【第2章】NICUでの日々④母としての葛藤と心の闇
これは、「NICUでの日々~心の闇と小さな光~」の第4話です。
▼前回(第3話)のお話はこちら
障害を受け入れられない
次女の障害が宣告され、
回復の見込みが少ないと言われたあの夜。
枯れるほど泣いたのに、
日常でもふとした瞬間にまだまだ涙があふれてきて、現実を受け止めることはできなかった。
「回復しないはずはない!」
「脳の機能が良くなる方法だってあるはず!」
「奇跡だって起きるはず!」
この辛すぎる現実を否定したくて、変えたくて、私は必死でもがいていた。
脳のことを調べてみたり、
次女と同じような例で回復した子を探してみたり、
引き寄せや現実創造、マインドの整え方、
「運が良くなる」と言われていることを、いろいろ試してみたりもした。
とにかく、次女を元に戻したい、
いや、無理なら少しでも健常に近づけたい…。
重症心身障害児として生きることになったわが子を、まだ私はまるごと受け入れることはできていなかった。
不安とドス黒い感情に飲み込まれる
一人になると、どうしても
次女と私たちのこれからを考えて
不安に押しつぶされそうになる。
このまま、NICU通いがずっと続くんだろうか…
兄や姉に会えないんだろうか…
家には帰れないんだろうか…
いや、帰れたとしても、どうやってケアしていくんだろう…
「この子とどうやって生きていけばいいんだろう…」
明るい未来が見えなくて、
この暗くてどんよりした気持ちが
ずっと続くのかと思っただけで苦しかった。
そして、
「なんであの時、早く病院に行かなかったんだろう…」
「なんで妊娠中、もっと気を付けなかったんだろう…」
そんな後悔と「私のせいで」という
罪悪感でいっぱいになっていた。
何をしていても涙が止まらない。
テレビでオムツのCMが流れるたび
「動いている赤ちゃん」を見るのが辛い。
上の子たちの保育園で
小さい子を見るのが辛い。
おもちゃ屋さんや本屋さんなど、
「小さい子」がいる場所に行けない。
上の子たちの生まれたときの動画や写真すら、辛くて見られなくなった。
ベビーカーを押しているお母さんも、
お腹の大きな妊婦さんも、
「赤ちゃんが乗っています」のステッカーさえ憎らしく、ドス黒い気持ちが勝手にあふれてくる。
それまで「普通」だった私の日常が
まるで目の前にグレーのベールがかかったように色を失い始めていた。
わが子をまるごと愛せない
何をしていても気が重い。
泣いたって落ち込んだって
もう「次女の障害」という事実は変えられないのに、ずっと気分が滅入っていること自体、辛かった。
わが子に対して、「可愛い」という感情より
「辛い、苦しい、悲しい」という感情がわいてしまう自分。
わが子をまるごと愛したいのに、できない自分。
「障害がある」
そのことがこんなにも、わが子への純粋な気持ちにブレーキをかけてしまうことが、とても苦しかった。
「この嫌な気分をなんとかしたい!」
「なんで障害児ママだけこんなつらい思いをしないといけないの?」
平和そうに子育てをしてるように見える世の中のお母さんたちがまぶしすぎて、うらやましすぎて。
と同時に、自分の境遇が理不尽すぎて、救いがなかった。
私の「育児」って何?
NICUに入院している他の赤ちゃんでさえ、抱っこしたり授乳したりできているのに、
次女は抱っこすると呼吸が乱れるので、月に1回ほどしか抱っこできなかった。
入浴も、5人がかりで
主治医が人工呼吸器を管理しながらの大仕事だった。
私ができる「育児」といえば、
爪を切ったり、身体を拭いたり、
オムツを交換したりするだけの
ささやかなものだった。
何人もの赤ちゃんが
先に退院していくのを見送った。
それなのに次女は一向に、そんな兆しすら見えない。
どうして同じように産まれて、
他のママとはこんなにも違うんだろう…
なぜこんなに苦労しなくちゃいけないのか。
心の中に、行き場のない黒い感情が渦巻いていた。
悪意なき励まし
「NICUを卒業して、今は元気に育ってる子もいるよ」
そんな情報も、私にはなんの気休めにもならなかった。
「障害のある子は、育てられる親を選んで生まれてくるんだよ」
「真弓さんだから選ばれたんだね」
「私には、無理だわ」
周りからのそんな励ましの言葉も
今は全く心に入らないどころか、かえって傷をえぐってくる。
「そんなの、好きで選ばれたんじゃない…」
「無責任なこと言ってんじゃないよ…代わってよ…!」
とても人には言えなかったが、
「この気持ちは経験した人にしかわからないんだ」
と、周りとの分離感が強くなっていた。
今なら、悪意がないことや、励まそうとしていたのはわかる。
でも、絶望の真っただ中にいる私には、受け取る余裕がなかった。
そんな自分が冷たい人間に変わってしまったようで、
もう昔の自分には戻れないような気がしていた。
心の闇が、静かに私の中に広がっていった。
そんな中、私はあることに気づき、
少しずつ暗い気持ちが変化していくのだった。
次回は、私がどう考えるようになったのか、そのお話をお届けします。
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