの知覚によって記録し、それをまるごと読む者に伝えたい。でも、はたしてこの作業を従来の論文作法でやりおおせるだろうか。むずかしいと伊藤は考えた。そこで思いついたのが「小説」の力だったのです。

(中略)

そして、それはまた理学部数学科で学びながらも、卒業後は数学の「作曲家」ではなく、その「演奏家=数学芸人」として生きる道をえらんだ森田真生の『数学する身体』に共通する姿勢でもある。
斎藤幸平や小川さやか、もちろん千葉雅也ともね。本を読むが、それぞれに固有のやり方で、じつによく動く。
のみならず、東大や京大で専門教育を受けた「物を知っている人間」でありながら、なおかつ「物を知らない人間」への「やさしさ」も捨てない


6冊の本のなかで読みたくなった本

私は、この6冊のなかでは、かろうじて、『人新世の「資本論」』だけ読んでいました。

※大学生向けの読書術の講義で取り上げました


津野さんの紹介で読みたくなったのは、「現代思想入門」です。


千葉さんは、現代思想を学ぶことに「どんなメリットがあるのか?」という問いに対して、以下のように答えています。

現代思想は、秩序を強化する動きへの警戒心を持ち、秩序からズレるもの、すなわち「差異」に注目する。それが今、人生の多様性を守るために必要だと思うのです。

 人間は歴史的に、社会および自分自身を秩序化し、ノイズを排除して、純  
 粋で正しいものを目指していくという道を歩んできました。そのなかで、 
 20世紀の思想の特徴は、排除される余計なものをクリエイティブなものと
 して肯定したことです。

しかるに、いまの社会では「秩序から外れるもの、だらしないもの、逸脱を取り締まって、ルール通りにキレイに社会が動くようにしたい」という、当今の企業人がいう「コンプライアンス」なるものを、個人生活の中でも、つよく意識させられるようになっている。そのため人びとの日常までが「何かと文句を言われないようにビクビクする生き方」になってきた。
つまりそれが千葉のいう「単純化」なのですね。この場合、「必ずしもルールに収まらないコース、ルールの境界線が問題になるような難しいコース」は、しばしば自動的に無視されてしまう。そんな扱いを拒むのが「差異」を重視する現代思想だというのです。

 現代思想を学ぶと、複雑なことを単純化しないで考えられるようになりま  
 す。単純化できない現実の難しさを、以前より「高い解像度」で捉えられ
 るようになる
でしょう。

私、桐島は、最近、「難しいものを難しいまま捉える」ことを学びたいと思っていました。

役所にいると、物事を極度に単純化して、パワーポイントスライドに押し込むという習慣があります。

少しそんな単純化から離れたいという気持ちでした。

「生きるための読書」から、生きるための本を見つけらえて良かったです♪

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