怪談:【臍がらみ】第5話 「うみお」【創作大賞2024参加作品】
### ⬛︎⬛︎高校で女子生徒が相次いで行方不明に
平和な街に衝撃が走る事件が発生しました。区内の高校に通う数名の女子生徒が、下校途中に突如として行方不明になるという出来事が相次いで起こっています。
事件は今週初めから続いており、最初の失踪は月曜日の午後3時頃に発生しました。帰宅途中の女子生徒Fさん(16歳)が突然消息を絶ち、その後の連絡が途絶えたことから、家族が警察に通報。続いて翌日の火曜日、同じ学校に通う別の女子生徒Sさん(16歳)も同様に行方不明となり、警察は捜査を本格化させました。
警察はこれが連続誘拐事件である可能性を視野に入れています。捜査関係者によると、失踪した2名は学校から自宅へ向かう途中で行方不明になっており、同一犯による犯行の可能性が高いとのことです。
警察は周辺地域での聞き込みや防犯カメラの映像解析を行い、手がかりを探していますが、今のところ有力な情報は得られていません。また、学校側も生徒たちに対し、複数人での帰宅や、不審者を見かけた場合の通報を呼びかけるなど、注意喚起を強化しています。
保護者や地域住民からは不安の声が上がっており、事件の早期解決が求められています。警察は「犯人を特定し、一刻も早く行方不明となった生徒たちを救出するため、全力を尽くします」とコメントしています。
引き続き捜査が進展次第、詳細をお伝えしてまいります。区民の皆様には、不審な人物や情報があれば、警察への速やかな通報をお願い申し上げます。
あれから1週間後、妹の高校の事が、ネットニュースになっており、それに目を通し終わると同時にため息が出た。なぜなら調査を始めてからというもののいまだに手掛かり一つ掴めていないからだ。
まず、妹のスマートフォンにはGPSのアプリをダウンロードさせ、常に居場所がわかるようにさせ、できる限り友達と行動するように言って聞かせている。彼女も大分怖がっていたので素直に聞き入れてくれた。
妹には他にも学校で聞き込みをさせたり、ロッカーを調べさせたりしたが特に手掛かりになりそうな情報はなかった。
だが、いまや妹の高校ではロッカーの幽霊の事は都市伝説として周知されており、あの怪談も相当アクセスされているようで、7年前に投稿されているにも関わらず小説投稿サイト「ストーリーを作ろう!」のランキングに上がってきているらしい。
それというのも、怪談のリンクが生徒間でひと昔のチェーンメールのように「送られたらリンクを開き、他人に送らないとロッカーの幽霊に呪われる」などという尾鰭がついてしまっているからだそうだ。
そんなこともあり、件のロッカーのある教室は今は空き教室にされ、結衣達は別の教室で授業を受けているらしい。だが別の教室でもなお、生徒達はロッカーから席を離して授業を受けているそうだ。
「うちのクラスの子、事件のせいで精神的に不安定になっちゃって不登校になってる子も何人かいてさ、学級閉鎖になるんじゃないかって言われてるんだよね」
結衣は制服のまま、俺のベッドに横になり、漫画を読みながら呟く。顔色もあまり良くなく、少し、痩せたようだ。
「“うみお”という奴は「ストーリーを作ろう!」にはあの一作のみ投稿していたようだ。他の作品も削除した形跡はなかった。他の有名どころのサイトもみたが“うみお”というアカウントはなかった、やはりあのロッカーを直接調べた方が良いかもしれないな」
デスクの上に開かれた調査メモを見ながら考えていた。事件より7年も前に公開されていた怪談、しかもその怪談を投稿するだけのアカウント、SNSもやっていないとなるとやはり結衣のクラスメイトが犯人という確率は0に近いだろう。
「兄貴はさ、これって人だと思う?幽霊だと思う?私は幽霊だと思ってるけど」
後ろから不意に質問されてさらに考え込んでしまう。人か、幽霊か、それとも……。
「今の状況証拠を見るに、普通に存在し、社会の中で生活する人間がこんな事をしてるとは思えない。でもこれを書いたのが幽霊だとも思えない、幽霊はもっと本能的で、見境無く人や場所に呪いを振り撒くものだ。こいつは、“うみお“のしている事はどうにも回りくどいし俺は幽霊が小説を書くとは思えない」
自然と早口になる、話をしているうちに思考がクリアになっていく。人ではないが幽霊だとも思えない、こういう時は専門家に聞くのが一番だ。
背後の方から「急に早口〜」などという悪口も聞こえたが無視して手に持ったスマートフォンからある人物へコンタクトを取ることにした。
その人物は岸辺修造。大学時代の同期で同じオカルト系のサークルに所属し、サークル内で一緒にアマチュアオカルト雑誌を刊行していた仲だ。今はテレビ作家として働いている。
連絡を取るのは3、4年ぶりだがこの手の話題は大好物だろうし色々とアイデアも出してくれるだろう。
今回のことについてメールを書きながら湧いてくる思い出につい頬が緩んでしまう。
3日ほどたち、岸辺から返信が来た。興味を持ってくれたようで週末にカフェで会うことになった。それまでに彼の方でも犯罪、オカルト両方の視点で調べてみるとも言ってくれた。
その事を学校から帰ってきた妹に話そうとすると彼女が先に恐ろしい事を口にした。
「行方不明になってた子のうちの1人のね、リサっていうんだけどスマホが見つかったの、なんでだと思う?今、私たちってあのロッカーのある教室とは別のところで授業を受けてるんだけど、授業中にだれかのスマホが鳴ったんだ。誰だ〜ってみんなで騒いでたんだけどね、音は私の後ろのロッカーから聞こえるの、おかしいよね?別の教室だよ?先生が恐る恐るロッカーを開けたらね、その子のスマホが掃除用のバケツの中に入ってたの。もう教室中パニックになっちゃって保健室に運ばれた子もいたよ」
あまりの話に開いた口が塞がらない、こちらが何かを返す前に彼女は続けた。
「逃げられないってことなのかな、私」

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