2%になったら、いくら払うのか
金利が上がったら返済額はどうなるのか。この問いには、二つの答えが要る。政策金利が自分の金利に届くまでの経路と、届いたあとの実額である。前者は既に実績があり、後者は各行が表を公開している。両方を並べる。
実績:2年半で何が起きたか
日銀の政策金利は、2024年3月のマイナス金利解除から4段で上がってきた。2024年7月に0.25%、2025年1月に0.5%、2025年12月19日に0.75%、そして2026年6月16日に1.0%。1%台は1995年以来、31年ぶりの水準である。
変動金利の基準になる短期プライムレートは、これを追いかけた。メガバンクの短プラは2009年1月から16年間、1.475%で動かなかった。最初に動いたのは2024年9月、0.15%の引き上げ。以後、2025年3月に1.875%、2026年2月に2.125%。そして6月の利上げを受けた改定が6月16日に発表され、2026年8月3日から2.375%が適用されている。改定幅は0.25%、政策金利の引き上げ幅がそのまま乗った。
二つの系列を並べると、伝達の癖が見える。
第一に、マイナス金利解除には反応しなかった。メガバンクの短プラが動いたのは2024年7月の利上げの後であり、3月の解除はスルーされた。一方、当時の住信SBIネット銀行は2024年5月1日に短プラを0.10%引き上げている。同じ政策変更に、動いた銀行と動かなかった銀行がある。 伝達は機械的ではない。なおメガバンクの間でも発表日は揃わない。2025年12月の改定では三菱UFJとみずほが12月19日、三井住友が12月24日と、日をずらして発表している。本稿の「メガバンクの短プラ」は最頻値の系列である。
住信SBIネット銀行は、短プラ適用と同じ2026年8月3日付でドコモSMTBネット銀行に商号を変更した。本連載では過去回との連続性のため旧称の表記を維持する。
第二に、遅れは1〜2ヶ月で安定している。政策決定から短プラ改定の発表まで、2024年7月→9月、2025年1月→3月、2025年12月→2026年2月適用。6月の分は決定と同日に発表され、適用まで1ヶ月半だった。そこから先は基準日(4月1日・10月1日)を待ち、返済額への反映はさらに2〜3ヶ月後。政策決定から引き落とし額が変わるまで、半年前後かかる。
第三に、累計では、ほぼ全部届いている。政策金利は解除前から約1.0%上がり、メガ短プラは1.475%から2.375%へ、0.90%上がった。伝達率はおよそ9割。日銀が上げた分は、遅れながら、ほぼそのまま借り手に届いてきた。
換算:白書の「1%」まで、あと何回か
第1回で扱った内閣府の試算は、借入金利1%の上昇を前提にしていた。
伝達率9割で換算すると、借入金利が1%上がるのに必要な政策金利の上昇は1.1%程度。そのうち0.9%分は、既に起きた。残りは0.1%強。次の利上げ一回で、白書の前提に届く。
白書自身が書いた実績とも合う。2024年から2026年半ばにかけて住宅ローン金利は0.8%程度上昇した、と白書は書いている。8月3日の短プラ改定を足せば0.9%。年24万円という試算は、シナリオの数字ではなく、進行中の現実の一歩手前にある。
第1回でこの試算を「返済額の変化ではない」と書いた。その指摘は変わらない。ただ「まだ先の話」という含みがあったなら、それは訂正する。前提への到達は、目前である。
シナリオ:三つの水準で当てはめる
借入3,000万円・35年・元利均等、2024年頃に当初0.5%で借りた契約を基準に置く。毎月返済額は77,875円。基準金利の上昇分0.90%が乗り、現在の適用金利は1.40%程度である。
政策金利1.5%の場合。 日銀の早川英男元理事が2025年12月のインタビューで示した経路では、半年に1回のペースで2027年前半にもあり得る水準である。適用金利はおよそ1.90%。当初比プラス1.40%で、125%ルールの発動ライン(この契約なら約プラス1.6%)まで残り0.2%。5年目の見直しで返済額は15%前後の増加、月9万円前後になる。まだ制度の上限の内側だが、余白はもう薄い。
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とある地方都市の某外科医のひとり言
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