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管理職を目指さないと、キャリアは積めないのか。ディーシステムがキャリアコースを分けた理由

「キャリアを積むなら、最終的には管理職を目指さなければいけないと思っていました。スペシャリストという選択肢があると分かって、少し気持ちが軽くなりました」

キャリアコースを導入した後、子育てをしながら働くエンジニアから、こうした声がありました。

管理職になりたくない、という話ではありません。人を育てることや、チームを率いることに意欲を持つ人もいます。一方で、技術や業務の専門性を深めたい人、顧客の課題から新しい仕事をつくりたい人、複数の部署や関係者の間に入り、仕事を前へ進める役割に手応えを感じる人もいます。

けれど、成長の道が一つしか見えない職場では、役職に就くことが唯一の正解のように映ります。自分の強みや生活の状況と合うかを考える前に、「次へ進むには管理職しかない」と受け取ってしまうこともあります。

ディーシステムは2026年度、組織変更に合わせて評価制度を改定し、キャリアコースを設けました。

目的は、評価表を増やすことではありません。社員一人ひとりの成長と、会社が顧客へ提供できる価値を、同じ方向で考えられるようにするためです。

管理職、スペシャリスト、ビジネス開発、ジェネラリスト。4つのコースをつくった背景には、ITの仕事が一つの役割だけでは回らないという現実があります。

「昇進」が、管理職になることだけを指すとき

エンジニアとして働いていると、ある時期から将来の話をされるようになります。

後輩を見られるか、案件をまとめられるか、顧客との折衝を任せられるか、チームの数字を持てるか。

こうした問いは、キャリアの節目でよく投げかけられるものです。いずれも重要な役割ですが、これらの観点だけで評価や成長が語られると、技術領域に軸足を置いてきた人ほど、自分の進む方向に迷いを感じやすくなります。

クラウドの設計や運用を深く理解し、障害時に現場が何を確認すべきかを整理できる人。ERPの業務知識とシステムの両方を理解し、利用部門と開発側の間で論点をほどける人。データや生成AIの仕事で、精度だけでなく、使う人の業務や判断まで考えられる人。

こうした専門性は、経験年数を重ねるだけで身につくものではありません。案件の中で難しい場面に向き合い、調べ、試し、失敗し、次に同じ状況が起きたときに判断できるようになる。その積み重ねでつくられます。

それでも、役職に就かなければ評価されないように見えるなら、専門性を深めることが会社の中でどこにつながるのかが分かりにくくなります。

管理職を目指す人を増やすことと、専門性を持つ人が活躍できることは、どちらか一方を選ぶ話ではありません。

チームを率いる人が必要です。難しい技術判断を担う人も必要です。顧客の課題を見つけ、案件や事業の形にする人も必要です。情報が散らばる現場で、関係者の認識をそろえ、仕事が止まらないようにする人も必要です。

会社が求める役割は、一つではありません。

評価するのは、結果だけではない

新しい評価制度では、成果だけでなく、努力や学習の過程も見ます。

ここでいう過程は、忙しそうにしていたことや、資格を取ったことだけを指しません。

たとえば、担当領域で起きた問題をそのまま流さず、原因を調べ、次回の確認方法まで残したか。顧客から受けた指摘を、自分の担当だけの話で終わらせず、チームで再発を防ぐための材料に変えたか。新しい技術を学び、実際の案件でどこまで使えるかを試したか。

成果が出るまでには、表に見えにくい時間があります。

未経験の領域に入った人が、最初は会議の内容を理解できず、用語を一つずつ調べるところから始める。運用を担当していた人が、業務の背景を知るために利用部門へ話を聞く。データ分析に関心を持つ人が、仕事の外で基礎を学び、案件で任せられる範囲を少しずつ増やす。

その過程を見ず、結果だけで評価すれば、すでに経験を持つ人だけが前に進みやすくなります。

一方で、学習しているだけで役割が広がるわけでもありません。何を学び、どの仕事で試し、顧客やチームにどんな変化をつくれたかまで見なければ、評価は実態から離れていきます。

制度を改定したのは、この両方を扱うためです。

今できていることだけで判断するのではなく、次にどの役割を担えるようになろうとしているか。そのために、どんな学習や行動を重ねているか。そして、積み上げた力が顧客やチームの仕事にどうつながっているかを見る。


4つのコースは、役職の序列ではない

キャリアコースは、希望する将来像に沿って、次にどんな役割を担うかを考えるためのロードマップです。

「どのコースが上か」を決めるためのものではありません。

管理職コース

管理職は、チーム運営、人材育成、案件のリードを担います。

メンバーの相談を受けるだけではなく、顧客との関係、案件の状況、育成の進み具合、チームの働き方を見ながら、誰に何を任せるかを決める役割です。

顧客の要望が変わったとき、現場に無理をさせずにどう対応するか。経験の浅い社員がつまずいたとき、本人だけの問題にせず、チームで支えられる状態をどうつくるか。案件が忙しい時期でも、次の人材を育てる時間をどう確保するか。

管理職には、技術力や業務知識に加えて、複数の人と仕事を動かす力が求められます。

スペシャリストコース

スペシャリストは、クラウド、アプリケーション、データ・AI、ERP、PMOなどの専門性を深め、難しい局面で判断を担う役割です。

技術に詳しいだけでは足りません。

顧客の業務や運用を理解し、その技術をどこで使うべきか、どこでは使わない方がよいかを考える必要があります。ERPであれば、画面や設定だけでなく、業務の例外、利用部門の判断、周辺システムとの接続まで見なければ、現場で使える状態にはなりません。

