怪談:【臍がらみ】第12.5話 「破水」【創作大賞2024参加作品】
部屋の契約をやんわりと断り、くだんの物件を後にしようとアパートの外に出ると、ポツポツと雨が降り出した。
しまったな、天気予報では今日は快晴のはずなのに。
すると大家は折り畳み傘を差し出した。
「これ、あげるわよ」
「いいんですか?」
「いいのよいいのよ、歳を取るとね、人と会話できること自体が嬉しくてね、ついお節介しちゃうのよ、独居老人のつらいとこね」
「では、ありがたく」
頭を下げ、折り畳み傘を開くと彼女は続けた。
「それにね、たぶんもうだめなのよ」
雨音に紛れ、よく聞こえなかったが、大家の方を向くとしわくちゃの笑顔でこちらをじっと見つめている。
2階の例の部屋の窓から誰かがこちらを覗き込んでいたような気がした。
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