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発達グレーゾーンの子と生きる母がたどり着いた最高の選択

わたしは突然、ゆりさんのXにDMを送った。
いても立ってもいられなかったからだ。

「ゆりさぁぁぁぁんんんん」

四十路目前にして、中学生みたいなことをする女が、わたしだ。
若作りとか可愛子ぶってるとか、そんなんじゃない。

大人になっていないのだ。

ちなみに佐々木ゆりさんは、スペシャルニーズのある子を支援する人たちを支援する人。
支援級の先生とか保育士さんや保護者、そういう人を支えるすごい人だ。
しかも面白くて優しい。
めっちゃ寄り添う人なのだ。

以前にもわたしのnoteに登場してもらっている。
なんだかフィーリングの合うおねーさんで、わたしはゆりさんが大好きだ。

ゆりさん、試験近いんだってよ。
資格いっぱい持ってるのに!
努力家だな。

インスタで見ちゃったんだよ、子育てマンガ

事の発端は、インスタで見かけたグレーゾーンの子どもを育てるお母さんのエッセイ漫画だ。
リールを次々スワイプするなかで、急にフィードの漫画が出てくるのってズルくない?
リールよりフィード派のわたしとしては、つい手を止めて読んでしまう。

小学校入学直前の男の子が、発達障害を疑われて心理士と知能テストを受ける内容だ。

お母さんは自分の子と周りの子がなんだか違う?とモヤモヤしていて、だけど障害者とは認めたくなくて。
もがいていた。

ああああああああああ!


読んじゃったよ。
普段ぜんぜん読まないんだよ、子育て系。
どっかで大体やな思いするから、普通の母親やってたら心当たりのある感情をグリグリ抉ってくるから。 だから子育てエッセイ好きじゃないんだ(ど偏見)

結局その漫画の子は、発達障害でも知的障害でもなく、グレーゾーン。
グレーゾーン金利みたいでいやなんだよね。
別に許されてないけど取り締まれない、って意味じゃないんだよ。こどもたちのグレーゾーンはさ。
なんかもっといい言葉、ないんかな。

エッセイに描かれていた子は、知能を4つに区分したときに年齢相当のところと、年齢より未発達なところの差が大きいと言われたそうだ。
小学校は特別支援級が妥当だという医師の前で、お母さんは葛藤した。

そりゃそうだ。
葛藤するよ、そんなもん。

「わかってる。これがこの子の最善だってわかってる。だけど、なんでうちの子が、特別支援級なの?」

このコマを読んだとき、わたしのしょぼくれた目から涙が溢れてメガネの内側に溜まった。
もう続きは読めない。

ぼたぼた落ちる水滴がメガネの内側でプールを作るから、更に目の前が何も見えなくなる。 

涙の海でぷかぷか浮かんでるのか?
わたしの涙の膜なのか?
メガネの涙の膜なのか?

泣いてるのはわたしか?
それともメガネか?


……テンパりました。


ゆりさぁぁぁぁん!!!(駆け込み寺)

そして、たどりついた今日の生贄。
佐々木ゆりさん。

「ゆりさぁぁぁぁぁんんんん!!」


(実際はもう少し大人しかったけどテンション的にはこれ)

「かーちゃんって大変だねぇぇぇぇえ!!!」


圧強め、しかもいきなりのDМにも関わらず、ゆりさんは見事にテンションを合わせてくれた。

「大変だよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


いい人すぎる。天使だな。

もうゆりさんの前(前?)で、わたしの涙腺は決壊していた。

もう涙がメガネから出ていようが、わたしの涙腺から出ていようが気にならないほど、メガネは涙に沈んでいた。
洗うのがめんどいな、と一瞬冷えた脳みそで考えたが、あとにしよう。
どうせ今、涙が引っ込むわけがないんだ。

