「ノベルフォーミュラ日本GP」中間選考通過!~外伝を本編にしたらどうなる?
思えば星新一賞へは2019年~、仕事の傍ら毎年応募してきましたが、執筆に本腰を入れたのは2025年……3月に起業して一段落した4月のTALES創設がきっかけでした。以来1年、初めて中間選考を通過したのでご報告します。
意外だったのは創作論として書いた作品、しかも外伝を選んで頂けたこと。
ちなみに創作論とは言いつつも、ちゃんと物語として描きましたし、外伝と言っても執筆順が後だっただけで、『創作工房』の外伝が『隻身の音聲』と言っても差し支えない二作品なので、そこを評価して頂き嬉しかったです!
そこで今回は「外伝の『創作工房』を本編に据えたら、どんな風になる?」 というテーマで書いてみようと思います。(ね? 創作論らしいでしょ!)
またすでに『創作工房』(57話)と『隻身の音聲』(44話)ともに10万字を超える長編になったので、両連載を再開した(※)このタイミングで改めて全容を整理してみたいとも考えました。では、参りましょう!
〔※『創作工房』第3章/第56話~,『隻身の音聲』第5章/第41話~〕
1.ここまで書いた内容(創作工房)
虹村彩香を主人公とした『創作工房 “マイナもん” 倶楽部』のあらすじは、単独の物語(『隻身の音聲』抜き)として再構成すると、以下の通り。
TALES上で創作に取組む主人公(虹村彩香)は、反響を呼んだ前作の執筆で燃え尽きたのか、“次が書けない“ ……と悩みます。
夫の助けで思い出したのは、自分の作品が初めて誰かの目に触れた感動。続けて(自分と同じく多数派に迎合せず)マイナーな題材に挑む作家たちと支え合いたい! という想いが湧いてきたことで、TALES上で知り合った “マイナー分野を自分事(Myなもん)と捉え過剰な熱量を注ぐ作家たち※” とタロットを駆使した “創作論” を通じ意気投合してゆきます。〔※火の柱 :ほっくり,風の柱:ゆともり,地の柱:まひろん,水の柱:とびきょう〕
一方、前作を創作して気づいたのは “創作が医療的な価値を持つ” 可能性。考えれば、医療こそ究極のマイナー分野(自分の辛さは誰も分からん)で、この仮説を実証すべく作家仲間と創作工房『“マイナもん” 倶楽部』発起、患者の想い(自己免疫不全,心不全,抗がん剤に伴う脱毛,若年性白血病)を小説化することを始めました。
その最中、医療で心も楽しく救う「ストリート・メディカル」に参画することになり、創作工房のビジネスモデルを企てるプロジェクトを始めます。その過程で病気で繋がるSNSの運営会社とご縁が生じた為、そこと協働し、病気や障碍の辛さに価値を生む『うちあけ創作工房』プロジェクトを発表。それが「ペイシェント・アドボカシー(患者の想いを代弁する)学会」設立にも繋がってゆきます。
しかし学会に参加した直後、彩香の妊娠が判明。工房仲間の協力を得て、彩香は出産と『うちあけ創作工房』起ち上げの両立を決意。自分の妊娠出産体験を基に実証実験(セルフ・プロトタイピング)を進めてゆきます。
再構成し、各所の該当話へリンクを張ったもの
つまり、創作に悩む主人公が、作風の似ているTALES仲間と絆を深めつつ、共に “タロット創作術” を開発すべく結成したのが『マイナもん倶楽部』。
そこで患者の想いを形にするうち “創作が医療に価値を生む可能性” に確信を深め、実証すべく結成したのが『うちあけ創作工房』という物語でした。
2.描き切りたい世界観(創作工房)
さて、この作品で描きたい “世界観” を、改めて言語化してみると……
限りなくニッチなマイナー分野を、ふんわり一般化し迎合する物語と違い、逆にとことん掘り “道”※ まで至ることで共感を呼ぶ物語として描きたい。
拠り所は、ちくま文庫「タオーー老子」(加島祥造)。
だからこそ、本来は広く読まれてなんぼのTALESで、あえてニッチな分野を描く作家さん達をモチーフとし、また “医療” という限りなく個別な分野と創作を結び付けたのも、この世界観を描きたいがゆえでした。
なので尚更、“広く読まれてなんぼ” の小説を選ぶコンテストで、この作品を評価して頂けたことは、私にとって望外の喜びだったのです!
