あの夏にあったはずの味がない?ファンタ・ゴールデンアップルは存在しなかった!? パラレルワールドに移動したのか?それとも記憶のミステリー?『フワッと、ふらっと、マンデラ・エフェクトの心理学』
『フワッと、ふらっと、マンデラ・エフェクトの心理学』
1. あの味を、もう一度・・。
先日、ふと子どもの頃を思い出してしまいました。

夏休みの午後、駄菓子屋の冷蔵庫から取り出した黄金色のファンタ。

ひんやりと手に伝わる瓶の感触、
甘くて爽やかなリンゴの香り。
そう、「ファンタ ゴールデンアップル」です。

懐かしさに駆られてコンビニをはしごしましたが、どこにも見当たりません。
仕方なくファンタ グレープを手に取りましたが、

あの黄金色の炭酸がどうしても忘れられません。

ところが後日、日本コカ・コーラの公式発表を知って驚きました。
「昭和の時代に『ファンタ ゴールデンアップル』を販売した記録はありません」
えっ? あれほど鮮明に覚えているのに?
私だけではありません。
ネット上には「毎日飲んでいた」「下校時によく買った」と断言する人が続出しています。

しかし実物のパッケージ写真や広告といった物的証拠は一切見つかりません。
2. 公式が“悪ノリ(?)”した事件
さらに面白いのは、
ネットでこの「あった/なかった論争」が、
盛り上がった数年後の2002年、
コカ・コーラ社がまさかの行動に出たことです。
なんと、「存在しない」と自ら公表したはずのゴールデンアップルを、限定フレーバーとして新発売したのです。

これは単なるマーケティングか、それともネット上の都市伝説に公式が便乗した悪ノリだったのか。
いずれにしても、私たちの「記憶」にまつわる興味深い実験のようにも見えます。

3. 記憶は、意外とあやふや
認知心理学には「過誤記憶(偽りの記憶)」という現象があります。
その有名な例が「ショッピングモールの迷子」実験です。

被験者に、家族から聞いた本当の思い出3つと、
まったくの作り話1つ(=ショッピングモールで迷子になった経験)を混ぜて提示します。

すると約25%の人が、
その作り話を本当にあったことのように語り、
しかも細かい描写や感情まで加えて、
臨場感をもって説明しました。

つまり、人は他人の話や自分の思い込みによって、
存在しない出来事を「本当の記憶」として作り上げることがあるのです。

この理屈でいえば、ゴールデンアップルの記憶も、
類似した味(ファンタ・アップル)や広告、
パッケージデザイン(実際に存在した「ファンタ・ゴールデングレープ」)など複数の要素が、
組み合わさって生まれた幻なのかもしれません。

4. マンデラ・エフェクトという現象
こうした集団的な多人数の記憶違いには、
俗に「マンデラ・エフェクト(Mandela Effect;マンデラ効果)」と呼ばれる、
都市伝説上の名前が付いています。
これは、南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領が、
1980年代に獄中死したと、
多くの人が思い込んでいたことに由来します(実際には2013年まで存命でした)。
代表的なマンデラエフェクト事例(日本・海外)


ベートーベンの肖像画(AI生成画像)
音楽室に飾ってあったものは
このようなものと記憶する人が多いといいます

ジョセフ・カール・シュティーラー
「ミサ・ソレムニスを作曲中の
ベートーベンの肖像画」 (1820)
表情が先のものよりマイルドで
羽ペンではなく鉛筆を手にしている

このようだったと記憶する人がいる
AIで生成した無表情のモナリザ


これぐらいの長さだったと記憶する人がいる
(AI生成画像)

(AI生成画像)
5. パラレルワールド説と量子力学
心理学的には、マンデラ・エフェクトは過誤記憶等によって説明を試みることになります。
しかし、一部の人は別の可能性を考えています。
それが量子力学の「多世界解釈」に基づくパラレルワールド説です。

6. ダブルスリット実験とは?
多世界解釈を理解するうえで有名な実験が、ダブルスリット実験です。
これは光や電子などの微小粒子を二つの細いスリットに通すと、
干渉縞(波の重なり合いによる明暗の縞模様)ができるという実験です。

