AIチップの"作る側"を握る5銘柄|KLACは高粗利で守りに強く、LRCXは売上成長で攻めを担う【米国株 日本語解説】
この記事は、SEC EDGAR(米国版の有価証券報告書データベース)に提出された10-K(年次報告書)および10-Q(四半期報告書)を日本語訳・分析したものをベースに、半導体製造装置セクターの全体像を整理したまとめ記事です。
NVIDIAのGPUが「頭脳」として注目を集め、光トランシーバーが「神経」として脚光を浴びています。しかし、その頭脳も神経も、半導体製造装置がなければこの世に存在しません。WFE(ウェーハ製造装置)市場は、SEMIの2025年末予測で2025年に1,157億ドル、2026年に1,260億ドル、2027年には1,352億ドル(約21.5兆円)へ3年連続で拡大が見込まれています。半導体装置市場全体では2027年に1,560億ドル規模です。成長を牽引するのはAI向け先端ロジック(2nm GAA(Gate-All-Around=ゲート全周囲型。従来のFinFETに代わる次世代トランジスタ構造))とHBM(高帯域幅メモリ)の2本柱。AIチップの「作る側」を握る5銘柄を、10-K/10-Qの財務データから横断比較します。
今回のまとめ(3行)
・本命はKLAC:圧倒的な高利益率×純利益+39%、先端ノードが微細化するほど検査需要が増える構造的な強さ
・安定本線はAMAT / LRCX:WFE市場の中核を握る大型株、サービス売上+15〜18%のストック型収益が安定基盤(※決算期間が異なるため成長率の直接比較には注意)
・反転狙いはFORM / UCTT:HBMと装置回復のレバレッジ枠、利益率改善の確認が買いの前提条件
カテゴリ1:成膜・エッチング装置(2銘柄)
半導体チップは、シリコンウェーハの上に薄い膜を積み重ね(成膜)、不要な部分を削り取る(エッチング)工程を何百回も繰り返して作られます。この「塗って削る」の両方で世界トップクラスの地位を持つのがこのカテゴリの2社です。次世代ノードへの移行で工程数が増えるほど、この2社の装置がより多く必要になります。
アプライドマテリアルズ / Applied Materials(AMAT)── 半導体装置の売上世界一
四半期売上70.1億ドル、粗利率49%を維持する装置業界の巨人
半導体製造装置の世界最大手です。成膜、エッチング、CMP(化学機械研磨=ウェーハ表面を平坦化する工程)、イオン注入など幅広い工程をカバーし、ファウンドリ・ロジックからメモリまで全方位に展開しています。FY2026 Q1(2026年1月期)の四半期売上は70.1億ドル(約1.1兆円)。半導体システムセグメントはトレーリングエッジ(成熟ノード)需要の減少で-8%となりましたが、サービス部門のAGS(アプライド・グローバル・サービス)が+15%成長で下支えしました。
・四半期売上:70.1億ドル(前年同期比 -2%)
・粗利益率:49.0%(+0.2pt改善)
・現金・投資残高:134.8億ドル(約2.1兆円)
・PER:約36倍(KLACやLRCXより低い水準)、時価総額:約2,820億ドル
DRAM向け売上比率が27%→34%に上昇し、HBM投資の恩恵を受けている一方、Foundry/Logic比率は69%→62%に低下。輸出規制コンプライアンス問題で2.53億ドルの和解金を計上した点が最大の一時費用です。中国向け売上は全体の30%を占め、規制リスクが継続しています。
筆者判断:買い(条件付き)── Q2ガイダンス中央値76.5億ドルで成長加速を予告。PER約36倍はセクター内では割安寄り。粗利率49%・現金135億ドルの鉄壁財務に加え、AGSのストック型収益が安定基盤を提供。
条件は以下の3点:
(1)中国比率が30%前後で下げ止まるか
(2)AGS成長が2桁維持できるか
(3)DRAM/HBM比率上昇が継続するか
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ラムリサーチ / Lam Research(LRCX)── エッチング装置で世界首位
半期売上106.7億ドル(+25%)、ファウンドリ比率が38%→60%に急騰
