怪談:【臍がらみ】第4話 「ロッカーの幽霊」【創作大賞2024参加作品】
一通り読み終えて感じたのは、一度読んだことがありそうなありきたりな読後感、あまり技術のない人間が書いているホラー小説。そういう印象だった。
問題はそこじゃない。話の中に出てくる⬛︎⬛︎区の高校、ピンクのカーディガンを羽織った「結衣」という女子生徒。それは……
「これ、私だよね」
「偶然にしてはって感じだが、でもこれだと幽霊じゃなくてお前のことが好きなオカルト趣味の男の子が自作の小説にお前を登場させてるだけじゃないか?」
「そうじゃないの……」
「なに?」
妹が俯く、そして唇を振るわせながら信じられないことを言い出したのだ。
「うちのクラスの教室は教壇から見て右側に窓がついており外には校庭が広がってるの。左側には廊下があって、教室の後ろの方に掃除用のロッカーがあるの。さっきの怪談と一緒……」
「……」
嫌な汗が背中を伝った。
「そして2週間前からロッカーの近くの席の子が2人、行方不明になってる」
「お前の席はどこだ」
「ロッカーの目の前、行方不明になってる子はみんな私の席のすぐそばの子たち……」
「偶然ってこともあるだろう、もしくは嫌味な奴が今お前の教室で起きている不幸な出来事と妄想を結びつけて怪談に仕立て上げてるとかさ」
「それはないよ、この怪談の投稿日見てよ」
俺は渡されたスマートフォンをタップし、【だるまさんがころんだ】の最終更新日を確認する。
「2017年、3月5日………」
「何年も前に投稿されてるんだよこれ、なのに⬛︎⬛︎区の高校で、私が出てきて、ロッカーの近くに座ってる子たちがいなくなってる、これっておかしいよね、本当にいるんだよ多分。それにこの怪談どうやって見つけたと思う?行方不明になってる子から私のスマホにリンクが送られてきたんだよ!」
妹は声を震わせながら捲し立てている、こんなに辛そうな妹は久しぶりに見た。妹を横に座らせ、背中を撫でながら、俺は陽が落ちてすっかり暗くなった部屋の中でぼうっと浮かび上がる怪談をじっと見つめていた。
何年も前からネットに存在し、まるで予言のように現実の出来事とリンクしている怪談、その存在そのものの不気味さに俺は不安と同時に、一種の高揚感を感じていた。俺は今、本当の心霊現象を目にしているのではないかと。子供の頃から憧れたオカルト雑誌やホラー映画の世界に入り込んでしまっているのではないかと。
この不思議な怪談の謎を追い、真実を解き明かしてそれを記事にするなどして世間に発表すれば、俺のこの鬱屈とした日々は変えられるかもしれない。そう思うとめそめそと隣で泣く妹の存在が遠く感じられ、怪談を表示するスマートフォンの画面はいっそうと輝いているように思えた。
しばらくして、妹は泣き疲れたのか俺のベッドでそのまま眠ってしまった。眠っている歳の離れた妹の顔には涙の跡が残っていた。彼女はまだ赤子だったころを不意に思い出した。彼女を起こさないようにゆっくりと立ち上がり、デスクのライトを点けてタブレット端末に今回得た情報を書き残すことにした。
野心ももちろんある。でも妹を守りたいという気持ちは変わらない。本当にロッカーの幽霊がいるのなら、このままだと妹は確実に恐ろしい目に遭ってしまうだろう。決意と野心が文字を打つ指を素早く走らせた。
タブレット端末に残されていたメモ①
6/5
現実にリンクする怪談
2017/3/5 【だるまさんがころんだ】→「ストーリーを作ろう!」に投稿
アカウント名:Umio←⬛︎⬛︎高校の生徒?
他に投稿されている怪談はなし
2024/6~ 結衣のクラスメイト2人が行方不明に
自分の書いた小説通りのことを現実でも起こそうとする愉快犯の可能性
怪談のリンクは行方不明になっている子のうちの1人から結衣へラインで送られてきた
→犯人が誘拐してスマホを奪っている?
怪談の内容と現実の事件のズレ
怪談→結衣が最初に異変に見舞われている
現実→他の子達が異変に
怪談→嘔吐や体調不良、発狂など
現実→行方不明
他にもあるかも?
続き→
前話→
各話リンク→
