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【輸出戻し税(輸出還付金)デマについて】

・初めに

昨今、消費税の減税についての議論が盛り上がってますね。

もちろん消費税減税を主張するのは自由ですし、国家の税制について議論が活発なのは歓迎すべきことなのですが、その根拠がデマであっては健全な議論とは言えません。

その消費税を批判する根拠として良く出てくるのが、輸出企業は多額の還付金を受け取っていて、これが実質的な補助金になっているという批判です。

これは明らかな事実誤認というか、デマなので、これを根拠に消費税の批判をされるとウンザリします。

このデマについて解説します。
少し長いのですが、読んでいただけると嬉しいです。

・消費税の仕組みについて

まずは消費税の仕組みについて簡単にご説明いたします。

消費税は多段階課税になっており、消費者の支払った金額が多段階で結果的に納税される仕組みです。

この画像を見てください。結果的に消費者の支払った1,000円が納税されてますね。

消費税の仕組み

そして、事業者は受け取った消費税から支払った消費税を引いて差額を納税、差額がマイナスなら還付で、結果的に負担しません。

画像を見ていただければ、どの事業者も負担は0ですね。

つまり、消費税は事業者は基本的に負担せず、消費者のみが負担するという制度の間接税ですね。

ここまでが消費税の仕組みのおさらいです。

なお、これが世界150ヶ国以上で採用されている消費税(VAT)の仕組みです。

消費税の仕組みをもう少し詳しく説明しているので、こちらもご参照ください。

・輸出企業への還付金の仕組み

続けて本題の輸出企業への還付金の話をします。

先ほどの例で、小売業者が輸出企業だと仮定します。

画像をご参照ください。

輸出企業への還付の仕組み

日本では仕向地主義を採用しております。

仕向地主義の反対は源泉地主義です。

仕向地主義は消費する場所で課税するというもので、源泉地主義は生産する場所で課税するというものです。

源泉地主義だと、どこで作られたものなのかによって係る税額が変わってしまい、価格競争が不公平になります。

WTOでも仕向地主義をルールにしており、日本が採用しているのもこちらの仕向地主義となります。

この場合、輸出する際は消費する場所が海外となるので、仕向地主義の原則に則ると免税とするべきです。

そのため、税率0%の免税取引と規定されております。

結果として小売業者の輸出価格は10,000円(消費税0円)となります。

それでは小売業者の消費税申告額を計算してみましょう。

0-700円=-700円となり、結果的に700円が還付されます。

この700円は、画像に書いてある通り輸出企業が下請企業に払って、下請企業が納税したものであり、我々の支払った消費税とは無関係なんです。

実際に計算で見てみましょう。

・前提
売上 10,000円(税抜)
仕入 7,000円(税抜)

・国内販売
売上 11,000円(税込)
仕入 7,700円(税込)
消費税 1,000-700=300円(納付)
利益 11,000-7,700-300=3,000円

・輸出
売上 10,000円(免税)
仕入 7,700円(税込)
消費税 0-700=-700円(還付)
利益 10,000-7,700+700=3,000円

国内販売と輸出は利益が一緒ですね。

このように輸出企業への還付金は、ただ単に仕入先に払った消費税が戻ってきているだけです。

なお、消費税の仕組みの説明でも記載しましたが、還付金は受け取った消費税から支払った消費税を引いた額がマイナスだったら発生するもので、国内販売企業でも中小企業でも受け取れます。

そもそも、"輸出還付金"や"輸出戻し税"なんてものは、制度として存在すらしないのです。

ここまでで、”輸出大企業”は還付金を受け取っていてずるいというのは完全なる勘違いであることが理解できたと思います。

因みに、これはあなたが海外の免税店で0%の消費税(現地のVAT)で購入するのと同じです。

免税店で現地の消費税は払いませんよね?

・下請に対する値下げの強要について

しかし、下請けに対して消費税分の値下げを強要しているから、その場合は輸出企業への利益になっているだろう!という意見があります。

これは本則課税の課税事業者で消費税に絡む仕事をしたことがある人なら、そんなはずは無いと分かるはずですね。

上記の通りですが、企業にとって消費税は右から左で±0なので意識しません。だから消費税分を値引きさせる必要がありませんね。

控除や還付があるのになぜその分値下げさせる必要があるのでしょうか。また、消費税の価格転嫁拒否は違法ですね。

やる必要もなく違法な行為をやるはずがありません。

まさに、動機のない犯罪は起こらないってやつですね。

また、それでも仕入価格を値下げさせている例はあると言うのなら、それは輸出でも国内販売企業でも同じ話ですね。

そして、消費税の話ではなく単なる下請け叩きという違法行為の話です。

銀行強盗をやったら儲かると言っているようなものです。

消費税は関係ありませんね。

下請価格を値下げしたら国内販売も輸出もその分が利益になるのは当たり前ですね。

小学生だって分かります。

実際に数字で見てみましょう。

先程の計算で、仕入価格を7,000円(税込)に下請け叩きをした場合の輸出と国内販売を比較してみます。

・国内販売
売上 11,000円(税込)
仕入 7,000円(税込)
消費税 1,000-636=364円(納付)
利益 11,000-7,000-364=3,636円

・輸出
売上 10,000円(免税)
仕入 7,000円(税込)
消費税 0-636=-636円(還付)
利益 10,000-7,000+636=3,636円

やはり国内販売と輸出の利益は一緒ですね。

下請叩きという違法行為をやった場合に還付金が利益になるというのはデマで、下請叩きという違法行為をやったら、叩いた分(636円)が儲かるというだけの話でした。

・輸出企業は消費税を乗せて海外で販売すればいい?