エッチング(微細な回路パターンを削り出す工程)、成膜、洗浄の3分野で世界トップクラスの地位を持つ装置メーカーです。FY2026上半期(2025年12月期まで)の売上は106.7億ドル(約1.7兆円、前年同期比+25%)。粗利率は50.0%(+2.3pt)と改善し、営業レバレッジが効いています。
・半期売上:106.7億ドル(前年同期比 +25%)
・粗利益率:50.0%(+2.3pt改善)
・営業キャッシュフロー(半期):32.6億ドル
・PER:約48倍、時価総額:約2,730億ドル
ファウンドリ向け売上比率が38%→60%に急騰し、TSMCなど先端ノード投資の恩恵を最も直接的に受けています。一方、繰延売上が前四半期比-18.8%と急落しており、顧客の前払金が減少。次四半期の出荷ペースに影響する可能性があります(ただし日本顧客の検収タイミングの影響もあり、必ずしも需要減速を意味しない点に注意)。中国向け売上比率は39%と5銘柄中で最も高い点が最大のリスクです。
筆者判断:買い── 半期売上+25%・粗利率50%・営業CF32.6億ドルと、成長・収益性・キャッシュ創出の3拍子が揃う。エッチング分野のシェア約45%(Morningstar推計)は代替が効かないポジション。PER約48倍は成長率を考慮すれば許容範囲。先端ノード量産が本格化する2026年後半以降の需要継続を見込む。
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カテゴリ2:プロセス制御・検査装置(1銘柄)
カテゴリ1が「塗って削る」工程なら、このカテゴリは「ちゃんとできているか検査する」工程です。次世代ノードでは回路の線幅が原子数個分まで細くなり、わずかな欠陥が歩留まり(良品率)を大きく左右します。検査・計測の精度が上がるほどチップメーカーの利益が増えるため、プロセス制御装置への投資は「コスト」ではなく「利益を生む投資」として扱われます。
KLAコーポレーション / KLA Corporation(KLAC)── 歩留まりを握る中核プレイヤー
純利益+39%、パターニング売上+31%で最先端ノード投資の恩恵が最も鮮明
半導体製造プロセスにおける欠陥検出・計測の世界最大手です。ウェーハ検査、パターニング(回路パターンの精度管理)、サービスの3本柱で構成。Q2 FY2026の四半期売上は33.0億ドル(約5,247億円、前年同期比+7%)で、純利益は11.5億ドル(+39%)と大幅増益。パターニング製品の売上が+31%と突出して伸びており、先端ノードへの投資拡大が直接的に反映されています。
・四半期売上:33.0億ドル(前年同期比 +7%)
・粗利益率:61.4%(+1.1pt改善)
・純利益:11.5億ドル(前年同期比 +39%)
・PER:約43倍(フォワードPER約35倍)、PEG:約2.4倍、時価総額:約1,920億ドル
粗利率61.4%は5銘柄中で圧倒的に高く、プロセス制御装置の高い参入障壁を示しています。サービス売上も+18%と好調で、設置済みツールベースの拡大がストック型収益を押し上げています。特殊半導体プロセス(-12%)とPCB検査(-6%)のサブセグメントは軟調ですが、主力の半導体プロセス制御が+9%で全体を牽引しています。
筆者判断:買い── 純利益+39%は5銘柄中で最も高い収益性。パターニング売上+31%が示すように、先端ノードが微細化するほどKLACの検査装置が「より多く必要になる」構造。PER約43倍はセクター内ではプレミアムが乗っているが、フォワードPER約35倍まで低下見通しで、事業構造は5銘柄中で最もディフェンシブ。ただし設備投資サイクルの逆風局面では他社同様に影響を受ける点は留意。
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カテゴリ3:半導体装置サプライチェーン(2銘柄)
カテゴリ1・2の大手装置メーカーが「完成品」を作るには、精密な検査用プローブカードや超高純度のサブシステムが不可欠です。このカテゴリの2社は、装置メーカーの「部品・検査治具」を供給するサプライチェーン銘柄です。大手の下請け的なポジションゆえに不況時のダメージが大きいが、好況時のレバレッジも大きい── 時価総額が小さく値動きが激しい「シクリカル回復ベット」銘柄です。
フォームファクター / FormFactor(FORM)── HBM検査で成長するプローブカード専業
