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【こぼれ落ちた。神様と弟の言葉】

我が家はわたしが中3の頃、父が失踪した。
専業主婦だった母がそこから働きに出て、なんとか私たち姉弟2人の子供を大学まで行かせてくれ
た。今考えると、なんと大変なことだっただろうか。


大学生の頃、長い休みで帰省していたある日の出来事。
その日の母は、仕事から帰宅して様子がおかしかった。今思うと、反省せねばならないが、母は座る間もなく、夕食の準備をして、私たちに食事を出した。
その食事の出来は、いつもの料理上手な母とは思えない状態だった。
「ねぇ、これおかしいよ?べちゃべちゃだし。どうしたの?」

私は話しかけたが、母は上の空で当時飼っていた飼い犬と戯れあっていた。その姿はまるで子供のようだった。

なにがどうしてしまったのか?
なにかがおかしい...
と思いながら母の様子を見守っていると、
突然全身の痙攣が始まった。
私は大慌てで母を抑え、弟とオロオロしていた。
一度止まってもまた始まる。すぐに救急車を呼んだ。
救急車が来るまでの時間がとても長かったことを覚えている。
到着した救急隊員に
何か飲んでいる薬はないか?
と聞かれ、
神経内科の薬があります。
と伝えた。
しかし、これは間違いだった。

救急車が脳外科のある総合病院に到着し、
初期診療を受けていると
また痙攣が始まった。
脳外科の医師は痙攣を見るなり、

これは脳外科領域の痙攣ではない、精神科だろ!

と言った。
そう、母が飲んでいたのは心療内科の薬だった。
薬学生だったのに、間違えてしまっていたのだ。今でも悔やまれる。

しかし、命の危険がある発作だったので、私たちは外に出され、しばらく治療が施された。
その後落ち着き、

私たちは帰宅した。

今考えても、私たちはよくやったと思う。
しかし、父が失踪し、なんとか、生活している自分たちになんとこのような悲しいことばかり降りかかるのだろうか、と絶望に打ちひしがれていた。そして私は弟に言った。

神様なんていないよね、神様がいたらこんなに不幸な人たちがいるはずないもの。

と。その後弟が返した言葉を私は今でも忘れない。

でもね、神様は救う人が多すぎて、手のひらからこぼれ落ちていっているのかもしれないよ。

その後、母は仕事をやめた。
仕事上の上司とのストレスが彼女を追い詰めていたようだった。
私たちは母のわずかな蓄えと、奨学金でなんとか卒業した。
私は現在、薬剤師として働いている。
奨学金の返済もやっとこの秋に終わる。

一緒に暮らした弟の考え方の柔軟さに感銘を受けたできごとだった。
今では弟とあまり連絡を取り合うことはないが、
この時の弟の言葉は、今でも私の胸のどこかにあり、辛さを感じた時、時折顔を出す。


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