ところが、輸出企業は消費税を乗せて海外で販売すればいいんだから、還付金は不要だ!という反論まであります。

これについても反論します。

では、実際に消費税を乗せて輸出した場合の計算をしてみましょう。

・前提
売上 10,000円(税抜)
仕入 7,000円(税抜)

ここで売上を11,000円(免税)にしてみる。

・輸出
売上 11,000円(免税)
仕入 7,700円(税込)
消費税 0-700=-700円(還付)
利益 11,000-7,700+700=4,000円

ここに輸出先の消費税が掛かります。

例えばオーストリア(税率20%)だったら13,200円(税込)です。

消費税率の国際比較

オーストリアの10,000円(税抜)の商品は12,000円(税込)なのに、日本メーカーの商品は13,200円(税込)になってしまいます。

まさかこれが正しい姿だとでも言いたいのでしょうか?

そんなわけありませんね。
単なる二重課税で、自己関税状態ですね。

なお、消費税のない国に販売したらどうなるのかという反論があります。

確かに、その場合は11,000円のままですが、輸出先の10,000円(税抜)の商品も当然10,000円のままです。

日本メーカー11,000円と現地企業10,000円ですよ。

おかしいですよね?

因みに、これは消費税の影響を見るために条件を揃えて比較しているので、為替の影響どうのこうのは関係ありません。

あくまでも消費税の影響だけを見てます。

更に高く売れた場合も見てみましょう。

・輸出
売上 15,000円(免税)
仕入 7,700円(税込)
消費税 0-700=-700円(還付)
利益 15,000-7,700+700=8,000円

どれだけ高く売ったとしても還付金は700円で変わりません。

単に5,000円高く売ったからその分5,000円儲かったというだけの話です。

オーストリアだったらどうなるかと言うと、18,000円(税込)です。

オーストリアメーカーの1,5000円(税抜)の商品が18,000円(税込)ですから、この場合に利益が8,000円になるのは当然ですね。

つまり、還付金が利益になっている訳ではなく、高く売れからその分儲かっているというだけの話です。

ここまでで、輸出企業への還付金が利益になる補助金だというのはデマだと、完全に理解できたと思います。

・非課税取引との比較

ところがですね、更に非課税取引は還付金を受け取れないのに輸出だけずるい!という反論まで来たりします。

では、こちらの非課税取引についても解説します。

非課税取引というのは社会政策的配慮のための優遇措置です。
(事業者に対しての優遇措置ではない)

国内販売においてそれだけ安く販売することができます。

では具体的に見てみましょう。

・7,000円の仕入で3,000円の利益を上げる前提で計算する
売上 10,700円(非課税)
仕入 7,700円(税込)
消費税 仕入税額控除なし
利益 10,700-7,700=3,000円

通常の国内販売は上記の通り3,000円の利益を上げるためには11,000円(税込)の販売なのに対して、非課税取引の場合は10,700円(非課税)の販売で同じ利益が上げられます。

非課税取引の場合も当然仕入で払った消費税分の上乗せというのは行っております。

例えば診療報酬は点数加算で仕入分の消費税は加算しております。

✴︎参考サイト
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/008902.html

つまり、非課税取引は課税取引に比べて優遇されております。

もちろん仕入税額控除ができないため、仕入税額控除の計算結果がマイナスになった場合は還付されないという問題点はありますが、その点だけで冷遇されていると考えるのは間違いですね。

そして、輸出取引が国内販売取引と比べて優遇されていないのは、上記説明の通りです。

優遇・冷遇の度合を以下のように表すことができますね。

非課税取引>課税取引=輸出免税

ここまでくればほとんどの人が理解できたと思います。

・還付加算金について

さらにさらに、還付加算金という利息が付くのがずるいという話もありますが、こちらは以下の記事で説明しております。

こんなの雀の涙で、利益だなんて言えません。

下請に払った消費税が戻ってくるまで、最悪1年以上かかるので、こんな加算金いらないから早く返せと思っているでしょう。

その分設備投資などに回せますし、逆に資金調達で銀行からお金を借りればその分の利息を取られるので、むしろ損しているでしょう。

・まとめ

最後にまとめますが、輸出企業への還付金が実質的な利益になっており補助金だというのは、明らかなデマです。


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