【第1章】壮絶な出産②命の瀬戸際にいた超緊急帝王切開
これは「命のふちで出会った私たちの物語」第1章『壮絶な出産』の第2話です。
前回(第1話)はこちら↓
救急車の中で
救急車に乗り込んだ私は
はっきりと意識があり、
心拍数や血圧等が目の前のモニターに
映し出されるのを見ながら、
酸素マスクが付けられたままで
意外と冷静に受け答えをしていた。
その時のわたしは、ただひたすらに
この言葉を心の中で呟いていた。
「ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう…」
なぜかというと、
困難な状況でも「ありがとう」と言うと
奇跡のようなことが起こるという話を、
以前、何かの本で読んでいたからだ。
人間、極限状態に陥ると、
もうなんでもいいから
信じるしかなくなるものなんだ。
赤ちゃんが無事に産まれるなら、
「ありがとう」と100回でも1000回でも
つぶやくしかない。
自分の身に何が起きているか、
詳しいことは全くわからないけど、
とにかく赤ちゃんを早く助けたい一心で
1時間の道のりをやりすごしていた。
命の残り時間が迫る
うっすらと聞こえてくる、信号の音。
心配そうに見守る、看護師さんの顔。
刻一刻と迫る、命の残り時間。
この時はわからなかったけど、
私と赤ちゃんをつなぐ胎盤が剥がれ始め、
苦しい時間が長く続いていたことを
私は後から知ったのだ。
救急車の中で、
すでに「命の瀬戸際」にいた私たち。
1つでも信号に引っかかっていたら。
1つでも何かが違っていたら、
私と赤ちゃんは、どうなっていたかわからない。
超緊急大手術
そして、病院に着く手前で
私はいきなり呼吸がしづらくなり、
看護師さんに息苦しさを訴えた。
「もうすぐですよ」と励まされ、
息がしやすいように対処してもらい、
なんとか病院まで持ちこたえることができ、ほっとしたのも束の間。
病院に着くや否や、
あっという間に担架に乗せられ、
ものすごいスピードで手術室に運ばれた。
既に意識はもうろうとしてたけど、
その時の手術室の光景だけは、
しっかりと記憶に残っていた。
ホワイトボードに名前や年齢、
妊週数などが書かれているのが見えた。
「ああ、今からここで赤ちゃんを取り出すのか…」
そんな風に少し安心していた。
と、その時、手術室に
ものすごい怒号が響きわたった。
「超緊急大手術だぞ!!急いで!!」
医師の鬼気迫る様子に
驚いていると、
みるみるうちにたくさんのスタッフが集まってきた。
皆、一刻を争うすさまじい勢いで
手術体制に入っていく。
「何これ。映画なの??
私、これからどうなるの??
超緊急大手術ってどういうこと⁇」
この状態がどんなに緊急だったか、
今なら分かる。
でも、この時の私は
どれほど危険な状態かということを
よく理解していなかった。
まるで映画やドラマで
オペのシーンを見ているみたいに、
それが自分事なんだという実感が湧かなかった。
そんな当事者をよそに、
超緊急の帝王切開が行われようとしていた。
遠のく意識の中で
羽織っていた上着は、
「ごめんなさい、切りますね!」と言われて、
ハサミでザクザクと引き裂かれた。
正直、これで赤ちゃんが助かるなら、
上着なんてどうでもよかった。
でも、結婚指輪を切られそうになると、
私はすぐに抵抗した。
なかなか指から抜けなかったため、
「切って良いですか?」と聞かれたが、
「自分で外します!」と言って、石鹸でなんとか外した。
上着も切るほどの緊急時だというのに、
そんな余裕なんてないのに、
指輪を切れば夫や上の子たちとの絆が
切られる気がして、
なんとか守りたかったのだと思う。
それだけ、心細かったのだろう。
指輪が外れ、ホッとした次の瞬間、
「寝てもらうね!!」
と言って、全身麻酔のマスクが
覆いかぶさってきた。
「手術、初めてなんでちょっと怖くて…」
と言うか言わないかのうちに、
私は深い眠りに入ってしまった。
麻酔はほんの一瞬で効いたようで、
そこからの記憶は、一切ない。
・・・・・
私は、その夜から丸一日、
意識が戻らなかった。
この後私とお腹の次女に起こった
壮絶な出来事の全容を知ったのは、
この緊急帝王切開から
2日目の朝のことだった。
命の瀬戸際で戦っていた、
私と次女の数時間。
次回は、赤ちゃんの次女に
どんなことが起きていたのかを
お話します。
