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部分最適のまま止まっていた事務所の自動化を、Claude Code で全体最適に進めようとしたら、150件中23件しか整っていなかった話


はじめに——気がついたら2週間経っていた

東京で税理士事務所を運営しています。スタッフ数名の小さな事務所です。

気がつくと、前回 note を書いてから2週間以上が経っていました。確定申告期が明けて、4月後半に立て続けに記事を出し、ゴールデンウィーク明けに「チャットでアプリを作っていたら、いつの間にかClaude Codeを使うようになった」を出したあと、ようやく落ち着いて これまで手を付けられていなかった領域に着手していた 2週間でした。

これまで「やりたいけど手が出せない」と分かっていた領域。具体的には、メール・チャット・電話・SNS など、顧客とのやりとりを一元的に管理する仕組み——いわゆる「やりとり統合システム」——の整備です。

着手してみた結果、これまで自分が「だいたい自動化できている」と思っていた部分が、実は150件の顧問先のうち23件(15%)しか整っていなかった ことが、数字で見えてきました。

今日はその発見の話と、これからどうしようとしているかの途中報告です。


「やりたい」と「やれない」の間で止まっていた

AIを業務に使い始めたのは、今年の初めです。最初は Gemini で、Google Apps Script(GAS)の自動化スクリプトを書いてもらうところから始まりました。

その時点で、事務所のやりとり統合システムは まだ完成していない と感じていました。Gmail・Slack・Chatwork・LINE WORKS・電話の伝言・SNSのDM——どれもバラバラに飛んできて、どの顧客のどの案件かを頭の中で名寄せしながら対応する日々。仕組み化したい、というアイデアはずっとありました。

ただ、手が出せませんでした。

一つひとつのやりとり手段をシステムにつなぐためには、手動で運用しなければいけない部分 が多くありました。新しい顧客が増えるたびに、Slack に専用チャンネルを作り、kintone に登録し、Gmail にフィルターを設定し、リストを更新する。この一連の作業を毎回手作業でやらないとと思っていましたが、なかなか手が付きませんでした。

「やりたい」と「やれない」のあいだで、ずっと止まっていました。Gemini で部分的なツールは作れました。メール仕分けの自動化、Slack Bot による電子申告依頼の管理、フィルター管理の半自動化など。それぞれは便利でした。

ただ、それらは 「部分最適」のままで、全体としてつながっていなかった

新規顧客が登録されたら自動でチャンネルが作られ、Gmail に振り分けフィルターが入り、リストが更新され、関係者に通知される——そういう「やりとり統合」の全体最適まで持っていくには、Gemini の対話だけでは設計の見通しが追いつかなかったのです。


Claude Code で「全体最適」の可能性が見えた

転機は4月後半、Claude Code に移行してからでした。

それまで Claude のチャット画面でコードを書いてもらっていた頃は、1ファイルずつコードを受け渡すスタイルで、プロジェクト全体を見渡してもらう ということができませんでした。Slack Bot の app.py と、別フォルダにある Gmail 関連の GAS が、似たような処理を別々に書いていても、自分ではそれに気付けない状態でした。

Claude Code はフォルダごとまとめて把握できます。試しに、これまで Gemini 時代から書きためてきた GAS のコード群を全部見せたら、Claude Code が「ここ、共通ライブラリに切り出せますね」「この2つのスクリプト、同じことをやっています」と把握することができたのです。

そのとき、はっと気付きました。

「Gemini で書いたコードも、Claude で書いたコードも、Claude Code に全部見てもらって整理してもらえば、部分最適のまま放置してきたツール群を、全体最適に組み直せる

これまで「手が出せなかった」やりとり統合システムの整備に、ようやくゴールまでの目途が立った瞬間でした。

そこから2週間、全体的に自動化を進める ことに切り替えました。共通ライブラリへの切り出し、重複コードの統廃合、設計の一貫性を保つリファクタ。Claude Code に手伝ってもらいながら、一気に作業を進めました。

「これで、やっとやりとり統合の全体最適に近づける」——そう思っていました。


でも、整合性監査をやってみたら……

整理を進めるうちに、一つ気になることが出てきました。

事務所では、顧客情報を以下の4つの場所で管理しています。

  1. Kintone の顧客マスタ(契約中・解約済みなどのステータス管理)

  2. スプレッドシートの運用リスト(メール振分・自動処理のキー)

  3. Slack の顧客チャンネル一覧(コミュニケーションの場)

  4. Gmail のフィルター設定(自動分類)

これら4つが「揃って初めて」自動化が機能するように設計してきたのですが、4者を 突き合わせて整合性を測ったことは、実は一度もありませんでした

そこで Claude Code に「4者を突合する監査ツールを作ってほしい」と頼んで、`CustomerLinkageAudit.js` という GAS を書いてもらいました。

実行ボタンを押して、数十秒。


衝撃の数字

契約中顧客150件のうち、

  • 「Kintone・リスト・Slackチャンネル・Gmail設定」のフル整備がされているのは 23件(15%)のみ

  • Slackチャンネルとリストはあるが Gmail 自動振分が未整備 = 40件(27%)

  • Slackチャンネル自体が作られていない = 87件(58%)