3.今後の展開について(創作工房)
このような世界観を描くには、細部に至るまで具体的でないといけません。
なので主人公が、まずは自分の体験を以てプロトタイプを作ろうと試行錯誤することにしました。それが「第3章:セルフ・プロトタイピング」です。
描くべきは次の2点ーー①「臨床文学」の確立,②患者の文章に臨床的な意味を持つ “言語バイオマーカー” を探る「自然言語解析モデル」構築。
彩香は、自分が妊婦になったのを機に(妊娠は病気ではありませんが…)疑似患者としてインサイダーとなり、病気SNS併設の『うちあけ創作工房』で出会う患者(あるいは妊婦)をマイナもん倶楽部へと紹介。仲間から最適な担当者が協働し、作中短編を仕上げながら「臨床文学」の確立を目指す。
同時に、この創作と向き合いながら自身が紡ぐ文章をサンプルに、彩香は創作から、臨床的な意味を持つ “言語バイオマーカー” を抽出する「自然言語解析モデル」を試作(プロトタイピング)してゆく。
このように、産婦人科系の題材を出産まで約40週(10ヶ月)の描写で描き、その後は子育てを通した小児科系の題材に移行して、子供が小学生になる頃『隻身の音聲』(彩香の娘が主役の第4章~)へ接続し完結する予定です。
4.外伝との繋がり方(隻身の音聲)
こうして主客を逆転してみると、今度は『隻身の音聲』が “外伝” として、非常に上手く機能することに気づきます。
◆第1章~第3章:彩香の父が “隻身の音聲” を聞く(視る)能力を駆使し、「結実屋」という職業を確立し、社会に変革を起こすまでの物語。
◆第4章~:彩香の娘が、祖父から隔世遺伝で受け継いだ(上記)能力で、「結実屋」の魂をも継承し、“生・育・死” を繋ぐ役割に覚醒する物語。
ね? 前編と後編が彩香の『創作工房』を挟む前夜と後日談になるのです。
しかも三代で彩香だけ “隻身の音聲” を聞く能力を受け継いでいないので、『創作工房』が本編として、前夜や後日談に影響されることもありません。
「お母さんには、その…… ”いでん” はなかったの?」
「ええ。でも、お母さんは神さまから、別の能力を授かったわ」
「ええっ! なになに? 教えて教えて」
「周りや他人に、敏感 “過ぎる” こと。良くも悪くもね」
「ん? 悪いこともあるの?」
「例えば、小さな物音も煩く感じたり、他人の悪意を感じ取ったり」
「えっ! じゃあ小さい私の泣き声とか、すごくうるさかったんじゃ」
「それは大丈夫。愛する音は愛おしいから」
ちなみに “隻身の音聲” を聞く能力とは……
禅に “隻手の音聲” という有名な公案がある。
「両手を打つと音がする。では片手にはどんな音があるのか?」という、弟子に悟りを促す師匠の問いだ。
(中略)
思うに、出会う迄の俺にこれだけの物語があるのと同様、相手の医師にも相応の物語があって、その化学反応で「出会いの音」が決まるのだ。
(中略)……だから俺はこう思う。
「片方だけにも音が宿る。しかしそれは、まだ発せられていない」と。
俺の能力はその「隻身の音聲」を見抜く。
ーーそこに覚悟があるか否か。
そして覚悟あるプロフェッショナルと、これから多種多彩な音聲を世の中に打ち出してゆくのだ。
だから、『創作工房』が “マイナー分野の創作論” を軸に展開するのに対し、
『隻身の音聲』は “結実屋というお仕事” に焦点を当てた物語と言えますね。


5.本編⇔外伝の逆転に伴う変更点
以上の通り、本編と外伝の入れ替えは十分に可能と思いますが、以下2点については、若干の修正が必要かと思われます。
彩香が『隻身の音聲』内で書いた初の小説を、『創作工房』のプロローグに作中短編として描き込む。
彩香が『隻身の音聲』内の創作で得た医療人脈が、『創作工房』に登場する際は、改めて丁寧に人物紹介する。
……が、これは物語の流れに影響することなく、自然に行える範囲内のことであると考えています。
6.本稿まとめ(長編創作論として)
ここまで書いて気づくのは、長編を書くのに “外伝” や “続編” は極めて有用ということです。作家としての軸さえ明確であれば、後からこうして自在に構造の組み替えが可能ですから。実際の執筆経緯を振り返ると……
まず創作大賞の “お仕事小説部門” に書いたのが『隻身の音聲』で、ここに自身の半生を反映させたことで作家としての軸が定まり、かつ結果的に選外となり独自創作術の必要性も痛感しました。
その結果が出る前に(特に何に応募するでもなく)創作についてあれこれ自由に試せる実験的なラボを作りたかったので『創作工房』を発想。そこに(『隻身の音聲』を通じ知り合った)TALESでニッチ領域を狙う作家さんと結成した読み合いサークル『マイナもん倶楽部』が結びつき、創作大賞〆切直後から『創作工房 “マイナもん” 倶楽部』を書き始めました。
そして創作大賞が選外となったことで、半ノンフィクションから脱却し、完全なる創作ストーリーで『隻身の音聲』を締め括りたい!と考え、続編を書き始めたのです。
この結果、“マイナー分野の創作に光を当てる逆転のストーリー” が生まれ、ノベルフォーミュラの選考で注目して頂けたというのは、私の創作において今後も大きな自信となります! 本当にどうもありがとうございました!!
こうして本編・外伝とも執筆再開したので、ぜひまたお読み頂けると嬉しいです。三世代を繋ぐ “マイノリティの逆襲” 物語に、どうぞご期待下さい!
『創作工房 “マイナもん” 倶楽部』:第3章「セルフ・プロトタイピング」
ーー第56話「“うちあけ創作工房” を試作」から再開!
『隻身の音聲』:第5章「杏子が林に里になる」
ーー第41話「無限に拡がる空想の世界」から再開!
