女子校の文化祭で始まる恋(リライト版)【第14話】 数十年後の再会
それは、アスファルトが陽炎で揺れる、見慣れた街のメインストリートだった。妻に車を使われていた俺は、珍しく徒歩で買い物に出かけていた。
「暑っいな〜、買い物、夕方にすれば良かったかな……」
真夏の暑さに一人ボヤいていた時、陽炎の向こうに女性の姿が目に入った。

「あれ? 彼女、こっちを見ている?」
風になびく白いリネンのシャツ。日焼けした肌にうっすら浮かぶ笑窪。少し伏し目がちな視線が、すれ違うかなり前からこちらに向けられていた。
俺は暑さにウンザリした感じを丸出しにしたオジサン歩きをしていたが、彼女の歩き方はとても綺麗だった。
「綺麗だな……」
そう思いながら、二人は近づいてきた。
最初は遠目で誰かはハッキリしなかったが、すれ違った瞬間に、遠い思い出が目の前を駆け抜けた。
安奈?

お互い結婚して、子供も巣立つ程何年も経っていたから、安奈だとハッキリした確信が持てなかった。ただ、高校生の頃の髪をかき上げる癖が、変わらずそこにあった。

彼女が目線をくれたと言う事は、彼女は俺だと判っていたのだろうか?
そう思い振り返ると、笑顔で会釈し、軽く手を振る彼女がそこにいた。

やっぱり彼女だった。胸の奥が締め付けられるような懐かしさが込み上げてくる。と、同時に額の汗が、高鳴る鼓動をさらに加速させた。
もう走り寄って何かを話す事はなかったが、お互いに振り返った挨拶が全てを語っていた。俺たちの高校時代は良い思い出として生き続けていたと……。
俺が結婚した頃、安奈が小さな子供を連れて実家に出入りする姿は何度か見かけてはいた。噂では彼女が実家を継いだとも。そうか、まだあそこで暮らしているんだ……。
さあて、買い物をさっさと済ませよう。帰ったら冷蔵庫で冷やしたビールが、熱くなった胸と火照った体に染み渡るだろう。今夜は、あの日の安奈と、今日の安奈に、乾杯するんだ。
本作品はフィクションです。登場人物・団体名等はすべて架空のものです。
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