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怪談:【臍がらみ】第7話 ”大切な家族“【創作大賞2024参加作品】


1 :  ◆FdkaBkUmio saga 2019年08月01日 (木) 02:25:55 ID: dx2R0ixxx

 ダンクが死んでしまった。

 私とお母さんが小さい頃からずっと家にいる大きな雑種犬だった。

 私が小学生の時にクラスの男子にいじめられたときも

 お母さんの彼氏に私が殴られたときも

 中学生の時にできた年上の彼氏に連れられたカラオケボックスで彼氏の友達数人にまわされたときも

 ホテルで客に首を絞められたときも

 家に帰ればダンクがいて私の顔を舐めて慰めてくれた。



2 :  ◆FdkaBkUmio saga 2019年08月01日 (木) 02:31:06 ID: dx2R0ixxx

 ダンクには不思議なところがあった。

 私は嫌な思いをした次の日、決まってダンクは私のベッドの下に何かを置いてくことがあった。

 ある時は青い筆箱。中には私が無くしたシールが入っていた。

 ある時は銀色のピアス。少し血がついていた。

 ある時はリュックサック。中には人の陰茎が入っていた。

 ある時は男物の財布。中には人の指と大量のお金が入っていた。

 ダンクは私の代わりに仕返しをしてくれていたのだ。

3 :  ◆FdkaBkUmio saga 2019年08月01日 (木) 02:55:41 ID: dx2R0ixxx


 ダンクは散歩以外では外に出ることはないし夜はずっとゲージの中でずっとしている大人しい犬だった。

 だからダンクは不思議な力を使って私に嫌な思いをさせた相手にささやかな仕返しをしているのだと確信していた。

 そして私はその力を利用していた。嫌なことがあってもきっとダンクが仕返ししてくれる。

 だからどんないじめや暴力を受けても心に余裕があった。

4 :  ◆FdkaBkUmio saga 2019年08月01日 (木) 03:12:01 ID: dx2R0ixxx


 先週、お母さんをわざと怒らせた。お母さんは私の頬を叩き、家を出て行った。

 そのあと私はすぐにダンクのところへ行き、彼の顔を胸に抱き寄せて大袈裟に悲しんだ。

 さあ、可愛い私のダンク。あの女にとびっきりの仕返しをして!あいつの大切なものを奪ってきて!

 ダンクはじっと私を見つめたあと、赤く腫れた頬を優しく舐めた。

5 :  ◆FdkaBkUmio saga 2019年08月01日 (木) 03:59:43 ID: dx2R0ixxx


 次の日、ダンクは和室の押し入れの中で眠るように死んでいた。

 死んでしまったダンクを抱き寄せてお母さんは狂ったように泣き叫んでいた。

 ダンクは私が生まれる前にお母さんがどこからか拾ってきた大切な家族だった。





 コメント(1)
 以下、VIPにかわりまして悪霊がお送りします。
 2022年2月4日

 代筆いただきありがとうございました。無事産まれました。



一通り、読み終えるのを見計らって岸辺は「どう思う?」と目で訴えかけてくる。少し考えてから口を開いた。

「話は幽霊の登場しない、人間の愚かさを皮肉った、意味怖系の奴に近いと思う。内容はありがちだ。やはり書き味が【だるまさんがころんだ】に似ているし、もしかしたら奴かもしれない」

 岸辺が笑みを浮かべながらうなづき、そのままコーヒーに口をつける。

「どうやってこれを見つけた?」

「本文の下の方のコメント欄を見てみろ、一つだけコメントがついている」

 言われて画面をスクロールするとスレッドにコメントがついていた。これは大元のスレッドではなくまとめサイトの方でされているコメントだ。


 コメント(1)
 以下、VIPにかわりまして悪霊がお送りします。
 2024年2月4日

 代筆いただきありがとうございました。無事産まれました。


 思わず息を呑んだ

「お前から古田理沙のポストについて聞かされた時にな、そういうルールなのかもしれない、と思ってな。そのフレーズで検索してみたんだ。そしたらそれが出てきた」

「ルール?」

「その怪異、“うみお”のルールだよ、くねくねが見てはいけないように、現代怪異ってのは大体ルールが存在する。こいつは怪談を書き、それっぽい実際の事件を起こす、そしてそのフレーズだ、”産まれました。ありがとうございました“だ」

