怪談:【臍がらみ】第11話 “傘おばさん”【創作大賞2024参加作品】
読者からの手紙 1通目
拝啓
都市伝説調査団の皆様
いつも「都市伝説調査団」を楽しませております。次号のテーマが「現代の闇に潜む最新の都市伝説」とのことで私の使っている〇〇駅のちょっと不思議な話をご紹介させていただきたく筆をとりました。
私は高校の教師をしており、毎日電車で通勤をしているのですが最寄の駅には、傘おばさんがいます。
雨が降っている日、朝から晩まで顔を隠すように赤い傘を差して駅の改札口前に立っているのです。
奇妙なことにそのおばさんは傘を持っていない人に自分の傘をあげようとしてくるので、皆から気味悪がられ、近所では有名でした。
息子の学校ではそのおばさんは電車の事故で死んだ夫の帰りを待っているだとかその人の顔をみると地獄へ行くとか、
そういう尾鰭のついた噂が広まっており、
学校側も駅を使う子供は怪しい人には着いて行かないようにと児童に説明していたようです。
ある夕方、仕事が終わり最寄駅へ着くと外は天気予報になかった土砂降りの雨でした。夫も仕事中で迎えをもらうこともできません。
どうしよう、困っていると視界の端から声をかけられました。
「傘、あげますから」
声の方へ顔を向けるとそこには傘おばさんがいました。
汚れて茶色がかったスニーカー、シワだらけのTシャツにずぶ濡れのジーパン。傘を持つ手にはいくつもの痣がありました。
ですが、その顔だけは傘に隠れて見えません。
「結構です」
そう言って足早に逃げようとすると左手に激痛が走りました。
「痛っ!」
見ると傘おばさんは傘を持っていない方の手で私の手を爪を立てて握っていました。
恐怖と驚きで私は思いっきり手を振り解き、雨の中を走って逃げました。
途中、後ろを振り向いてみましたがおばさんは駅の改札口あたりから離れず、傘を持ったままこちらに体を向け続けていました。
家に帰り、震えながらタオルで体をふいて、ある考えがよぎりました。
あの時、傘を受け取っていたら私はどうなっていたのだろう。
そのあと、傘を持っていない夫を迎えに行くために駅へ車を走らせると、改札口で傘おばさんから傘を受け取っている男の人を見かけました。
受け取ると、どうなるのでしょうか、都市伝説調査団の皆様、どうか調べてくれませんか?
7月9日
加納美緒
敬具
###駅前の路地に漂う不気味な謎:行方不明者の衣服と傘をさした謎のホームレス女性の影###
区内〇〇駅前— 日常の喧騒が行き交う駅前に、奇妙で不気味な事件が静かに進行しているという噂が広まっています。ある日、駅近くの路地に大量の衣服が積み重なっているのが発見されました。それらは全て、この駅を利用していた行方不明者のものだというのです。
この不可解な現象は、早朝の清掃作業中に発見されました。駅の清掃員が、通常は人気のない路地裏に突然現れた山積みの衣服を見つけたのです。更に調査を進めると、それらの衣服には持ち主の特徴的な所持品が含まれており、最近行方不明になった数名の利用者のものであることが判明しました。
そして、事件をさらに不気味なものにしているのが、その路地近辺に常に出没する謎めいた「傘おばさん」の存在です。その中年女性はいつも古びた傘をさしており、雨の日に現れ、他人にそれを執拗に渡そうとするというのです。地元住民によると、この者は何年も前からこの周辺に住み着いており、その行動はますます謎めいているといいます。
我々はこの女性が事件に何らかの関与をしている可能性を視野に入れ、慎重に捜査を進めています。しかし、彼女は我らが調査員の1人、坂上の質問に対して何も話さず、黙って微笑むだけだといいます。その沈黙が、さらにこの事件の不気味さを増幅させているのです。
一部の住民は、この路地には何かしらの「異界への入口」が存在するのではないかという噂を立てています。特に、夜になるとこの路地から異様な音が聞こえるという証言もあり、その正体を巡ってさまざまな憶測が飛び交っています。
当サークル長のお知り合いの祈祷師によると、こうした現象は都市伝説の一部となり得るもので、特に大量の衣服が突然出現することや、不思議な人物が関わっていることは、古くから語り継がれてきた神隠しの伝承に似ていると指摘しています。
果たして、この路地で何が起きているのか? そして、行方不明になった人々はどこに消えたのか? 捜査の進展と共に、今後の展開が注目されます。「都市伝説調査団」は、引き続きこの不気味な事件の真相に迫ります。読者の皆様には、今後の続報をお見逃しなく。
坂上、よく書けている。でもやっぱこの話はやめよう。変にぼかすくらいなら封印してほうがいい。by K
読者からの手紙 2通目
調査スタッフ 坂上様
特別号、拝読させていただきました。
なんですか、あれは。傘おばさんのお話はどうしたんです?
全然ダメです。これでは産まれません。
あのときもう少しで産まれましたのに、どうして傘を受け取らなかったのですか?
ありえない、がっかりしました、元気に産まれたのに
これでは元気に産まれません
やり直してください、ちゃんと書きなさい。もう一度手紙を送ります、それをなぞってください、おねがいします、たすけてください
加納美緒

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