粒子が波のようにふるまうことを示していますが、
驚くのは、粒子を大量にではなく、
粒子を1個ずつ通しても、同じ干渉縞が現れることです。
つまり粒子は「同時に複数の場所を通過している」かのような振る舞いをするのです。
さらに面白いのは、
本当に粒子が波のようになり、
「同時に複数の場所を通過している」のかを確かめるため、
観測装置で、どのスリットを通ったかを確認すると、
「本当の姿は見せるわけにはいかない」との意思があるかのごとく、
干渉縞が消え、
粒子は「波」ではなく「粒子」として振る舞います。

観測の有無で結果が変わるこの現象は、
量子力学の不思議の代表例です。
7. 量子力学の解釈:コペンハーゲン解釈、パイロット波解釈、多世界解釈
この奇妙な現象に対し、科学者たちはさまざまな解釈を提唱しました。
① コペンハーゲン解釈(通説とされる考え方)
観測した瞬間に「波の状態が一つの結果に収縮」すると考えます。
ノーベル物理学賞を受賞した実験(アラン・アスペ等の実験)で、
アインシュタインらが主張していた、
隠れた変数理論が否定され、
局所実在性の破れが確認されましたが、
コペンハーゲン解釈は、
その局所性(ある場所で行われた行為や起こった現象により、離れた場所の結果が直ちに変わることは無いというもの)
と実在性のうち、
実在性が破れているとし、
驚くことに、観測前に物質は実在しない、存在しないと解し、
観測者の行為が、現実を確定させるという立場です。
(参考動画)
② パイロット波解釈(ボーム解釈;少数説)
粒子は常に確定した位置を持ち、
その運動は「見えない波(パイロット波)」に導かれるとします。
物質の実在性を放棄せずに、局所性のみが破れているとし、
観測によって結果が変わるわけではなく、この世界には私たちには関知できない決定論的な働きがあると考えます。
ただ、パイロット波の実在性を確かめるすべが今のところなく、
またこの解釈では複雑な計算を伴うため、支持する人が少ないのが現状です。
③多世界解釈(量子コンピュータ提唱者などが採用した有力説)
観測の瞬間に宇宙は複数の並行世界に分岐し、
すべての可能性が現実として存在すると考えます。
私たちはその中の一つの世界線を経験しているだけ、という立場です。
多世界解釈も実在性を放棄しない立場です。
ただ分岐した、私たちが経験しない、
別の世界の存在について確認するすべがないため、これも実証のしようがない説ではあります。
(多世界解釈にヒントを得て提唱された量子コンピュータの実際の稼働が、多世界解釈の正しさの証明になるという論者もいますが、量子コンピュータの原理については、コペンハーゲン解釈でも説明ができるとする論者もいます)
こうした量子力学の背景を踏まえると、
マンデラ・エフェクトは、
多世界解釈に関連している可能性があると言われています。
つまり、ある世界線では「ファンタ ゴールデンアップル」が存在し、別の世界線では存在しない。

この立場によれば、私たちが体験する記憶のズレは、
実はこの世界線の移動や干渉の痕跡かもしれないのです。
8. もしあなたがマンデラエフェクトを体験したら確認できる3つの方法
① 当時の物的証拠を探す
写真、ビデオ、広告、商品の現物などを調べ、第三者の記録と突き合わせてみましょう。
② 複数の世代に聞く
同世代だけでなく、上の世代や下の世代にも記憶を聞くと、傾向や違いが見えてきます。
③ 一次情報源を確認する
企業のアーカイブや図書館の新聞縮刷版、学術資料など、信頼性の高い記録を参照しましょう。
9. 記憶は小さなミステリー
ファンタ ゴールデンアップルの真相は、今も謎のままです。
マンデラ・エフェクトは、心理学的に説明できる部分もあれば、説明しきれない部分も残ります。
けれど、この不思議をエンタテインメントのように楽しむことこそが、マンデラ・エフェクトの魅力だと思います。
次に懐かしい味を探すとき、手に取ったそれは、本当に昔からあったものでしょうか。

それとも、あなたが別の世界から持ってきた、ひとかけらの記憶なのでしょうか。
(今回の内容をより掘り下げて楽しめる、本稿に関連する以下のnoteもよろしければ是非ご覧くださいませ)
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