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「バオバブ戦記」第1話#創作大賞2024 #漫画原作部門


あらすじ

荒れ果てたアフリカの地に、5人の神が安寧を願い、5本の巨大なバオバブの樹を植えた。
5本の樹が大気に放出するエネルギーはアフリカを繫栄させ、人々は神と樹に絶対的な信仰を寄せた。
樹から放出されるエネルギーは、それを取り込んだ者に異能の力を与えた。アフリカ中の生物はさらなる神の力を欲し、5本の樹を求めて争うようになった。
神、オニャンコポンを父に持つアナンシは、父が植えたバオバブの樹とその庇護下で何不自由ない暮らしを送っていたが、ある日外へと飛び出し、争いが絶えない現実を目の当たりにする。
「バオバブの樹と神はアフリカに必要ない」
アナンシは、樹をすべて切り倒し争いをなくすために旅に出る。

補足(主要キャラ紹介)

アナンシ(主人公)
年齢:17
バオバブの樹と神である父の庇護下で、何不自由ない生活を送っていたため、外の世界のことを全然知らない。
お調子者で女好きだが、真っすぐで熱い心を持ち、困っている人を見たら自分を犠牲にしてでも助けてしまう。
みんなが笑って過ごせる争いのない世界を目指す。

オニャンコポン(神)
年齢:???
女好き。雑でテキトー。常に偉そうで気分屋であり、神の威厳などまるで感じさせない。

ココナッツ
年齢:19
アルビノの少女。全身が真っ白で赤い目をしている。
アフリカではアルビノの身体は万病に効くと信じられているため、常に危険にさらされており、殺されかけていたところを大蛇の精霊に助けられて育てられた。
大蛇に育てられた影響で、時代がかった口調でしゃべる。

ボニフェイス
年齢:18
「1カラットの死神」と恐れられる、ダイヤモンド一つで仕事を請け負う何でも屋。
神に仕える一族であり、アナンシとは幼馴染。
神の力を一部代行し催事を行う一族だが、神の力を私利私欲で行使し続けたことにより、神の怒りに触れて村を追われた。

第1話


「アフリカには神もバオバブの樹も必要ない」

アナンシは天空に向かって聳えるバオバブの樹を、大剣でぶった斬った。

*****

「むかしむかし、あるところに・・・」
「ママ、またその話し」

空に突き刺さるがごとく、巨大なバオバブの樹の下で母が少年に語り掛ける。
少年・アナンシは母の膝の上で、うんざりとした様子だ。

「いいから聞きなさい。すっごく大事な話なんだから」
「5人の神様がいました。でしょ。もう聞き飽きたって」
「すっごーい、もう覚えちゃったのね」

母は愛おしそうに少年の頭を撫でる。

「毎日毎日聞かされてるんだから、そりゃ覚えるよ」

少年はうっとおしそうに頭を振って母の手を振りほどく。

「5人の神様は、荒れ果てたアフリカの大地にバオバブの樹を植えました」

母は、嫌がる少年を無視し、背後に鎮座する樹を振り返って話しを続ける。
こうなったら最後まで聞くまで終わらないのであろう、少年は観念した様子で母と一緒に樹を見上げた。

「バオバブの樹からとめどなく放たれるエネルギーは、アフリカ中に注ぎ、緑が芽生え、海洋が広がり、生きとし生けるものに不思議な力をもたらしました」
「そして、アフリカは豊かな土地となり、5人の神様と5本のバオバブの樹は絶対的な信仰を得ましたとさ」
「そういうこと。よくできました」

母はニコッと笑った。
母のこの表情が見れるのであれば、毎日同じ話を聞かされるのも悪くない。少年はそう思った。

「その5人の神様のうちの一人が、あなたのパパ、オニャンコポンなのよ」
「それも何回も聞いてるってば。でも、なんでパパはここにいないの?家族は一緒に暮らすんじゃないの?ボニフェイスのとこもパパは一緒に住んでるじゃん」

少年の怒涛の問いかけに、母はたじろぎながら答える。

「いい、アナ。神様はね、忙しいの。アフリカのためにやることがいいっぱいあって、ここにはなかなか来られないの」
「一回も会いに来ないなんて、おかしいじゃないか。僕はパパに会いたいよ」
「私も会いたいよ。アナ、ごめんなさいね。そのうち・・・・・・」
「そうだね。ママ、わがまま言ってごめんなさい」