なんでもしゃべりがちなわたしが、なんとなくモヤモヤと胸に引っかかって、よそで言えなかったこと。
noteになんでも書きがちなわたしがずっと誰にも言えなかったこと。

それはうちの上の子が特別支援級に中途編入したことだ。


うちの子は優しくて繊細ないい子だ。

やや繊細
やや母依存が強い
夜泣きの激しい幼少期

特性を並べてみると発達を心配する材料はそろっている。
でも、言語はしっかりしていたから、違和感を感じることもなかった。

健常も障害も関係なく育ててくれる保育園で、うちの子は自閉症の子にもダウン症の子にもADHDの子にもモテていた。

運動はわたしににてからっきしだけど、優しく否定しない子なのだ。

ある日なんか、自分で作ったモノに執着する自閉症の子が、小豆を入れて布の口を紐で縛るタイプのお手玉を、うちの子の手にのせてくれたという。

バスやトラックや草刈り機にはお手玉をあげたが、家族以外の人間にあげたのは初めてだったらしい。
大いに先生たちが盛り上がった事件だ。

そんないきさつもあって、保育園の先生の評価は「分け隔てなく優しく出来る子」として浸透した。
親としては鼻が高いできごとだった。

そしてわたしは小学生の母になった。


保育園の先生も、小学校の先生も、わたしたち両親も、なんの迷いもなく通常級に入った。

が、どっこい。

入学式から約3ヶ月、低学年玄関の入口で泣きわめいて止まらなくなった。
玄関の片隅の掃除道具を、固くて四角いロッカーごと抱きしめて離さない我が子を見ながら、KinKiの全部抱きしめてでも歌おうか。 
そんな心境だった(どんな)

もうすぐKinKiからDOMOTOに変わるんだよ。


わたしは上の子がひとりで学校に通えるようになるまで。正味3ヶ月の間。
わたしの生活は一変した。
めっちゃワンオペだった。しんどかった。

5時半に出勤する夫を見送る。
6時半に子どもを叩き起し、7時に朝食を食べさせる。
生後1年の下の子を7時30分に保育園へ預け、自宅に駆けもどり、上の子の首根っこつかんで今度は通学路をランドセルと共にひた走るのである。
そして玄関で掃除用ロッカーにハグをキメる我が子を、担任の先生に押し付ける。
来た道を自宅へ駆けもどって駐車場へ。
この時点で汗だくだ。
そこから片道25分かけて会社へ行き、フルタイムで老人介護の仕事をしていた。

3ヶ月はヤバいよね。
だからさすがに、ほかの子より繊細だとは薄々気づきはじめていた。

やや算数が苦手なのは、わたしと夫の遺伝だから仕方ないと笑い飛ばした。
国語は読解力は素晴らしいが、漢字は常に新しい書き順とヘンを作り出す天才だ。
どれも読めそうで読めない絶妙な漢字を生み出すのが「うちの子」っぽくて可愛い。

泣かずに学校に通えるようになって、ホッとしたころ。
保護者面談のとき、担任の先生が
意を決したように低く語りかけてきた。

お母さん、特別支援級いきませんか?



「綾瀬さん、お子さんはとてもいい子です。転校生にも優しいし、困っている子に寄り添えるとてもいい子なんです。」

この切り出し方はなんかあるやつだ。
ガッコの先生は後ろめたさなしに、うちの子を褒めないもん。
そもそもテンションが辛気臭い。

「はあどうも」

こっちの返事もつい投げやりになる。
バサッと斬るなら一思いにやってくれ。
前置きは不要じゃ。


「特別支援級を検討してみませんか?」



「はい?」




「ですから、特別支援級の発達障害のクラスに……」



「発達障害?うちの子がですか?」


背中がぞわっと寒くなる。
さっきまでと違って酸素が一気に薄くなった気さえする。
はふはふと麸を強請る鯉のように口をパクつかせる。
あれ、まだ酸素薄いぞ。
ここは十勝岳のテッペンか!?

