「You」は一人じゃない。ダーウィンの赤土で知った英語と歴史の本当の重み|
こんにちは!英語コーチのKumiです。
今日も旅の続きをたどります。
でもその前に、今日のキーワード「複数形」について、ちょっとだけお話しさせてください。
「s」をつけない、へんてこな複数形たち
英語の複数形といえば、語尾に「s(es)」をつけるのが基本ですよね。でも、中には形がガラッと変わってしまう「不規則変化」をするものがあります。
child(子供) → children
foot(足) → feet
mouse(ネズミ) → mice
逆にfish(魚) やsheep(羊)は、複数になっても形は変わりません。他にも不規則なルールがたくさんある英語の複数形。「なんで、ルールが一つじゃないの~?!」と泣かされたのは、私だけではないはず。
さらに、英語の「You」にはもっと不思議なルールがあります。
**「あなた(単数)」も「あなたたち(複数)」も、形は同じ「You」。
おまけに、特定の誰かではなく「一般的に人というものは(総称)」**と言いたい時にも、英語では「You」を使います。
例えば・・・
You never know what will happen.
何が起こるかは分からないものだよ。
(=人生は予測できない、という一般論)
You need to be careful when you drive in the rain.
雨の中で運転するときは、注意が必要だ。
(=運転する人は誰でも、という一般的な注意)
これらの「You」は、「目の前のあなた」ではなく「世間一般の人」を指しています。
実は、この「You」の広がりこそが、私の人生で一番忘れられない出来事の鍵になったんです。
オーストラリアの最北端、ダーウィンでの出会い
場所は、オーストラリアのダーウィン。
北部に位置し、世界遺産のカカドゥ国立公園でも有名な、赤土の広がる美しい町です。
その日は、長距離バスで約12時間の移動。
そりゃもう、お尻は真っ平ら……。ヘトヘトになりながら、サービスエリアのすみっこで水を片手に一人、しゃがみこんでいました。
暑さよりも乾燥と、一人で地平線が見える土地で「休んで」いる緊張に、肌がヒリヒリしていたのを覚えています。
そこへ、カウボーイハットが似合う、赤茶に日焼けした白人の年配者がやってきました。
彼は急に私と目線を合わせ、同じようにしゃがみこむと、深い皺の奥にある鋭い視線で私をにらみつけたのです。
(……お金が欲しいの? え? こ、怖い!)
それが正直な気持ちでした。
”Are you Japanese?”
聞こえてきたのは、ドスのきいた、なまりの強いオージー英語。
「Y.....Yes.」
私はうつむきながら、小さい声で答えました。
そんな私に向かって、彼は視線を外さず、大声でこう続けたのです。
”You!”
”You killed my father.”
(……え!?)
一瞬、頭が真っ白になりました。
オーストラリアで、私が彼のお父さんを殺すなんて、物理的にありえない。
でも、すぐに気づきました。
あ、違う。そういうことじゃないんだ。
・・・歴史?
”YOU killed my father, you know.”
彼はさらに強い口調でもう一度言いました。そして、睨みをきかしたまま去っていきました。
ジリジリと太陽が照りつける中、風で舞い上がった赤土に、21歳の私は、ただただ言葉を失い、思わず目を閉じました。
恥ずかしながら、私は全く知らなかったんです。
オーストラリアにおける、”私たち”日本人の歴史を。
日本人としての自分?
歴史の中の私?
そのご老人の中のYOUの自分??
知識を整理し、自分なりに様々と考えることが出来たのは
ご老人が去ってしばらく経ってからでした。
その「You」には誰が含まれていたのか
学生時代、私は「You」を「あなた」という単数、あるいは「あなたたち」という複数として、ただの記号のように覚えていました。
「ゆー・ゆあ・ゆー、簡単じゃん!」って。
でも、あの日彼が放った「You」は、決して「私個人」を指す単数形ではありませんでした。
それは、**「日本人という集団(複数)」であり、同時に「戦争という過ちを犯す人間というもの(一般論としてのYou)」**をも含んでいたのかもしれません。
英語の「You」は便利です。
でも、その一言には、時に個人の存在を飲み込んでしまうほどの、歴史や民族の重みが乗ることがある。
「複数形を間違えたくらい、なんてことない!」なんて笑っていた私ですが、この時ばかりは、言葉が持つ「数」の概念と、その裏にある歴史の深さに圧倒され、立ち尽くしてしまいました。
たった3分だったけれど・・・私の人生で忘れられない「命と歴史と英語の授業」になりました。
英語を学ぶということは、単に文法をマスターすることではなく、その言葉が背負っている背景を知ること。
あのダーウィンの赤土の色は、今でも私の心に深く刻まれています。
英語コーチ Kumi
言葉の裏側にあるストーリーを大切にするコーチングを届けています。
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