「ますます意味がわからない、一体何が産まれたんだ」

「捏造の怪談をでっちあげ、それに現実を後追いさせることで本物にする……それを”産まれる“と表現しているのかもな」

「もしそうだとしたら、こいつは何者なんだ……」

 岸辺はしばらく腕を組み、下を向いて考える。そしてそのままこう言った。

「母親なんだろ、何かの」

 2人の間に沈黙が流れる。周りの客の会話や食器を運ぶ店員の足音が妙に大きく聞こえた。

 なにかの、母親。

「それを確かめる方法は一つだな」

 岸辺のパソコンを借り、ある事を調べ始める。彼は腕を組んだままその様子をじっと見つめている、おそらく同じ事を考えているのだろう。

 2024年2月4日、つい最近、何かが産まれた日にこの怪談を想起させる事件が起きているはずだ。その思惑はピタリを当てはまり、あるニュースがトップに表示された。

### アパートの一室で悲劇的事件発生:母親が娘を刺す

**××県〇〇市—** 2022年2月4日未明、静かな住宅街にあるアパートの一室で、母親が娘を包丁で刺殺するという衝撃的な事件が発生しました。現場ではさらに、部屋の片隅で犬の死体が発見され、捜査は混迷を深めています。

事件が起きたのは昨夜、住民からの通報で警察が駆けつけました。アパートの一室で、浜田静江容疑者(40歳)が娘である浜田佳奈さん(18歳)を包丁で刺し、重傷を負わせた状態で発見され、病院へ搬送後、死亡しました。

さらに驚かされたのは、四畳半の和室の中央に横たわっていた犬の死体でした。犬はすでに死亡しており、警察はこの犬の死因についても調査を進めています。現場に残された証拠や母親の供述から、事件の全貌を解明しようとしています。

事件の動機や経緯についてはまだ明らかになっていませんが、近隣住民によると、母娘の間には以前から何らかのトラブルがあったとの証言が寄せられています。警察は母親を逮捕し、詳細な事情聴取を行っている最中です。

地元住民たちは突然の事件にショックを受けており、静かな街に再び平穏が戻ることを願っています。警察は「事件の背景を徹底的に調査し、再発防止に努めます」とコメントしており、今後の捜査の進展が注目されます。
現時点では、事件の背景や動機についての詳細な情報は明らかになっておらず、引き続き捜査が進められています。


ニュースの内容を2人で確認し、関連性を感じた俺たちはお互いの考えを交換し、お互いの飲み物がカラになるまで議論を交わしていた。まるで学生の時に戻った時のようだ。

「裕人、コイツはもしかしたら本物かもしれねえ」

「俺も、そんな気がする」

「お前、このまま調査してネットの記事でも動画でもなんでもいい、絶対自分のものにしろよ。いつまでもしょぼいライターしてるんじゃない」

「俺は、それもあるけど妹を守りたい」

「そうだな……きっとこの謎を解き明かせば妹さんも大丈夫だ」

 妹を守りたい、手柄を立てたい、どちらの気持ちも本物だ。”うみお”、こいつは現代に現れた本物の怪異だ。絶対に真実を解き明かさなくてはいけない、俺が見つけ出さなくてはいけないんだ。

 でも、本当に怪談と現実の事件はリンクしているんだろうか。このニュースの犬にも怪談にあるような不思議な力があったとでも言うのだろうか。


タブレット端末に残されていたメモ②

2017/3/5 だるまさんがころんだ←うみお

 2019/8/1 大切な家族←◆FdkaBkUmio

 2022/2/4 アパートで母親が娘を殺害、犬の死体
 大切な家族とリンク

⬛︎⬛︎高校 ロッカーの幽霊?女子生徒行方不明
 だるまさんがころんだとリンク

  古田理沙 Xにポスト
 産まれました ありがとうございました

 過去に作られた怪談をもとにしたような事件?
 事件がもとになって怪談が過去に生まれてる?

 一体何が生まれてる?幽霊?

 代筆?

 犬が死んだ場所
事件→四畳半の和室の中央
怪談→押し入れの中

 他にも怪談があるかもしれない

 結衣は今日も学校に行かず、部屋にこもっている
 ちゃんとご飯は食べているだろうか


岸辺と別れた後に兄に送られていたメール

続き→

前話→

各話リンク→

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