「算数と国語に苦手なところが多いんです。それで教科サポートの先生にお願いしようとしたら……」

「うちの子が怖いから絶対やだって言ってましたね」

主要教科のサポートクラスでは、主に退職後の非常勤教諭が担当している。
しかしどうにも評判が悪い。
毎回子どもたちからは「怒鳴る」「キレる」「(男子を)叩く」と評判は最悪だった。

「……そうなんです。あとできるお手伝いとして学習支援の通級があるんですけど、満員で……」

満員御礼は喜ばしいことだが。
じゃあうちの子、いくとこなくない!?

「なのでぇ、特別支援級をぉぉ、オススメしてますぅ」
急にギャルみたいな口調で先生が喋り出す。
いっそもう「ちいメロ」とか呼ぶべき!?

「行ったらどうなるんです?」

「マンツーマンサポートで、宿題とか勉強の内容も、本人に合わせた感じになりますねぇ」

幻のギャル「ちいメロ」は消えていた。
儚かったぜ。

「でもうちの子、障害者認定受けてないし」

「それは教育委員会のほうで、学校生活において支援が必要であると判断できたら通えますよ」

「ど、どんなふうに?」

かけっことかバレーボールだったらうちの子不利やん。

「ほかの学校にいる教諭兼心理士が来て、お子さんの話しを聞きながらテストをします」

「算数はやる前から惨敗ですが……」

「そういう性格のものではありません。図形理解とか言語理解とかそういうのを調べて、知能指数を出すようなものですね」

初手からホームランキタコレ。

知能指数って軽く言うやん。
マジで笑えないくらいアホだったらどうするん!?
数字にうちの子の能力が乗ってしまうのは、少し恐ろしかった。
その数字でしか、子どもの善し悪しがなくなるのではないかと危惧したからだ。

数字がわたしの味方になってくれたことはない。

知能テストたのしかったよー

親の心配をよそにうちの子はアッサリと知能指数のテストを受けた。
心理士の先生はとても穏やかで、ずっと優しく話しかけてくれたので怖くなかったそうだ。

「初めましてのおじさんとふたりで90分もよくやりましたよ。ほんとうにすごいです。しかも落ち着いていたんだよね?」

この先生とうちの子は少し仲良くなっていた。

検査が終わると簡易結果を受けて、職員室に誰かが走って、戻ってきた先生が「これから教頭に掛け合いますから!」とまた走っていった。

なんのこっちゃ。
この間、2時間待たされた。

あとで聞いた話によると、うちの子が入る予定の特別支援級には、多動かつ暴言を吐いてしまう自分に素直な男の子がいるのだ。
うちの子はその子が苦手だった。
同じクラスは絶対いや!と突っぱねたらしい。

そこで先生たちは一計を案じてくれた。
多動な男の子たちをひとつのクラスに。
うちの子や大人しい平和主義者の子どもたちをひとつのクラスに。

つまり本来、支援級は学年ごとに1クラスずつあったのを、ふたつに分けてくれたのだ。
そのために職員室と検査していた部屋を先生たちがバタバタしてくれたらしい。

知能テストの結果は、1ヶ月ほどかけて出すそうだが、この時点で、うちの子の特別支援級入りは確実だったようだ。
簡易結果だけでも、発達のバランスの悪さが見つかったと、わたしと心理士の先生の面談で聞かされた。

うちの子の知能指数は平均値だ。
ただ、中身を4つに分けて見たとき、言語理解だけがぐーんと伸びていて、中学生くらいの発達だと言う。
その反面、数字や記憶といった分野の伸びがイマイチで、本人は多分そのギャップに苦しんでいるはずだ、とは心理士の先生談。

思い当たる節だらけだ。
だから周りの子と比べて、自分ができないとしょぼくれて、自分を責めるのだ。

「本人の生きづらさを減らしてあげましょう」

支援級の先生に言われて、そうか、ここは集団に馴染めない子を排除する場所じゃないんだ、と気づいた。

わたしが小学生だったときの支援級は、そういうところだった。

いいことなのに喜びきれない


うちの子の編入が決まって支援級の児童の数が増えたから、校長の許可が下りたそうだ。
これには喜ぶ子が多かったと聞いている。
校長先生ありがとう!!