データや生成AIでも同じです。モデルやツールの知識だけでなく、誰が確認し、どの判断に使い、間違えたときにどう止めるかまで考えられる人が必要になります。

専門性を深めることは、一人で仕事を完結させることではありません。難しい問題に向き合い、その知見をチームや顧客に渡せる形にしていくことまで含まれます。

ビジネス開発コース

ビジネス開発は、顧客の課題を捉え、案件や事業の形にする役割です。

顧客から「AIを使いたい」「システムを見直したい」と相談を受けたとき、言葉だけを受け取って提案書にする仕事ではありません。何に困っているのか、今のやり方のどこで時間や判断が止まっているのか、誰が使い、誰が費用を負担し、導入後に誰が運用するのかを聞き取る必要があります。

技術者の経験を、顧客の課題に合う支援へ変える。既存の案件で得た知見から、次に求められる仕事を考える。社内の専門家や外部パートナーと協力し、実現できる形にする。

顧客との会話を、単なる受注のための会話で終わらせず、次の価値へつなげる役割です。

ジェネラリストコース

ジェネラリストは、複数の領域をまたぎ、調整や企画を通じて全体を前へ進める役割です。

たとえば、システムの改修を進めるとき、技術者、利用部門、ベンダー、運用担当では、それぞれ見ているものが違います。技術的には正しい対応でも、利用者の業務の流れに合わなければ定着しません。顧客の要望をすべて受け入れれば、納期や品質が崩れることもあります。

誰か一人が専門知識だけで答えを出すのではなく、必要な情報を集め、論点を整理し、関係者が判断できる状態をつくる。その仕事を担う人が必要です。

ジェネラリストは、何でも浅く知っている人ではありません。複数の仕事をつなぐために、どこまで自分で理解し、どの段階で専門家へ相談し、誰と何を決めるかを考えられる人です。

コースは、希望だけで決まるものではない

キャリアコースは、希望する将来像に沿って選ぶものです。

ただ、「スペシャリストになりたい」「管理職を目指したい」と言えば、その時点で決まるものではありません。本人がどの仕事に手応えを感じているか、今どこまでの役割を担っているか、次に何を経験する必要があるかを、上司や会社と照らして考えます。

希望理由を書くことにも意味があります。

役職名や職種名を選ぶためではなく、自分がどんな場面で力を発揮したいのかを言葉にするためです。顧客との会話から課題を見つける仕事をしたいのか。技術的に難しい問題を解けるようになりたいのか。後輩が成長する過程に関わりたいのか。部門をまたぐ仕事を整理することに面白さを感じるのか。

その理由が見えれば、次に任せる仕事も変わります。

一方で、希望と現状の間に距離があることもあります。その場合は、希望を取り下げるのではなく、何を経験すれば近づけるかを考えます。

顧客との折衝経験が必要なのか。小さな案件をリードする経験が必要なのか。専門領域での実績を増やす必要があるのか。周囲の仕事を整理し、再現できる形に残す経験が必要なのか。

キャリアコースは、将来を固定するための箱ではありません。今の仕事と、次に担いたい役割の間にある距離を見つけるためのものです。

子育てや生活の変化があっても、道を一つにしない

管理職以外の道を示すことは、子育てをしている社員だけのためではありません。

専門性を深めたい人にも、顧客との会話から仕事をつくりたい人にも、複数の仕事をつなぐことに力を発揮する人にも必要です。

ただ、働き方を見直す時期がある人にとっては、なおさら意味を持ちます。

生活の状況が変わると、以前と同じ時間の使い方ができなくなることがあります。そのとき、「次へ進むには管理職になり、今まで以上に多くの仕事を抱えなければならない」と見えていると、キャリアを考えること自体が重くなります。

管理職は、時間の長さだけで決まる役割ではありません。チームや顧客に対して持つ責任があり、目指す人には必要な経験があります。

一方で、管理職を選ばないからといって、成長の機会がなくなるわけではありません。

専門性を深め、難しい判断を担う。顧客の課題を掘り下げ、案件をつくる。複数の関係者をつなぎ、仕事が止まらない状態をつくる。

どの役割も、顧客と会社にとって必要です。

キャリアを考えるとき、先に「どの役職になれるか」を決めるのではなく、自分が次にどんな仕事を担えるようになりたいかを考える。そのうえで、今の生活や仕事の状況も踏まえながら、必要な経験を積んでいく。

ディーシステムが4つのキャリアコースを設けたのは、そのためです。

役職より先に、担いたい役割を考える

キャリアが積めているかどうかは、肩書きだけでは決まりません。

以前より難しい問題を任されるようになったか。顧客やチームから相談される範囲が広がったか。一人でできる仕事が増えただけでなく、周囲が仕事を進めやすくなる関わり方ができているか。

管理職を目指す人には、チームを率いる経験が必要になります。

スペシャリストを目指す人には、専門知識を深め、難しい場面で判断できる経験が必要になります。

ビジネス開発を目指す人には、顧客の困りごとを聞き取り、社内外の力を集めて形にする経験が必要になります。

ジェネラリストを目指す人には、関係者の間で情報を整理し、全体を前に進める経験が必要になります。

どのコースにも、積み上げるべき仕事があります。

「管理職にならないなら、キャリアは止まる」と考える前に、自分が担いたい役割を一度考えてみてください。

数年後、どんな相談を受ける人になっていたいのか。どんな場面で頼られたいのか。自分が身につけたことを、顧客やチームへどう返したいのか。

その答えは、役職名からではなく、日々の仕事の中にあるはずです。


さらに詳しく知りたい方へ

案件や働き方を選ぶ前に、任される仕事を増やすことがなぜ市場価値につながるのかを考えたい方へ。

運用、要件定義、設計構築といった仕事を単純な上下で捉えず、自分が担う役割を考えたい方へ。