しおらしくなってしまった母を見て、少年は口をつぐんだ。

*****

「おっちゃん、教えてよ。外の世界はどんなんなの?」
「おうアナ、どうしたんだよいきなり」

アナンシの問いかけに、ハンモックにすべてを預けて脱力した中年が、身体を起すことなく答える。

「俺とは関わるなって、みんなから言われてんじゃねえのか」
「だって、外の世界のことを教えてくれるのは、おっちゃんだけだから」
「そりゃあなあ。ここだけの話だが、お前に外の世界のことをことは絶対に教えんなって村じゃ緘口令が敷かれてるからな」
「どうして?誰がそんなことを?」
「誰って、そりゃあお前。オニャンコポンに決まってんだろ」
「・・・・・・・・・・・・」

アナンシは予想外の答えの連続に、脳の処理が追い付かずフリーズしてしまった。

「なんでそんなことをって質問と、最初の外の世界はどうなっているのかという質問だが、アナ、お前自分の目で確かめて来い」
「どういうこと?」
「明日の朝ここに来い。そうしたら村の外に出してやる」
「そんなことができるの?村の外へは今までどうやったって出ることができなかったのに」
「俺を誰だと思ってやがる。大体のことは何でもできて、大体のことは何でも知っている、ハンモックで日がな一日寝ているおっさんだぞ」

中年はいまだにハンモックから身体を起こさずそう言った。

「だけど、おっちゃん。僕を村から出したら・・・・・・」
「いいから行って来い。俺は逸脱した存在だ、村のルールなんかに縛られねえ。俺を縛ることができるとしたら、それは愛ぐらいのも
「わかった、明日また来るよ」
「おい、小僧。人の話は最後まで聞くもんだぞ」

アナンシは、ウキウキで中年の元を飛び出して家路についた。

*****

「おはよう」
「おう、よく来たなアナ。好奇心は止めらんねえよなあ。さあ、目をつぶれ」
「うん」

アナンシは言われたとおりに目を閉じる。

「目を開けたらそこは、外の世界だ」

中年がハンモックから起き上がり、大剣でアナンシの目の前の虚空を斬った。突如として現れた闇にアナンシの身体は吸い込まれた。

*****

「大変です、アルカディアス様っ。アナンシ様の姿が見当たりません」
「なにっ、またあの子。ホントに」

アナンシが監視の目を振り切って、どこかに行ってしまうのは日常茶飯事だ。母はもうそんなことで動揺したりしない。

「どうせそのうち帰ってくるでしょう。ほおっておきなさい」
「だといいんですが」
「大丈夫、あの子には神様がついてるんだから」
「そうでしたね、大変失礼いたしました」

アナンシの近衛兵がアルカディアスの暮らす屋敷を出ようとしたその時だった。

「アルカディアスさまっ」
「なんなのよ、立て続けに」

別の近衛兵が部屋に飛び込んできた。

「アナンシ様が、村の外へ出ました」
「そ、そんな・・・・・・。まさか・・・・・・」

アルカディアスは屋敷を飛び出す。
バオバブの樹は大きなうねりを上げる。
それに伴い樹を囲むように作られた村に激震が走った。

*****

「アナンシはどこに行ったの?」
「ひっさしぶりだなあ、アル。俺のところに来るなんてなあ。どうしたんだよ、そんな血相変えて」

必死なアルカディアスに対して、中年はやはりハンモックから動かない。

「言え、全部知ってるんでしょ」
「怖くてかなわねえなあ、ホントに。アナは行ったぜ、外に」

アナンシを外に出してはいけないという、村の禁忌を犯した中年は飄々と言う。

「やっぱり、あなたの所に行かせるのは何が何でも止めるべきだった」
「アル、お前は勘違いしている。あいつは俺にそそのかされたからじゃねえ、自分の意志で外に出たんだ。それは誰にも止められることじゃない」
「アナに何かあったら、絶対に殺す」
「お前に殺されるなら本望だぜ」