DRAM/HBM向け売上+8.8%、韓国向け売上+29%でメモリ投資の直接受益者
半導体の電気的特性を検査するプローブカードの専業メーカーです。プローブカードとは、ウェーハ上のチップに微細な針(プローブ)を当てて動作を確認する検査治具のこと。Fiscal 2025の通期売上は7.85億ドル(約1,248億円、前年同期比+2.8%)。成長率は控えめですが、DRAM/HBM向けが+8.8%、韓国向けが+29%と、メモリ投資の恩恵が明確に表れています。
・通期売上:7.85億ドル(前年同期比 +2.8%)
・粗利益率:39.3%(-1.0pt低下)
・DRAM売上比率:31.6%(前年29.7%から上昇)
・PER:約120倍(TTM)。利益水準が低いため高PERだが、Q1 FY2026ガイダンスは前年比+14%で改善傾向
Foundry/Logic向けが-3.0%と軟調で、全体の成長を抑制しています。営業利益率は7.2%(前年8.5%から低下)と薄利構造。中国向け売上は-44%と大幅減少しており、輸出規制の影響が最も顕著に出ている銘柄です。一方、韓国(+29%)・台湾(+17%)・シンガポール(+63%)への地域シフトが進行中です。
筆者判断:見送り── 売上成長+2.8%は5銘柄中で最も控えめで、営業利益率7.2%への低下が示すように成長の勢いが鈍い。DRAM/HBM向け+8.8%は明るい材料だが、これがEPSや利益率の改善にいつ波及するかが鍵。利益率の反転確認後に評価引き上げを検討。
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ウルトラクリーン / Ultra Clean(UCTT)── 半導体装置の「部品屋」、反転狙い
売上20.5億ドルも営業赤字1.07億ドル、のれん減損1.51億ドルで転換期
半導体製造装置向けのサブシステム(ガス供給システム、化学薬品供給モジュール、精密ロボティクスなど)と超高純度洗浄サービスを提供する企業です。OEM(相手先ブランド製造=AMATやLRCXなどの大手装置メーカー)向けの部品供給が主力。Fiscal 2025の通期売上は20.5億ドル(約3,263億円、前年同期比-2.1%)。GAAP営業損失は1.07億ドルで、のれん減損1.51億ドル(流体ソリューション部門7,760万ドル+サービス部門7,350万ドル)が主因です。
・通期売上:20.5億ドル(前年同期比 -2.1%)
・粗利益率:15.7%(-1.3pt低下)
・現金残高:3.12億ドル
・PER:赤字のため算出不可
5銘柄中で唯一の営業赤字企業です。ただし、のれん減損を除いた実質的な営業赤字幅は限定的で、Non-GAAPベースでは黒字を維持しています。このタイプのサブシステム・部品サプライヤーは、元々の構造上「薄利多売(マージンが低い)」になりがちです。大手装置メーカーの増産時には部品需要が急増して業績がV字回復する一方、減産時には大手以上にダメージを受ける── まさにWFEサイクルのレバレッジ銘柄です。
筆者判断:見送り(回復確認後に買い転換)── 売上-2.1%・GAAP営業赤字・のれん減損1.51億ドルと、現状は投資タイミングではない。ただしNon-GAAP黒字は維持しており、現金3.12億ドルで当面の資金繰りに問題はない。次期四半期で売上成長率がプラスに転じたタイミングが買いの目安。
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5銘柄比較(一覧)

※比較期間の注記:AMATとKLACは直近四半期、LRCXは半期、FORM・UCTTは通期決算。期間が異なるため、成長率の直接比較には注意が必要です。
筆者の見解
強気シナリオ ── WFE市場が年率10%以上で拡大し、中国規制が現状維持の場合
AMAT・LRCXの売上は2桁成長が継続し、AGSやカスタマーサポートのストック型収益が利益率をさらに押し上げる。KLACはパターニング需要の加速で利益率がさらに上昇。FORMはHBM向けプローブカード需要の本格化で営業利益率が10%超に回復、UCTTもV字反転で黒字化。この場合、5銘柄すべてが「買い」。
基本シナリオ ── WFE市場が年率7〜9%成長、輸出規制は段階的に強化