そしてわたしは、特別支援級に通う小学生の母になった。
子どもの状態が分かっていても、それが最善であっても、わたしは辛かった。

「うちの子はフツウのなかで生きられない」
「支援級に行ったらもう帰ってこられない」
「支援級にいくほど、うちの子はダメなの?」
「もっとはやく気づいたら……」
 

見栄っ張りだから面談も試験も、なんてことない顔で子どもに付き添った。

「おかあさん余裕ですね。冷静でよかったです」

どこが冷静なんだ馬鹿野郎。
こちとら頭んなかぐっちゃぐちゃで、脳みそリゾットでも作ってやりたい気分だよ。

当然言えるわけもなく、脳みそリゾット寸前の脳みそを隠して、愛想良く笑った。

特別支援級の児童になる予定の、うちの子はといえば。

「クーリングルームにトランポリンあるし、こっちがいいなー」

お前の感慨はそんなもんかああああぁあああああ!!

オコッテナイヨ。
オコッテナイヨ。
オコッテナイッタラ!!

(困ったらテンドンしろって
死んだ祖父が言ってた)

今はもう落ち着いている。


わたしは久しぶりに、あのときの気持ちを思い出してしまった。

  • コイツらに任せていいのか?(高齢の担任)

  • 勉強、できるの?(周りおもちゃだらけ)

  • あんた状況わかってる?(うちのこ)

もう、フツウじゃない学校生活しかできないかもしれないんだよー!!

子どもは新しい環境を喜ぶけれど、それが本当に子どものためになっているのかが不安なのだ。
親なんて、見ているくらいしか、できないのだから。

現代の、支援級に差別意識のない子どもは、颯爽と支援級に通って行った。
おとなの方が情けないものである。

そして冒頭の子育てマンガの話しに戻るのだ。

わたしがゆりさんのところへ駆け込んだのは、知能指数テストのあたりの、じんわりまとわりつく不快さをわかってもらえる気がしたから。
お腹がギュってなって、喉がオエッてなって、脳みその内側が、汗だくになってた。

「でもさ」
「だけどさ」の
世界にいるのは大変だよ

ゆりさんの包容力!

スペシャルニーズのいるお子さんを持つ親ならば、一度は言ったことがあるんじゃないかな。

「幸せだけどさ」

「元気ならいいんだ。でもさ」

わかってるのだ。
わかってるんだ。
言いきれない弱さなんて。

でもさ、と繋げたくなってしまうのは、我が子の将来が不安だからだろうか。
親のエゴのような気もする。

親だって、不安なのだ。
不安だし、ごめんねだし、がんばれよ、なのだ。

どんなに支えたって、結局親は支えるだけだ。
本人にはなれない。

支援職ってすごいね。
みんなありがとうだよぉぉぉぉ。

最後までテンションがヤバいDМ

紛れもない真実だ。
誰かが助けてくれるから、うちの子は今日も笑顔で学校に行けるのだ。

ゆりさんは言った。

こちらこそありがとう
ご家族あっての支援者ですからね

やっぱり天使だ。いや、女神か?

教育委員会
担任の先生
教頭先生
事務さん
支援級の先生
知能テストをしてくれた心理士の先生

ほかにも多くの人が関わってくれている。
大変だけど、ひとりじゃない。
だからがんばれる。

でも、たまに折れそうになったら、素直に周りに助けを求めてもいいんだよね。

ゆりさん、ありがとぉぉぉお。
あの短いやりとりが、どれだけ救われたか。
明日もがんばれるよ!!



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