つまり、約6割の顧客に対しては、自動化どころか専用チャンネルすら作られていなかった ということです。

実際にフル運用できていた顧客は、150件中23件、つまり 6.5件に1件しかありませんでした

これまで「部分最適」と自覚していた状態の正体が、数字で輪郭をもって現れた瞬間でした。


なぜ「つぎはぎ」が残っていたのか

数字を見たあと、改めて経緯を整理してみると、原因は明確でした。

原因1:自動化の範囲が、最初から「部分最適」だった

Gemini で最初のツールを作った当時、私は「新規顧客が登録されたら手動でチャンネルを作る」という限定的な要件で実装を頼みました。

まずはよくやり取りしている顧客のみを整理すればあとはやり取りがある都度手動で追加していけばいいと考えていたのです。

そのため、ある程度手動で追加したら、あとの顧客は、そのまま放置 されました。「どこかでまとめて追加しよう」と思っていたのですが、繁忙期に入ってそのまま追加されないままでした。

ツールが増えても、それぞれのツールが同じ部分最適の発想で作られていたので、組み合わせても全体最適にはなりませんでした。

原因2:手動で補っていた部分が、ツール導入後も残っていた

新規契約時の流れとしては「Kintone に登録 → 自動でチャンネルが作られ、リスト・Gmail フィルターも揃う」を理想にしていました。

ところが実際には、自動化が及ばない部分(リストへの追加、Gmail フィルターの調整、特殊なケースのチャンネル名修正など)は、スタッフが手動で補ってきました。

手動で補っている部分は、当然、忘れる日もあれば、抜ける日もあります。自動化ツールがあっても、運用フローの中に「手動工程」が残っているかぎり、整合性は壊れ続けます。

原因3:監査の仕組みがなかった

そして決定打。「自動化が動いているか」を測る仕組みがなかったので、誰も実態を把握できていませんでした。

私自身、自分の事務所の自動化の進捗を 体感 で評価していました。「だいたい進んでいる」「Slack で顧客管理している」と、感覚で感じていました。

監査ツールができて初めて、感覚と現実のギャップが一気に見えました。


これからの方針——全体最適への移行は「継続のメンテ」

衝撃の数字を見たあと、私が決めたのは「一気には直さない」ということでした。

87件のチャンネル未作成顧客を、今日明日でまとめて作ることはできます。Claudeからも「残りのチャンネルを作成しましょう」と何度も提案されました。でも、それでは同じことの繰り返しになります。一度立ち止まって現状を確認し、遠回りのようでも確実に全体を構築する。これが重要でした。

毎月、`CustomerLinkageAudit.js` を実行して、4ツールの不整合を Slack に通知する。スタッフと一緒に「今月の整合性スコアは何%か」を確認する。新規契約時のチェックリストを Slack Bot(NT-1 で書いた etax-bot)の機能として追加して、登録漏れを防ぐ。

地味な作業です。バズらない作業です。でも、これをやり続けないと、結局「部分最適のつぎはぎ」が積み重なるだけです。

発想が一つ変わりました。

「全体最適化は『一度の作業』ではなく『継続のメンテ』である」

完成形を目指して走ると、その後に動かなくなる。完成と思った瞬間が、一番危ない。むしろ「ここから先は、定期的に手入れをし続ける運用」だと位置付けるほうが現実的だと、今は思っています。

Claude Code に出会ったことで、「全体を一気に見渡せる相手がいる」 という状況には変わりました。これは大きな変化です。でも、整合性が崩れていないかを 継続的に測る ことまでセットにしないと、また同じ「部分最適のつぎはぎ」が積み上がります。


まだ途中の話です

ここまで書いてきましたが、お伝えしておきたいことがあります。

この記事を書いている時点でも、整備はまだ途中です。

87件のチャンネル未作成顧客は、まだ手をつけていません。月次監査の運用も、仕組みに組み込めていません。Slack Bot のチェックリスト機能も設計段階です。

過去の note で「Slack Bot で伝達ミスをゼロにした」「GAS1本で請求書見逃しをなくした」と勢いよく書いてきましたが、その裏では、こうして整備が中途半端なまま放置されていた領域もありました。成功談として書いた部分は本当ですが、その全体像はもっと地道で、ずっと未完成です。

同じように、自動化を進めている方も、もしかしたら「だいたいできている」と感じている領域の中に、部分最適のまま止まっている ものがあるかもしれません。

一度、整合性監査をやってみてください。Kintone でもスプレッドシートでも、自社のマスタを軸に「他のシステムに同じデータが揃っているか」を突合するだけです。

数字で測った瞬間、感覚では見えなかったものが見えてきます。

そして、衝撃の数字に出会ったら、一気に直そうとしないでください。少しずつメンテしながら、月次で監査を回すリズムを作るほうが、結局は長く効きます。

私もまだ途中です。次に書くときは、「150件中23件」が「150件中○件」まで進んでいるはずです。その経過報告も、いずれこの note に書きます。

「やりたい」と「やれない」のあいだで止まっていた数年があったからこそ、いま動き出した手応えを、地に足のついた歩幅で進めていきたいと思っています。


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