福岡県の用地買収問題で内部告発者探し〜公益通報者保護法の実態〜
福岡県が道路整備事業で起きた不正な用地買収を認めた後、報道の根拠となった内部資料の流出を追及するため、職員数十人への聞き取り調査を続けています。専門家からは「公益通報者保護法の趣旨に反する」との批判が相次いでいます。
県自身が不正を認めた案件で、なぜ告発者を探すのか。この問題は、日本の内部通報制度が抱える深刻な欠陥を浮き彫りにしました。
約5倍の価格で土地を買収
問題となったのは、福岡県道「行橋添田線」の整備事業です。県は2024年6月、筑後市赤村の山林約2505平方メートルを2165万円で取得しました。
当初、県が算定した適正価格は430万円でした。ところが地権者である部落解放同盟福岡県連副委員長の男性が難色を示すと、県は価格を増額。最終的に約5倍の金額で買収に至りました。この土地取得には国からの交付金が充てられています。
毎日新聞が独自入手した内部資料をもとに8月13日付朝刊で報じると、県は同日記者会見を開き「不適切だった」と認めました。服部誠太郎知事も8月22日の定例記者会見で「重大な問題」と述べ、過去5年分の取引を調査すると表明しています。
不正を認めながら告発者を追及
県が不正を認めて是正に動く一方で、9月から始まった動きがありました。内部情報の漏えいがあったとして、職員への聞き取り調査を開始したのです。
複数の関係者によると、用地買収を担当した県の出先機関「田川県土整備事務所」の職員ら数十人が対象となりました。県土整備部と人事課の担当者が聞き取りを進めています。
調査では「犯人捜しではない」と説明しながらも、関連する内部資料の内容や保管場所を把握しているか尋ねたり、「不審な人を見なかったか」などと質問したりしていました。調査内容の口止めも行われていたといいます。
県の主張「公益通報に当たらず問題ない」
県人事課の内部統制室長は毎日新聞の取材に対し、調査の過程で告発者が特定される可能性はあるとしました。その上で「今回は保護要件を満たしていないため、公益通報に当たらず、調査は問題ない」と説明しています。
さらに「県民のためになった事案だからといって情報流出は放置できない。経緯を調べるための聞き取りだ」として、調査の正当性を主張しました。
つまり県は、告発された側が一方的に「これは公益通報ではない」と判断し、その判断に基づいて告発者探しを正当化しているわけです。
専門家「制度の趣旨に反し不適切」
消費者庁の「公益通報者保護制度検討会」で委員を務めた志水芙美代弁護士(東京弁護士会)は、この県の対応を厳しく批判しました。
「事業者側が一方的に保護対象ではないとして調査することが許されてしまえば、探索防止措置の規定が機能しなくなる」
経緯を調べていけば告発者の特定につながるため、犯人捜しではないという福岡県の言い分には疑問があるといいます。
今回の用地買収について県は不適切だと認めて是正に動いており、公益性が認められます。「県民の利益のために声を上げた人を特定しようとする行為は、制度の趣旨に反し不適切だ」と志水弁護士は指摘しました。
広がる批判の声
X(旧Twitter)上では、この県の対応に批判が殺到しています。
「告発された側が公益通報ではないと主張するのは当たり前だから、内部告発が出た時点で双方が問題に関われないようにしないといけない」
「通報された側が何が公益通報に該当するかを決められるなら、こんなにムシのいい話はない」
特に注目されているのは、県自身が不正を認めているという点です。告発内容が事実だったにもかかわらず、その告発者を追及する姿勢に、多くの人が違和感を覚えています。
法政大学大学院の白鳥浩教授も「内部告発者を、地方自治体が行うという事については、地方自治の上で学んだところがあるはずだ」とコメント。告発された側が「内部告発者探し」を行う事は、公益通報者保護の観点から地方自治体の横暴という見方ができる可能性が高いと指摘しました。
公益通報者保護法とは
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