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弱い自分でいる無意識の利得が成功を邪魔する


変わりたいのに、動けない


「本当は変わりたいんです。でも、どうしても動けないんです」

そう語った彼女の言葉に、私はかつての自分を重ねていました。
新しいことに挑戦したい。今の生活を抜け出したい。だけど怖くて、一歩が踏み出せない。

それは、意志が弱いからでも、甘えているからでもありません。

人は、意識では変わりたいと願っていながらも、無意識のレベルでは“現状を守ること”を選ぶことがあります。
それは、その現状が「最善」ではないとしても、自分を“守ってきた”環境だからです。

本章では、そんな「変わりたいのに動けない」という葛藤の背景にある“無意識の利得”という仕組みについて、ひも解いていきます。


弱い自分でい続ける“無意識の利得”


弱さとは、必ずしも「悪」ではありません。
時に、それは生き延びるために無意識が選んだ最適解です。

たとえば、
「助けてもらえる」
「期待されないから傷つかない」
「言い訳ができる」
「失敗したとき、誰かのせいにできる」

そんな“小さな守り”の積み重ねが、「弱い自分でいたほうが得だ」と無意識に判断させているのです。

本人は「変わりたい」と願っていても、無意識は「今のままの方が安全だ」と感じている。
だから、前に進もうとするたびに、足を引っ張る何かが働いてしまうのです。

この「無意識の利得」は、頭で理解するだけではなかなか手放せません。
それは「思考」ではなく「無意識レベルの防衛」だからです。


「怖い」の正体は、“関係性の変化”への恐れ


ある方との対話の中で、その方の話している言葉の裏にある前提に気づきました。

「私が変わったら、今の家族との関係が壊れてしまいそうで怖い」

これは、単なる“変化への不安”ではありません。
変わった自分を、周囲が受け入れてくれなくなるのではないかという、“関係性の変化”への恐れです。

たとえば、これまで「頼られる側」でいた家族に、「頼れなくなってしまう」。
「弱くて可哀想な私」を求めていた人たちが、「変わったあなた」に戸惑う。

変化には、こうした“見えない痛み”が伴います。

だからこそ、人は「変わらないこと」にも意味を見出してしまうのです。
それがたとえ、苦しさを伴う現状だったとしても。


「できない自分」を手放すことへの抵抗


ある受講希望者の女性が、こう語ってくれました。

「旦那が病気になったとき、自分がもっと稼げればよかった。でも、外に出るのが怖くて、何もできなかったんです」

今、彼女は在宅でできる仕事に取り組もうとしています。けれど、新しいことに挑戦しようとすると、強い不安に襲われる。
「うまくいかなかったらどうしよう」
「自分には無理かもしれない」
そんな声が、無意識から聞こえてくるのです。

彼女のなかにあったのは、「できないままでいたほうが安全」という無意識の絆。
それは、自分を無力な存在として位置づけることで、周囲に頼る選択肢を残しておくという防衛でもありました。

でも、彼女は気づき始めています。

「私は、本当は、自分の力で家族を守りたかったんだ」と。

その気づきが、「できない自分」との決別の第一歩になるのです。


「怖くてもやる」は可能だという真実


「自信がないからできない」
「怖いからやらない」

この因果関係を、自分のなかで結んでしまっていませんか?

実は、「怖いけど、やる」は可能です。
「自信がなくても、始める」ことはできるのです。

むしろ、多くの人は「自信があるから始めた」のではなく、「やっていくうちに自信がついた」だけなのです。

行動することで、恐れは輪郭を失っていきます。
「やってみたら大丈夫だった」という経験が、少しずつ安全基地をつくっていきます。

私が彼女に伝えたのは、こういうことです。

「最初は傷つくかもしれないけど、それは致命傷じゃない。擦り傷くらいで済むことなんだよ」

擦り傷は、やがて治ります。
その小さな痛みを越えていくことで、自分の中に「私は進める」という確信が生まれるのです。


「弱さ」を否定せず、卒業していくために


弱さを持つことは、決して悪いことではありません。
むしろそれは、私たちの防衛であり、生存戦略でした。


ですが、その“弱さ”が、今の自分の可能性を閉ざす足かせになっているとしたら。
それは、やがて手放していくべき“古い習慣”なのかもしれません。

人は、自分が本当に望む未来に気づいたとき、変わる力を持ちます。

「多少傷ついてでも、そこにたどり着きたい」
「怖さよりも、欲しい未来のほうが大きい」

そう思えたとき、無意識の利得はその役割を終えます。

弱さに感謝し、守ってくれた自分をねぎらって、
そして、そっとその手を離して、未来へ歩き出しましょう。


著者プロフィール:
Effica株式会社 代表取締役
全米NLP協会認定トレーナー
柳下早紀

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