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【第五章】夢の途中で告げられた父の引退:私が「自分の道」を捨て、「画廊」を継ぐと決めた日


はじめに:描いていた未来図

自動車事故をきっかけに人生をリセットし、父の画廊でアートの面白さに目覚めた私。マッケンジー・ソープとの出会いは、アートが持つ教育的な可能性を教えてくれました。その頃の私は、まだ父の画廊を継ぐことを考えていたわけではありませんでした。私には、私自身のやりたいこと、追いかけたい夢があったのです。

今回は、私が自分の夢を追い求める中で、予期せぬ形で父の事業を引き継ぐことになった経緯をお話しします。個人の計画は、家族という大きな流れの中で変化することがあります。「使命感」というものが、時に人生のコンパスとなり得ることを教えてくれた、大きな転機でした。

新たな挑戦:教育への情熱と、会社設立の夢

父の会社で働きながらも、私の心は別の場所に向かっていました。それは「教育」という分野です。アートを通じて人が変わる瞬間を目の当たりにする中で、私はもっと直接的に、人の成長に関わる仕事がしたいと思うようになっていました。

「私はどっちかというと、教育方面の方に行きたかったんでしょうね。」

インタビューコメントより

私は、自分が面白いと思ったものを集め、セミナーや研修を企画する会社を立ち上げようと決意しました。父の会社を辞め、その準備を着々と進めていたのです。自分の手で、新しい学びの場を創り出すという夢に向かって、私の心は燃えていました。

突然の知らせ:父の引退と、残された人々

ところがその夢の途中で、衝撃的な知らせが舞い込みます。父にガンが見つかり、会社を引退することになったのです。バブル崩壊後の時代の波に抗うことはできず、相当なストレスがあったかと思います。父も70代後半と高齢だったこともあり、引退する決意をしました。

父の突然の引退は、ある意味多くの混乱を生みました。長年父の会社を支えてくれた作家さんたちが、宙に浮いた状態になってしまったのです。「彼らの作品はどうなるのか。彼らの活動の場は、この先どうなってしまうのか。」という思いがありました。

「このままじゃ、いけない」:使命感が灯した新たな道

その状況を目の当たりにして、私は自分の夢を追い続けることにためらいを感じ始めました。これまで一緒に仕事をしてきた作家さんたちの不安な顔が、頭から離れなかったのです。私がアートの面白さを知ることができたのも、彼らの素晴らしい作品があったからこそです。

「いろんな人が宙ぶらりんになっちゃうわけですよ。作家さんもそうですし。これはこのままじゃいけないなって、それで自分の画廊をスタートすることにしたのです。作家さんたちの想いを、また継続できるように。」

インタビューコメントより

「自分の夢よりも、目の前にいる人たちを守りたい。」との思いは、いつしか私の中で「使命感」へと変わっていきました。私はいったん立ち上げた自分の会社の計画を白紙に戻し、父の事業を引き継いで、新たな画廊を立ち上げることを決意したのです。

ゼロからの再出発:江夏画廊、誕生の瞬間

2010年に、私は自分の画廊となる「江夏画廊」を創業しました。それは文字通りゼロからのスタートでした。資金も、立派な場所もありません。あったのは、作家さんたちを守りたいという強い思いだけでした。

まずはお金を作らなければなりません。私は、これまでお世話になった方々を招いて、画廊の立ち上げを宣言するパーティーを開きました。すると私の思いに共感してくれた保険コンサルタント時代の社長や、父の時代にお世話になったお客様が、その場で絵を買ってくださったのです。その売上、200数十万円。それが、江夏画廊の最初の元手となりました。

自分の夢を一度は手放し、予期せぬ形で背負うことになった画廊という仕事。その決断が、私をさらに奥深いアートの世界へと導き、多くの人々との新たな出会いを生み出していくことになるのです。

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