AMAT・LRCX・KLACは堅調な成長を維持するが、中国売上の段階的縮小で成長率はやや鈍化。FORMはFoundry/Logic回復待ちで横ばい、UCTTは赤字幅の縮小にとどまる。この場合、AMAT・LRCX・KLACが「買い」、FORM・UCTTは「ウォッチリスト」。
弱気シナリオ ── ハイパースケーラーの設備投資減速+追加輸出規制の場合
WFE市場全体が2027年に調整局面入りし、AMAT・LRCXの中国売上が20〜30%減少。KLACはディフェンシブ性から影響限定的だが、PERの圧縮で株価は軟調。FORM・UCTTは成長回復が後ずれし、UCTTは追加減損リスク。この場合、KLACのみ「買い」、他は「見送り」。
今後の事業見通し
確度:高
・WFE市場は2027年に1,352億ドルへ拡大し、成膜・エッチング・検査装置の需要を構造的に押し上げる(SEMI 2025年末予測)
・先端ノードの量産開始に伴い、工程数の増加とプロセス制御の需要拡大が数年単位で持続
・装置販売は顧客の投資サイクルに左右されやすい一方、保守・部品交換・プロセス最適化支援は設置済みベースに連動するため売上変動を平準化しやすい。サービス売上は年率+15〜18%の安定成長が見込める
確度:中
・HBM向け装置需要はAI投資サイクルに依存。ハイパースケーラーの設備投資が減速すればDRAM装置投資も鈍化する可能性
・中国WFE市場は2026年以降に縮小が予測されている(SEMI)。ただし成熟ノード向けと先端ノード向けでは規制耐性が異なり、先端ノード集中のLRCXはファウンドリ顧客の地域シフトで一定の代替需要が期待できる
確度:低
・米中輸出規制のさらなる強化リスク。AMATは2.53億ドルの和解金を計上済みだが、BIS Affiliates Ruleなど追加規制の可能性は排除できない
・UCTTの業績回復はWFE市場全体の回復タイミングに完全に依存。回復が遅れれば追加減損リスクも
まとめ

5銘柄はいずれもAIチップの「作る側」を担い、WFE市場拡大の中核プレイヤーです。
成膜・エッチングは市場の「ど真ん中」で安定感と規模を兼ね備え、プロセス制御は高収益構造で先端ノード微細化の直接受益者、サプライチェーンはWFE回復局面でのV字反転に賭ける高ボラティリティ銘柄── 自分のリスク許容度でカテゴリを選べるのが、このセクターの面白さです。
筆者が考える組み合わせ:AMAT・LRCX・KLACをコア銘柄として検討しつつ、FORMとUCTTはウォッチリストに入れて利益率改善のシグナルを待つ。
「NVIDIAと同じAI投資テーマに乗りつつ、GPU単体ではなく"製造インフラ"に分散して張れるのが、この5社の魅力だ」── それが5社の10-K/10-Qから読み取れる結論です。
このセクターの見るべきKPI
半導体装置セクターを継続的にウォッチする際、チェックすべき指標は以下の5つです。
中国売上比率
輸出規制の影響を最も直接的に反映する指標。30%を下回ると規制リスクが低減
サービス売上比率
設置済みツールベースに連動するストック型収益。高いほど業績が安定
ファウンドリ/ロジック vs DRAM比率
先端ノード投資(ファウンドリ)とAIメモリ投資(DRAM/HBM)のバランスを示す
繰延売上(Deferred Revenue)
顧客の前払金を反映し、次四半期以降の出荷見通しの先行指標
粗利率の方向性
製品ミックス・価格交渉力・為替の総合指標。四半期ごとの変動方向をチェック
※本記事は投資助言を目的としたものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。 ※業績数値は各社10-K/10-Qおよび決算リリースに基づきます。株価指標(PER・時価総額)はStockAnalysis.com等の2026年2〜3月時点データを参照しています。いずれもTTM(直近12ヶ月)ベースです。 ※円換算は1ドル=159円(2026年3月時点)で計算しています。 ※WFE市場規模予測:SEMI "Year-End Total Semiconductor Equipment Forecast" (December 2025)
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