定年退職して2年が経ちました5 「もういい、自分でやる──男の意地と包丁の再始動。」
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定年退職から1年。体力の衰えと酒に逃げる日々。山にも行けず、食事すら喉を通らない。診察の結果は「禁酒」。だが本当に堪えたのは、妻のひと言──「もう、支度しなくて良いよね!」。
そうして始まった、男の再始動。包丁を握る手には、意地と、少しの寂しさが滲んでいた。
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定年退職から1年。
なんだか体調が優れない。山に行っても、以前のようにガンガン登ることができなくなっていた。
さらに疲れが抜けないので、ゴロゴロする日が増えた。
疲れが取れない
→ ゴロゴロして休む
→ 夕方から酒を呑む
→ 疲れてるから山にも行かない
→ 早起きしないので、ベロンベロンになるまで呑む
→ さらに体調が悪化する
このループにはまった結果、食事すら喉を通らなくなった。
さすがにこれはまずいと思って、久しぶりに病院へ行くことに。
「先生、最近飯が食えないんですわ」
「いつくらいから?」
「先月から、ですかね」
「体調は?」
「とにかく、しんどいっす」
「う〜ん、分かりました。今日食事は?」
「食べてないです」
「じゃ、検査フルコースでいきましょうか」
「は、はい……」
心電図、エコー、肺のレントゲン、尿検査、血液検査。
心電図は異常なし。肝臓は脂肪肝気味──。
後日、血液検査の結果。
「これはすごいね。もう禁酒だね」
「はあ……まあ、確かに見たことない数値です」
「?」
「結婚した頃から健康診断のデータ、全部残してるんで」
「それはすごいね」
「……とりあえず、1ヶ月後にまた来てください。それまで禁酒です」
「はい……」
この頃には、少しずつ山にも行っていたので体調も回復し始めていた。
1ヶ月後の再検査。γGTP以外は正常値に戻っていた。
「まだγが高いね」
「いや、この数値は見慣れてます」
「いやいや、一般的な数値の3倍あるよ」
「先生、元は〇〇〇でしたから」
「ああ……まあ、確かに。でも禁酒は続けてね」
ただ、本当の問題は家にあった。
体調不良で食事がとれなかった時期、妻が用意してくれた食事を手つかずにしてしまう日が続いた。
「私が作った料理は食べられないって言うの?」
「もう、支度しなくていいよね!」
──ああ、もう説明すら面倒だ。
俺の体調の心配すらしないのか? それなら──。
「もういい、自分でやる!」
それ以来、自分の食事は自分で用意している。
包丁?問題ない。昔バイトで散々こき使われたから慣れてる。
炒め物?問題ない。炒飯は俺の方が上手い。
煮物?レシピ見て煮りゃOK。
お互い意地っ張りだから、未だに自炊生活が続いてる。
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