ハンモックが少しだけ揺れた。

*****

「なんだよ、これは」

目を開いたアナンシの目の前に広がっていたのは、目を覆いたくなるような光景だ。
建物は倒壊し、木々は燃え盛り、人や動物が凄惨な姿で転がっている。

「本当にここはアフリカなのか」

母から毎日語り聞かされていた、豊かな安寧の地はそこにはない。
一つの大軍勢が村を蹂躙しているのだ。

「何してるんだ、やめろーっ」

軍勢が残りの建物に向かって火を放つ。
アナンシの声は、村人の阿鼻叫喚に飲まれて消えていく。

「助けてっ、助けて」

瓦礫の下から、アナンシと年端が変わらないような子どもの叫び声が聞こえる。

「僕が、僕が助けないと」

アナンシは恐怖よりも先に走り出していた。

「まだ生き残りがいるぞ、やれ」

軍勢は村を滅ぼすまで止まらないのだろう、兵士は顔色一つ変えないで声がする瓦礫を轟音と共に蹴り飛ばした。

「これで最後か」

瓦礫から現れた少年に向けて、もう一振り蹴りが繰り出された。

「やめろ」

アナンシが足に飛びついて、兵士はバランスを崩した。

「ちっ、クソガキが。もう一人生きてやがったか」
「ぐっ」

兵士がアナンシを殴りつけると、体が地面に激しく叩きつけられた。

「おい、そいつの着てる服、身に着けてるもん、とんでもねえぞ。はぎ取っちまえ。なるべく傷がつかねえようにな」

「今のうちに逃げて」

兵士の興味がアナンシの服と装飾品に移っているうちに、逃げるように指示を出す。
だがしかし、一人の兵士が放った弓矢が少年の胸を貫いた。

「くそお、くそお」

アナンシは大粒の涙を流した。

「こいつ、ホントに助けられるとでも思ってたのか」
「非力なガキ一人で、この人数相手に」

兵士がアナンシを取り押さえ、身ぐるみを剝いでいく。

「どうしてこんなことをするんだ」

アナンシはまっすぐな瞳で問う。

「うるさいガキだ、とっととやっちまうか」
「待て、こんなお宝、汚したらお前を殺すぞ」
「ちぇっ。わあったよ」
「なあクソガキ、これは自然の摂理だ。弱い奴は奪われるしかねえんだよ。住むところも家族も心も大事なものも全部踏みにじられるんだ。それがアフリカだ」
「全部違うじゃないか」

聞いていた話と何もかも。
5人の神様は、バオバブの樹でアフリカに平穏と実りを。

「何も違わねえよ、力こそがすべてだ。バオバブの樹はそれを与えた」

兵士たちはアナンシの身ぐるみをすべて剝ぎ取った。

「これでやっと終わりだな。じゃあな、甘たれ小僧」

アナンシに向けて、兵士たちが一斉に弓を放った。

「よお、アナ。どうだ外の世界は」

兵士たちが放った弓は、すべて軌道を変えて明後日の方向に飛んで行った。

「だれ」

アナンシは突然現れた、見覚えのないやけになれなれしい男にそう言った。

「パパだよ、パパ。お前のお父さん、オニャンコポン」
「パパ?あなたが」
「そうさ、俺がお前の父親であの伝説の神様、オニャンコポンだ。俺達は父と息子で積もる話があるからさ、お前らどっか行ってよ」

「「「「「「「ハハッ」」」」」」」

オニャンコポンが現れて以来、地に膝をついて顔を伏せていた兵士たちが一斉にその場を立ち去った。

*****

「外の世界はこんなことになってるの?」
「ああ、そうだ。バオバブの樹を巡って、争いが止まない」
「これは、神様達が望んでいた世界なの?」
「いや、別に深く考えたことはねえよ。俺達は樹を植えた。その樹がアフリカを再興したのは事実だ。そして俺達は人と動物と精霊とアフリカ中から絶対的な信仰を得て、その信仰が俺達を神たらしめる。それ以上でも以下でもない。争いが起きようが知ったこっちゃねえ。当事者間で好きにやってくれ」
「弱者が一方的に踏みにじられる、そんなことが許されていいの」
「俺は神だから人間の物差しは知らねえがな、さっき誰かが言ってただろ、力こそが絶対の正義で、弱い奴は食われるしかないんだ」
「弱いことは悪いことだっていうの?」
「違うなアナ。弱さは罪じゃない、弱さは罰だ。その罪は強くあろうとしないことだ」
「よーくわかったよ。神は傲慢だ。アフリカのことなんて何一つ考えちゃいない。ありがとう、オニャンコポン。僕のやるべきことが決まったよ」

*****

~数年後~

「おっちゃん」
「おお、アナ。大きくなったもんだなあ」
「うん。もうおっちゃんより大きいかもね」
「かもな」

相変わらず中年はハンモックから起きない。

「行くんだろ、アナ」
「ああ」
「この剣持ってけよ。こいつは神の力をぶった斬る」
「ありがとうもらってくよ。じゃあね」
「おう、行ってこい。お前になら何だってできる」

*****

「アフリカには神もバオバブの樹も必要ない。誰も血を流さなくていい、みんなが笑って暮らせるアフリカを僕が作るんだ」

アナンシは天空に向かって聳えるバオバブの樹を、大剣でぶった斬った。

*****

「さあ行け、お前は自由だ。なんだってできる。なんせ俺の息子なんだから・・・・・・。そして俺はこの戦いの記録に、バオバブ戦記と名を付けよう」

ハンモックから体を起こした中年の視界の先には、バオバブの樹が横たわっていた。

*****

第1話完。

第2話記事URL

「バオバブ戦記」第2話#創作大賞2024 #漫画原作部門 |ブルックリン (note.com)

第3話記事URL

「バオバブ戦記」第3話#創作大賞2024 #漫画原作部門 |ブルックリン (note.com)

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