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言葉に恋した夏の日|あの日のわたしに会いにいく

夏休みに届いた1枚のはがき。

優雅な筆づかいの青い水彩。
そこに書かれた文字に、わたしは惹かれた。

暑中お見舞い申し上げ候

候なんて言葉を使ってあるのを初めて見た。
あとにもさきにもあの1枚しか出会ったことがない。

当時は、表現の仕方がわからなかった。

でも、今ならわかる。
あれはきっと風情というものだった。

わたしには、とても大人に感じられ、おしゃれでかっこよかった。

そのはがきは、引き出しにしまって幾度となく見返していた。
見るたびにふわっと何かが開く感じがした。
見えない何かがわたしに染み込んでいく。
その見えない何かを知りたかった。

人と違う言葉を選ぶことが、おもしろい。
今も、ぴったりとくる言葉を探すのが好きだ。
ことばあそび。

「暑中見舞い申し上げ候」はそのままいただいた。
かれこれ20年ほど、わたしの定番となった。

このはがきの送り主は、生徒会長だった。
先輩は美術部だったのだろうか。

この素敵なはがきを誰かと共有したかった。
けれど、友人たちの興味は、「誰から届いたのか」に向いた。

当時1年生だったわたしたちにとって、3年生の生徒会長は憧れの的だった。

だけど、わたしが憧れたのは、先輩ではない。
間違いなく、このはがきだ。

今でも、青い水彩には心惹かれる。
それは、このはがきの記憶なのか。
それともわたしがそれを好きだったから、記憶に残っているのか。

夏を前にすると思い出す。
あのはがきがくれた、ときめきを。

でも、先輩の顔も名前も覚えていない。
2時間ほど考えて、あきらめたころ。
ふっとでてきた。

慎一郎

懐かしい。
「慎」という文字もまた、あの青いはがきによく似合っている。

今は手元にないこのはがきをまた見てみたいと思う。
夏が少し待ち遠しい雨の日。



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